新商品開発や重要プロジェクトを進める際、計画の立案や体制の整備はスタート地点に過ぎない。それらを円滑に進め、目標を達成するためには、「定期的なチェック」を組織的に実施することが不可欠だ。チェックを怠れば、プロジェクトの進行が停滞し、最終的には失敗に終わる可能性が高まる。
チェックの重要性
1. 放任と任せるの違い
「任せる」とは、プロジェクトの進行を担当者に委ねることであり、放任することではない。しかし、多くの企業では、「任せたから口を出さない」という放任が行われ、結果として進捗が不明瞭なままプロジェクトが進んでいくことが多い。これを避けるために、定期的なチェックが必要だ。
2. 進捗の確認と軌道修正
プロジェクトは計画通りに進むとは限らない。途中で生じる課題や外部環境の変化に対応するため、定期的に進捗を確認し、必要に応じて軌道修正を行うことが重要だ。
3. 担当者の緊張感とモチベーションの維持
定期的なチェックを設定することで、担当者は緊張感を持ち、責任感を維持できる。チェックがなければ、担当者の意識が緩み、進行が遅れるリスクが高まる。
定期的チェックの具体的方法
1. チェックの頻度を決める
月に一度を基本とするが、プロジェクトの規模や重要度に応じて柔軟に調整する。例えば、大詰めの段階ではチェック頻度を上げる必要がある。
2. プロジェクト計画書への明記
チェックの頻度と方法をプロジェクト計画書に明記することで、担当者と経営層の間で認識を統一する。これにより、無駄な摩擦を防ぎ、効果的な進捗確認が可能となる。
3. 報告書の作成
チェックの際には、必ず担当者に報告書を提出させる。報告書は二部複写とし、一部を社長用のファイルに、もう一部を「マスター」として開発資料室に保管する。この方法で情報の一元管理と安全性を確保する。
4. マスター資料の厳格な管理
マスター資料は門外不出とし、開発資料室でのみ閲覧を許可する。これにより、重要な情報の流出や紛失を防ぐ。必要に応じてコピーを提供するが、原本は社内で厳重に管理する。
5. チェックのスケジュールを事前設定
チェックのスケジュールをプロジェクト開始時点で決定し、秘書がそのタイミングを管理する。これにより、社長が忙しい業務の中でチェックを忘れることを防げる。
チェック時のポイント
1. 報告の具体性を重視
担当者からの報告が「まあまあです」「順調です」といった曖昧な内容に終始する場合、それ以上の深掘りが必要だ。報告書には具体的な進捗状況、課題、次のステップを明記させる。
2. 適切な指示を与える
チェックの結果、必要に応じて計画の修正や追加のリソース提供を指示する。この際、過度に細かい指示を出すのではなく、大枠の方向性を示すことが望ましい。
3. 負担にならない頻度と形式
チェックがあまりに頻繁で細かすぎると、担当者に負担をかけ、進行の妨げとなる。適切な頻度と簡潔な報告形式を採用し、チェックそのものがプロジェクトを遅らせることがないように配慮する。
チェック体制の利点
1. リスク管理の徹底
定期的に進捗を確認することで、課題やリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることができる。
2. 情報の透明性確保
マスター資料を通じて情報を一元管理することで、進捗状況や計画の変更点が全関係者に共有され、透明性が向上する。
3. プロジェクトの質と速度の向上
チェックを通じてプロジェクトの質と速度を両立させる。適度な緊張感と目標意識を持たせることで、担当者は効率的に作業を進められる。
チェックを軽視しない経営者の姿勢
「忙しいから」と言い訳してチェックを怠る経営者は、そのプロジェクトを本当に重要だと認識していないと見なされるべきだ。もしプロジェクトが会社の未来を左右するほど重要なのであれば、チェックを計画的に行い、進行状況を把握するのは経営者の責務である。
定期的チェックは、単なる進捗確認ではなく、プロジェクトの成功を確実にするための重要な管理ツールだ。これを適切に運用することで、プロジェクトの質と結果を最大化することが可能になる。
経営者としての責任を果たし、組織全体の目標達成を確実にするために、「チェックこそが最重要業務の一つ」という意識を持つべきである。
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