H社は業界トップのシェアを誇る優良企業だ。その成功の背後には、H社長の徹底した現場主義がある。彼は会社にいる時間のほとんどを開発室で過ごし、顧客から直接聞き取った要望をもとに、新商品の開発に情熱を注いでいる。この顧客訪問と開発室との往復が、H社の商品を次々とヒットさせる原動力だ。現場で得た具体的な声を開発チームと共有し、実用性を兼ね備えた新商品として具現化する。その姿勢がH社を業界ナンバーワンの座へ押し上げた。
社長自身が新商品の総指揮を執る
O社の社長室は、新商品や試作品であふれ、もはや社長室というより開発室そのものだ。訪問者にはまず試作品を披露し、その特徴や工夫を情熱的に説明する姿が印象的だ。特にファッション業界では、商品のデザインが重要な要素となる。O社では、機能面は試用を重ねて結論を出せるが、デザインに関しては社長と開発部長の激しい議論が日常茶飯事だ。最終的には若い開発部長が主導権を握ることも多いが、これは社長の柔軟な姿勢と開発力のバランスが取れた結果と言える。
同様に、F社の社長も新商品の開発において主導的な役割を果たしている。広大な開発室を案内しながら、試作中の商品について詳細に説明する姿勢は、F社の商品品質への徹底したこだわりを物語っている。その発想は、単なる思いつきではなく、実験やデータに裏打ちされたものであり、性能や実用性に一切の妥協を許さない姿勢が、F社独自の競争力を生み出している。
新商品の原動力は顧客の声
T社の社長は平日を顧客訪問に費やし、土曜日だけ会社に顔を出す。その理由は明確だ。「新商品のアイデアに悩んだことは一度もない」と語る彼は、顧客の要求や不満を聞き取ることで次々と商品企画を生み出している。顧客の声に耳を傾け、それを商品に反映する姿勢が、T社の革新的な商品を生み出す源泉となっている。
また、新商品の発表が決まると、T社長自ら顧客のもとを訪れ、商品の特徴や利点を熱意をもって説明する。その結果、顧客は商品だけでなく社長その人に信頼を寄せ、T社の商品への評価をさらに高める。この徹底した姿勢が、T社の商品が市場で高い評価を受け続ける理由だ。
社長の役割と責任
新事業や新商品の開発は、企業の未来を左右する重要な要素だ。これに取り組む責任は、他の誰でもない社長自身にある。市場のニーズや顧客の声を正確に理解し、それを事業戦略に反映させるのは社長の最も重要な役割だ。単なる思いつきや開発担当者への丸投げでは、新商品の成功は望めない。むしろ、社長が明確なビジョンを示し、顧客の声に基づいて具体的な戦略を策定し、チームを率いることが求められる。
また、企業の将来を担う事業を生み出す責任も、社長の本分である。企業のトップとして、市場の変化を肌で感じ、現場の声を吸い上げ、それを新商品の形にまとめる。そのためには、顧客訪問を重ね、市場動向を把握し、自らの意思で方向性を決定する覚悟が必要だ。
結論
企業のリーダーである社長は、単なる管理者ではない。企業の未来を切り拓く責任を持つ「開発者」でもある。その責任を果たすためには、現場で得たリアルな情報に基づき、具体的な事業や商品を企画・推進する能力が求められる。この覚悟と実行力こそが、企業の成功を決定づける最も重要な要因である。
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