企業経営において、方針や指令、規則は組織の秩序を維持し、目標を達成するための基本的なルールです。それが守られない場合、ただちに修正されなければなりません。そして、違反が発生した際には、社長や管理者が毅然とした態度で対応し、組織全体に規律を示すことが重要です。
「人前で叱るな」という誤解
多くの研修や人間関係論では、「部下を人前で叱るべきではない」という主張が一般的です。その背景には、叱られた本人の面子や感情を守るという配慮があります。しかし、この考え方は企業経営の現場においては必ずしも適切ではありません。
叱られる理由が、個人的な感情や私的な問題に起因する場合は人前で叱るべきではありませんが、組織の規則や指令に反する行為に関しては、人前で叱ることで組織全体にメッセージを伝える必要があります。
人前で叱るべき理由
1. 規律を明確にする
組織にはルールがあり、それを破れば罰があることを全員に認識させることが重要です。違反者を人前で叱ることで、他の社員に対しても「ルールは守らなければならない」というメッセージが伝わります。
2. 社長の指令の重みを示す
社長の指令が守られない場合、その影響は組織全体に及びます。人前で叱ることで、社長自身が指令の重要性を認識しており、それを軽視することは許されないという姿勢を示します。
3. 組織の秩序を守る
違反行為を個室で処理すると、他の社員から見て「何も対応していない」と思われる可能性があります。この場合、組織全体の規律が緩み、指令や規則の遵守意識が低下します。
4. 結果の透明性を担保する
違反行為が既に周囲に知られている場合、見えない場所で叱責すると、組織全体に「社長は問題を見過ごす」という誤解を与えかねません。公開の場で対応することで、組織の透明性を保ちます。
実例:規律を徹底する社長の行動
ある建築会社のT社長は、「現場で安全帽をかぶれ」という指令を徹底させるために、現場を2年間巡回し続けました。その間、安全帽をかぶっていない社員を見つけるたびに、現場で直接叱責しました。この行動により、社員の意識が変わり、99%の社員が安全帽を着用するようになりました。
また、F社の例では、資材課長が「現物と伝票を必ず同時に動かせ」という指令を半年にわたり毎日繰り返しました。その結果、従業員は「うるさい課長だ」と陰口を言いながらも、最終的には徹底的にルールを守るようになりました。このように、規律を守らせるには、上司や社長が根気よく指示を繰り返し、時には叱責を行う必要があります。
人前で叱る際の注意点
人前で叱る際には、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
- 事実に基づく叱責を行う
感情的にならず、具体的な違反行為やその影響を指摘する。 - 問題行動に焦点を当てる
人格を攻撃するのではなく、あくまで行動や結果に対して指摘する。 - 全体へのメッセージを込める
「これを許せば組織全体に悪影響を及ぼす」という観点を示す。 - 叱責後のフォローを行う
違反者に対しては、叱責後に適切なフォローを行い、再発防止策を共有する。
「叱らない経営」の危険性
叱責を避け続ける経営は、規律の崩壊を招きます。違反行為を放置することで、社員は指令や規則を軽視するようになり、組織全体の信頼性が損なわれます。また、指令を守らない行為を許容することで、優秀な社員のモチベーションが低下し、組織の競争力が低下するリスクもあります。
結論:社長の指令を守らせるための覚悟
企業経営において、社長の指令や規則は絶対であり、それが守られない場合には、人前で毅然とした態度で叱責することが必要です。それは単に違反者を戒めるだけでなく、組織全体に規律を浸透させ、会社を成長へと導くための重要なステップです。
社長が指令の重要性を認識し、それを守らせる覚悟を示すことで、社員はその姿勢を学び、組織の一体感が生まれます。叱るべき場面で叱らないことこそが、組織にとって最大のリスクとなるのです。
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