企業は収益性の高い製品に注力する必要があると繰り返し言われます。しかし、現時点での収益性だけに執着するのは危険です。なぜなら、外部環境は突然変化するものであり、その変化が自社にどれほどの影響を及ぼすかを予測することは不可能だからです。
変化への脆弱性
企業の製品には必ず斜陽化の運命が訪れます。どれほど優れた製品であっても、永遠に成長を続けたり、高収益を維持し続けたりすることはできません。寿命が長いか短いかの違いはあれど、いずれは需要の減退が訪れるのです。
それにもかかわらず、多くの経営者は「この製品は永遠に高収益を生む」と思い込んでいます。さらに、業界全体の斜陽化という可能性にすら目を向けていない場合もあります。これこそが、企業を破綻へと追い込む要因です。
危険分散の重要性
経営者が担うべき責任の一つは、外部環境の変化に耐えうる企業体質を築くことです。新たな状況に柔軟に対応する弾力性と機動力を備えることで、持続可能な成長が可能となります。
特に脆弱なのは「偏り」です。唯一の製品、唯一の市場、唯一の得意先に依存する状態は非常に危険です。たった一つの接点が崩れただけで、企業全体が存続の危機に立たされる可能性があるからです。
複数の製品、市場、得意先を持つことは絶対に必要です。この体制を整えることで、外部環境の変化が全体に与えるダメージを最小限に抑えることができます。
実例に学ぶリスク分散
Hプレス工業では、「一業界一社」という方針を掲げ、家庭電器業界、家具業界、計器業界、自動車業界の4つの業界に分散投資を行っています。さらに、それぞれの業界における売上割合をバランスよく配分することで、安定した成長を実現しています。
一方、S鉄工では「三二方式」を採用し、3つの異なる業界で、それぞれ2〜3社の得意先を持つ戦略を取っています。このようなリスク分散のアプローチは、外部環境の変化に対する強靭な経営体制を構築するための良い手本です。
バランスを保つ経営
収益性を追求しすぎれば安全性が犠牲になり、安全性を重視しすぎれば収益性が低下する可能性があります。重要なのは、高収益圏と高安全圏の間でバランスを取りながら経営することです。
最高の収益性を目指すのではなく、適度な収益性と適度な安全性の調和を図ることが、持続可能な成功を支える基盤となります。経営者には、この絶妙なバランスを見極める力が求められます。
市場における危険分散を図ることは、短期的な利益追求と長期的な存続を両立させる鍵となるのです。
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