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蛇口をひねる:自ら売る姿勢が流通を動かす鍵

G社は家庭用品の製造を手がける企業だ。売上が1年半以上停滞する中、社長は広告や販促資材に多額の投資を行っていたが、その努力は思うような成果につながっていなかった。営業はわずか2名、販売は総代理店任せという体制では、効果的な販売促進は難しい状況だった。

そこで提案されたのが「蛇口作戦」――自らの手で市場に向き合い、売れる仕組みを作り出す戦略だ。この実践により、G社は売上停滞を打破し、流通業者との関係を再構築するに至った。


停滞する販売とマネジメントの問題点

  • 広告依存の限界
    大規模な広告投資にもかかわらず、売上には結びつかない。流通現場の状況を無視した活動は効果が薄い。
  • 販売を総代理店に丸投げ
    営業活動を完全に代理店に依存し、自社は「工場」にとどまる状態。自ら売る努力を放棄している。
  • 過剰な内部管理
    営業に回せる人員が内部管理業務に固定されており、効率が悪い。マネジメントの見直しが必要だった。

蛇口作戦の実行:行動で市場を動かす

  1. 営業チームの構築と教育
    内部管理を簡素化し、15名のセールスマンを確保。短期間のロールプレイング形式の研修を経て即戦力化を図った。
  2. 小売店直撃の訪問販売
    小売店に並ぶ商品を直接近隣の家庭に持ち込み販売。1日で2か月分以上の売上を達成する店舗もあり、小売店主の意識を一変させた。
  3. 販売促進の連鎖効果
  • 成果に驚いた店主が商品を目立つ場所に陳列。
  • さらなる特売や販促企画を申し出るなど、店舗との関係が強化される。
  1. 大型小売店での実験
    銀座のM店で商品陳列を改善する活動を開始。丁寧なディスプレイ整理と配置変更により、一日の売上が1個から10個に急増。

蛇口作戦のポイント

  1. 試行と改善
    販売促進活動は、実験を通じて「何が売れるか」を明確にし、それを計画的に実行することが基本。確信を得るまで試行錯誤を続ける。
  2. 問屋との連携強化
    問屋に事前の了承を得て「貸し」を作る。これにより、摩擦を回避するだけでなく、長期的な協力関係を築くことができる。
  3. 小売店と問屋への影響
  • メーカーが直接売上を向上させる行動を取ることで、小売店に利益をもたらし、信頼を得る。
  • 問屋に対しても「借り」を作り、値下げ要求が抑制される。

成果と教訓

  1. 現場主義の効果
    自ら市場に出向き、行動で実績を作ることで、小売店や問屋の信頼を勝ち取り、販売の主導権を握ることができる。
  2. 販売の基本原則
    売れる仕組みを作るには、広告や販促に頼るだけでなく、現場での直接的な努力が不可欠である。
  3. 流通の主導権を取り戻す
    メーカー自身が売る努力を見せることで、流通業者に依存せず、対等な関係を築ける。

結論:自ら動くことが流通を変える

G社の「蛇口作戦」は、売上停滞を打破しただけでなく、流通業者との信頼を深め、販売の効率と効果を飛躍的に高める結果をもたらした。「自社の商品は自分たちで売る」という姿勢を貫くことが、事業成功の鍵であり、流通を動機づける最も効果的な方法である。この戦略が示すのは、行動が市場を動かすという普遍的な教訓だ。

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