MENU

間接部門削減の目標設定と実行プロセス

Z社の話に戻る。私は社長に対し、「合理的な人員数を計算しようとしても、それは現実的ではない」と率直に伝えた。なぜなら、人員数の算出そのものが可能だったとしても、その結果を確実に実行するのは非常に困難だからだ。その上で、次のように助言をした。

経営計画から導き出す目標人員の設定

「間接部門の削減には、具体的な目標設定が欠かせません。この目標は、企業の経営計画に基づいて導き出されます。経営計画では、まず必要な利益を確保するための条件を定め、そこから賃金の総枠を計算します。その枠を賞与を含めた計画賃金ベースで割り算することで、全体として必要な人員枠が導き出されます。

この人員枠を、まずは直接的に利益を生み出す部門、すなわち営業部門や将来を見据えた研究開発部門に優先的に配分します。その後、直接部門の必要人員を割り当て、最終的に余剰部分を間接部門に配分します。この順序を踏むことで、目標とする間接部門の総人員数を明確に設定することができます。」

各部門への目標人員の割り振り

次に、この総人員枠を各部門に割り振る段階に進みます。しかし、ここで技術的に完全な正解を導き出すことは不可能です。だからこそ、経営者の勘が重要な役割を果たします。長年の経験から蓄積されたデータを基に、経営者が「勘」として下す結論は、特に反復的な業務においては驚くほど的確です。

割り振りの際には、「この人数では本来は難しい」という前提を共有しつつ、必要な利益を達成するためにはこの人数で業務を遂行せざるを得ないという現実を部門全体に伝えます。そして、この人数で業務を回すための方法を各部門に考えてもらう。どうしても不可能だと判断した場合は、改善案の提示を求め、経営者と共に解決策を検討します。

段階的な削減と実現プロセス

削減計画の実行には時間が必要です。赤字企業であれば即座に着手する必要がありますが、Z社のような黒字企業では、3年程度の期間をかけて段階的に進めることを提案します。このプロセスの中では、欠員が出た場合の新規採用を控え、既存人員を効率的に配置転換することで負担を最小限に抑えます。

さらに、年度ごとに中間目標を設定し、特に初年度は達成期限を明確に定めます。これにより、計画が現実的かつ達成可能なものとなり、組織全体がスムーズに削減プロセスを進めることができます。

経営者の決断の重要性

実際の削減プロセスでは、生身の人間を対象とするため、避けられない問題が発生します。しかし、それでも決断を下すのが経営者の役割です。もしその責任を放棄すれば、企業は持続可能性を失い、最終的には破綻を招くでしょう。

経営者の判断が重要なのは、この削減プロセスを通じて組織全体の意識が大きく変わるからです。業務の優先順位が見直され、効率化が進むことで、「人員が足りない」という訴えは次第に消えていきます。この変化は、単なる合理化以上に組織を強化する効果をもたらします。

Z社での成功例

Z社では、このプロセスを採用した結果、間接部門の削減が順調に進みました。目標人員数の設定と段階的な実行計画が功を奏し、最終的には業務の効率化が達成されました。同様の手法を採用した他社でも、削減後に「人手が足りない」という状況に陥ることはありませんでした。

間接部門の削減は、多くの企業にとって避けて通れない課題です。しかし、その過程で得られる経営者の経験や組織の意識変革は、企業全体の成長を支える重要な要素となります。このプロセスを通じて、企業はさらなる競争力を獲得できるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次