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N社の勝利と交渉術──冷静さと戦略で競争を制する

プロパンガス業界の価格戦争において、N社は敵対するA社とその関連企業C社の強烈な価格攻勢に直面し、一時は危機的状況に追い込まれていた。しかし、冷静な対応と戦略的な交渉術により、N社はこの競争を見事に制し、完全勝利を収めた。


1. N社が直面した挑戦と不安

C社の無理な価格設定

A社の支援を受けたC社は、トン600円という非常識な安値で市場に攻勢を仕掛けてきた。この価格設定により、N社長は「このままでは自社が干上がってしまう」と恐れ、敵を刺激することを避けたいという弱気な姿勢を見せていた。

冷静さを失った判断の危険性

N社長の動揺に対し、私は次のように冷静さを促した。

「何を慌てているんですか。敵がトン600円で入札してきたなら、それは敵に取らせればいいじゃないですか。それこそ、あなたの会社にとって大きなプラスになるんです。」

このアドバイスは、敵の無理な価格設定が長続きしないという本質的な弱点を突いたものであり、N社が焦って不利な対応を取るのを防ぐ役割を果たした。


2. 冷静な戦略での勝利

敵の自滅を待つ

トン600円という価格では、C社が赤字を抱えるのは時間の問題だった。この弱点を冷静に見極めたN社は、自社の価格を1,300円で維持し、無理な競争に巻き込まれることを回避。結果的に、C社の価格政策は3カ月で失敗に終わり、A社とC社は手詰まりに陥った。

A社社長からの面会申し入れ

価格戦争に敗れたA社は、最終的にA社社長自らがN社長に面会を申し入れるに至った。この状況は、N社が完全に主導権を握ったことを示している。


3. 勝利後の交渉術

相手をじらしながら主導権を握る

私はN社長に、A社との交渉を慎重に進めるよう次のように助言した。

「2〜3カ月程度、何らかの口実を設けて相手をじらしなさい。ただし、あまり長引かせると相手の顔をつぶすことになる。それは避けるべきです。」

交渉を急がず、時間をコントロールすることで、相手にN社の優位性を認識させるよう促した。

提案内容の見抜きと対応

A社からの提案は、「無用な競争を避け、協力関係を築きたい」という内容になると予測された。この提案に対して、私は次のように対応を指示した。

「相手の主張に賛成する姿勢を見せつつ、価格協定に前向きな素振りを示すだけで十分です。ただし、決定的な言質を与えないことが肝心です。」

このように、相手の思惑に飲み込まれず、主導権を維持する形で交渉を進めるよう指導した。


4. 勝利の要因

1) 冷静な判断

敵の無理な価格政策が短期間で自滅することを見抜き、不用意に値下げ競争に巻き込まれなかったことが、N社の勝因となった。

2) 主導権の確保

A社が直接面会を申し入れるまで状況をコントロールし、交渉を有利な形で進めた。

3) 市場での存在感の維持

セールスマンによる地道な市場巡回活動を続けることで、N社が競争に参加する意志を示し、敵にプレッシャーを与え続けた。


5. 教訓と応用可能性

N社の勝利から得られる教訓は、競争が激化する市場でいかに冷静に対処し、戦略的に交渉を進めるかを示している。この事例は他業界でも応用可能であり、特に以下のポイントが参考になる。

1) 焦らず敵の弱点を見極める

敵の強力な武器には必ず代償が伴う。これを見抜き、相手の力を自滅に導く戦略を採用する。

2) 主導権を握る交渉術

時間を味方につけ、急がず相手をじらしながら優位に立つ。

3) 長期的視点を持つ

短期的な競争に巻き込まれるのではなく、冷静な判断で長期的な利益を確保する道を探る。


6. N社の成功と次の一手

N社は、価格戦争を冷静に乗り越え、業界内での地位を守ることに成功した。次のステップとして、A社との協力関係を適切に活用しつつ、自社の営業力をさらに強化することで、市場での影響力を拡大させることが期待される。

この事例は、激しい市場競争においても、戦略と冷静さを持つことで優位性を保ち続けることが可能であることを示している。どんな状況でも、感情に流されず、適切な判断を下すことが成功の鍵である。

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