新商品の相談に訪れる企業の多くは、単品の商品だけを持ち込んでくる。その商品がいかに画期的であっても、「単品」の状態では事業化が難しい場合がほとんどだ。特に、日用品や雑貨のような単価が低い商品ではなおさらだ。
単品では成立しない理由
1. 販売チャンネルの欠如
単品で新規マーケットに参入しようとしても、その商品を流通させるための販売チャンネルが整っていないと事業は成り立たない。既存のチャンネルを持つ企業が、新商品を商品群に追加する場合はスムーズだが、単品での新規参入はほぼ不可能と言える。
2. コスト効率の悪さ
単品での販売は、一品あたりの販売費用が割高になる。広告、流通、営業活動など、すべてのコストが単品に集中するため、採算が取りにくい。商品群として展開する場合と比較して、費用対効果が著しく低い。
3. 陳腐化のリスク
単品の商品は、たとえ一時的に売れたとしても、時間の経過とともに陳腐化するリスクが高い。商品が売れなくなった場合、その事業は即座に収益源を失うことになる。
4. 「天動説」に囚われた思考
多くの企業が、「商品を作れば売れる」という天動説的な思い込みを持っている。この固定観念が、新商品の失敗を引き起こす大きな要因だ。単品の商品だけで、事業として成立するケースは極めて稀だ。
成功の鍵は「商品群」
新商品を事業化するには、単品ではなく「商品群」として展開する必要がある。これは、単品の商品を複数組み合わせることで、販売効率を高め、事業全体の持続性を確保するためだ。
1. 問屋モデルの効率性
問屋が低マージンで事業を運営できるのは、多品種の商品を同一販売チャンネルに流し込み、コストを分散しているからだ。同様に、メーカーも単品に頼らず、同一マーケットで展開可能な複数の商品を開発するべきだ。
2. 商品群のシナジー効果
複数の商品を組み合わせることで、クロスセルやバンドル販売などの販売促進が可能になる。これにより、単品では得られない収益性と競争力を獲得できる。
3. 陳腐化の回避
商品群で展開することで、特定の商品が陳腐化しても他の商品で補完できるため、事業の安定性が向上する。
実践的なアプローチ
1. 市場調査の徹底
社長自らが市場に足を運び、顧客のニーズや競合の状況を観察する。この現場で得た知見を基に、どのような商品群を開発すべきかを検討する。
2. ターゲット市場の明確化
商品群を展開するためには、特定のターゲット市場を明確にすることが重要だ。同一マーケットで販売可能な商品を揃えることで、効率的な流通が可能になる。
3. 商品開発の多様化
単品ではなく、関連性のある複数の商品を同時に開発する。これにより、顧客に対して包括的な価値提案ができる。
4. 販売戦略の構築
商品群を効果的に展開するためには、販売チャンネルやマーケティング戦略を緻密に計画する必要がある。既存の販売ネットワークを活用するか、新たなネットワークを構築するかを判断する。
商品群の具体例
ケース1: キッチン用品メーカー
単品で包丁を販売するのではなく、まな板、ピーラー、キッチンクロスなどを組み合わせた「キッチンセット」として商品群を展開する。この方法により、単品販売では得られない売上と顧客満足度を実現。
ケース2: 美容雑貨メーカー
単品でフェイスマスクを販売する代わりに、化粧水、クリーム、エッセンスといったスキンケア商品を組み合わせて「スキンケアライン」として商品群を展開する。
結論: 商品群の構想が事業成功の鍵
単品の商品だけでは事業として成立することは難しい。成功するためには、同一マーケットで展開可能な商品群を開発し、販売効率を高める必要がある。この商品群の構想は、社長が現場で得た市場の実態を基に作り上げるべきだ。
単品の成功に固執するのではなく、全体として持続可能な事業モデルを築く。この視点が、未来の事業成功を決定づける重要な要素となる。
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