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販売網はこうして作る

K社は、F県I市を拠点にする食料品問屋で、社長は低マージンの事業モデルに限界を感じ、新たな事業を模索していた。そんな折、運よく商社からクロレラのF県全域における独占販売権を獲得。しかし、その販売方法は商社の指導に依存する形でスタートした。

商社の指示で始まった販売網の構築は、行政区分に基づく地図の区分けと人口調査を元に、代理店や特約店を設置するという机上の計画にすぎなかった。説明会を開催し、業者を募集するという形式的な手法では、結果は芳しくなく、代理店が1社、特約店がわずか3社しか集まらなかった。さらに、商品を特約店に持ち込んだものの返り注文は一切来ないという有様だった。

この結果を受けて私は、K社長にこう伝えた。「販売とは泥まみれになって進めるものであり、きれいごとでは成り立たない」と。そして、より現実的で効果的な販売網の構築方法を提案した。


泥まみれの販売戦略

1. 専属販売員の配置

K社内にクロレラ専属の販売員を一人配置。社長直属のポジションとし、他の業務には関与させない。これにより、クロレラ販売に集中できる体制を構築する。

2. 特約店候補の選定

最初の特約店候補として、K社が既存取引を持つ得意先から選定。これにより、関係性を活用したスムーズなスタートを図る。店舗には商品を一ケース持参し、「陳列しなくても構わない」との条件で保管を依頼。店舗側のリスクを最小限に抑え、協力を取り付ける。

3. 地域限定の周知活動

特約店を中心とする半径500メートルのエリアを設定し、住宅地図を使って訪問リストを作成。このエリア内の家庭を訪問し、クロレラのチラシを配布。「新しい取り扱い商品のお知らせ」という挨拶に留め、売り込みは行わない。

4. 1日400軒の訪問計画

1日400軒を目標に訪問活動を実施。1軒あたりの訪問時間を平均1分とし、効率的にエリアを回る。この手法により地域内での認知を徐々に広げていく。

5. 継続的な接触

最初の1カ月間は、同じ家庭を2回訪問。その後、普及率が10%に達するまでは月1回の訪問を継続。訪問頻度を重ねることで地域内での信頼を構築する。


販売活動の進化と成功

販売活動が軌道に乗ると、1日60軒程度の訪問でも商品が少しずつ売れ始め、月間約10万円の売上を計上するようになった。この段階で特約店の信頼を損なわないよう、「売れた商品のマージンは一切取らない」とK社長に助言。その上で、売上情報と購入者リストを特約店に提供し、次の販売機会につなげる支援を行うよう促した。

特約店は、マージンを受け取りながら「売れる商品」という確信を深めていき、自然に商品を陳列し、販売を後押しする体制が整った。この段階を皮切りに、専属販売員を増員してエリアを拡大。I市からO市、Y町へと順次展開し、効率的な初期アプローチが販売網の拡大につながった。


長期的な成果

販売開始から1年後、K社は県内の半分の地域をカバーした時点でクロレラを単品売上トップの商品に成長させた。さらに、商社の設定した販売目標を大幅に上回る成果を達成。この成功の要因は、机上の理論ではなく、現場での徹底した努力にあった。


販売網構築の本質

新商品の販売網を築くことは、容易なことではない。現場に出向き、顧客と直接向き合う姿勢が不可欠だ。「問屋に流すだけで売れる」という天動説的な発想を捨て、自ら泥まみれになって販売を推進する覚悟が必要だ。

販売初期の段階では非効率で目に見える成果が出にくいが、地道な努力が実を結ぶ「成長期」を迎えたとき、販売は急速に拡大していく。K社の成功は、このプロセスを真摯に実行した結果と言える。販売網を築くというのは、単なる計画ではなく、行動と継続の積み重ねである。この現実を理解し、実践することが成功への近道だ。

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