占有率の重要性と市場原理
市場占有率は、事業の存続や成長に直結する重要な要素だ。
経営における基本中の基本とも言えるこの原理だが、実際には驚くほど多くの企業がこれを軽視している。
占有率を考慮しないまま市場に挑み失敗した事例がたくさんある。
さらに、大企業であっても、市場規模を無視した無謀な挑戦が失敗につながるケースは少なくない。大企業の場合、経営資源に余裕があるため、赤字事業があっても経営基盤が直ちに揺らぐことは少ない。
しかし、中小企業にとって無謀な挑戦は経営そのものを危機にさらすリスクが高い。限られたリソースの中で、事業を始める前に市場規模や競争環境を慎重に分析することが不可欠だ。
例えば、ある市場規模を経済産業省の資料で調べたところ、当時は年間60億円、5年後には100億円に達すると予測されていた。
この市場で事業を存続させるには、最低でも10%の占有率が必要である。つまり、現状売上6億円を達成しなければならない。
しかし、数人という規模でそれを実現するのは不可能に近い。
結果として、この会社は市場の中で最も厳しい条件下に置かれる“限界生産者”となり、行き詰まる。
つまりこの失敗要因は、自社の規模に不釣り合いな市場に踏み込んだことである。

新事業成功のための市場分析
新事業や新商品の展開を検討する際は、まず市場規模、つまり総需要を把握する必要がある。
正確な数値を得ることは難しい場合も多いが、先発メーカーの情報を収集することで市場の実情をある程度把握できる。
興信所などを活用し、主要プレイヤー4〜5社を分析することで、売上高や主な取引先などのデータを基に市場構造や競争環境を推定することが可能だ。
市場規模が分かれば、その10%を自社が担うことを想定し、自社のリソースで実現可能かを検討する。
この規模が達成不可能であれば、事業開始を見合わせるべきだ。
一方で、10%があまりに小さすぎる場合も問題がある。そのような市場では収益性が低く、事業としての意義を見出しにくいからだ。
- 新事業や新商品の展開を検討する際は、総需要を把握する。
- 主要プレーヤー4から5社の情報を収集し、市場規模を測定する。
- 市場規模把握後、自社が10%に入り込めるか確認する。
- 入れそうにない場合は、参入を見合わせる。
- 市場規模の10%が小さい場合も収益性が低いため、参入を見合わせる。
小規模市場参入のリスクと失敗例
市場規模が小さすぎると、高い占有率を達成しても利益は限られる。
実際に、市場の規模が小さすぎたため、同社の得意分野である価格競争戦術を駆使しても十分な利益を得られなかった。
むしろ、価格競争が激化し、業界全体の価格体系を混乱させる結果に終わった。最終的に、この事業から撤退することになった。この事例は、市場規模を見誤ったことで引き起こされた典型的な失敗例だ。
- 市場規模が小さすぎると、高い占有率を達成しても利益は限られてしまう。
- 価格競争が激化し、業界全体の価格体系を崩してしまうことになる。
- 最終的には撤退することになる。
失敗から学ぶべきこと
世の中には、市場規模と自社の実力を考慮せずに事業を始めて失敗する企業が後を絶たない。
中小企業が大きすぎる市場を狙い撃ちして自滅する一方で、大企業が小さすぎる市場に手を出して失敗する。
このような現象が繰り返される背景には、市場占有率の重要性や事業経営の本質を理解していないことがある。
事業とは、単なる思いつきや直感で始めるものではない。
市場規模、競争環境、自社のリソースや戦略を冷静に分析し、計画を練った上で進めるべきだ。
これらを怠れば、成功はおろか、失敗は避けられない。過去の失敗事例から学び、堅実で持続可能な事業経営を目指すことが、企業の成長にとって不可欠である。
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