外部情報が決定を左右する理由
新商品や新事業を立ち上げる際には、外部情報の収集が欠かせない。これにより、以下のような重要な判断や計画が的確に進められる。
- 事業参入の可否判断
- 新事業に取り組むべきかどうかの基礎を築く。
- 戦略の策定
- 販売方針や市場アプローチの方向性を明確化する。
- 具体的な実行計画の作成
- 価格設定、ターゲット地域の選定、流通業者の選択などに活用。
これらの要素はすべて外部情報に依存する部分が大きいにもかかわらず、驚くべきことに、多くの企業は外部情報の収集が不十分なまま事業を進めようとするケースが多い。その結果、適切な市場調査が行われず、事業の失敗に直結する。
外部情報収集の継続性
情報は一度集めれば終わりではなく、常に更新が必要だ。市場や業界の状況は変化し続けるため、少なくとも年に一度は再調査を行い、データの鮮度を保つべきである。過去の情報に頼りすぎると、変化に対応できず誤った判断を下す可能性が高まる。
収集すべき主要な外部情報
1. 総需要(トータルマーケット)の把握
最初に取り組むべきは、市場の総需要を把握することだ。これにより、自社がどの程度の市場シェアを獲得できる可能性があるかを見極める基準が得られる。
- 地域による違い
- 生産財や業務用品を扱う場合:全国規模での需要を調査。
- 食品や消費財を扱う場合:地方ブロックや経済圏単位での市場規模を調査。
- 推定の必要性 総需要の正確な数値が公開されているケースは稀であり、公的統計や業界資料、競合他社の動向をもとに推定する必要がある。このプロセスが不十分だと、計画そのものが不確実なものになりかねない。
2. 流通機構の理解と流通業者の選定
流通チャネルの構造を把握することで、効率的な販売計画を立てることができる。
- 調査項目
- 各流通段階のマージン率。
- 業界特有の取引習慣や慣行(例:委託販売、買取販売)。
- 小売業者と卸業者の力関係。
- 支払い条件やリベートの仕組み。
- 流通業者の分析 主要流通業者の売上高、市場占有率、販売地域、強み・弱み、営業方針を調べ、最適なパートナーを選定する。
3. 競合分析
競合他社の動向を把握することは、自社の戦略策定に欠かせない。
- 主要な競合メーカーの調査
- 売上高、市場占有率、製品の強みと弱み。
- 価格戦略や販売チャネル。
- 営業体制やアフターサービス。
- 競争環境の理解 市場の競争状況に応じて、ニッチ戦略や地域集中戦略を展開する。競争が激しい市場では特定分野に絞り込むことで成功確率を高める。
4. 情報の定期的な更新
市場や競合環境は絶えず変化するため、収集した情報を年次で更新する習慣をつける。これにより、状況に応じた柔軟な対応が可能となる。
具体的な戦略構築のポイント
1. 市場シェアの基準設定
総需要を把握したら、まず目指すべき市場シェアを10%に設定する。これを基準に事業の実現可能性を評価する。
10%未満のシェアが想定される場合 事業参入は延期または中止を検討する。
一流企業の指標 市場で30%以上のシェアを獲得することで「一流」と呼ばれる地位を確立できる。10%未満では、その可能性が低いため、無理に進めるべきではない。
2. ニッチ市場への集中
競争が激しい市場では、地域または商品に特化する戦略が有効だ。
- 地域集中 高い占有率を達成できる地域に市場を限定する。
- 商品集中 特定の商品カテゴリーに絞り込み、30%以上のシェアを狙う。
3. 流通戦略の強化
流通業者との良好な関係構築は、新規事業の成功に直結する。
- 誠実な取引 安定した納期、柔軟な支払い条件、迅速なクレーム対応を提供。
- 差別化されたサービス 競合が提供できない付加価値を創出する。
成功に向けた経営者の心構え
情報収集と分析の結果を活かすためには、経営者自身が積極的に関与し、責任を持って判断を下す必要がある。
- 盲目的な決定を避ける 外部情報を欠いたままの意思決定は失敗のもと。
- 戦略の柔軟性 市場環境の変化に応じて、計画を適宜修正する。
外部情報の収集と活用は、成功の可否を分ける重要なプロセスだ。継続的にデータを更新し、分析を重ねることで、新規事業のリスクを最小限に抑え、成功への道を切り開くことができる。
コメント