MENU

販売組織の再構築:市場中心のアプローチ

企業の販売組織は、内部の効率や管理の都合ではなく、外部の市場ニーズに応えるために設計されるべきです。しかし、多くの企業では、内部の管理優先で非効率な組織構造が構築され、結果として顧客満足度や業績の低下を招いています。地方商社であるM社や事務機メーカーN社の事例が示すように、販売組織のあり方を市場視点で見直すことが急務です。


M社の課題:膨大な商品群とテリトリー制の弊害

M社では、数千種類に及ぶ商品を取り扱いながら、五つの営業所にテリトリーを割り振り、その区域内で全ての商品を販売する仕組みを採用していました。しかし、この方式では、各セールスマンが膨大な種類の商品を担当するため、商品知識の不足や販売戦略の不在が常態化。顧客へのサービスの質も低下し、業績低迷の要因となっていました。

解決策:市場単位での分担と再編成

M社のような状況を改善するには、以下のような再構築が必要です。

  1. 市場単位での分担
    商品の特性や市場ニーズに応じて、たとえば「農業資材・農薬」と「その他の品目」に市場を区分けし、各セールスマンの担当範囲を明確にします。これにより、商品知識や顧客対応の専門性が向上します。
  2. 商品構成の再検討
    市場ごとに商品ラインを見直し、不採算商品を整理する「スクラップ・アンド・ビルド」を実行します。これにより、収益性の高い商品に注力できます。
  3. 営業所の再編成
    市場区分に基づき営業所や担当エリアを再編成。独立採算制を廃止し、会社全体の戦略に基づいた連携を強化します。

N社の問題:事業部制の誤った運用

事務機メーカーN社では、ハード事業部とソフト事業部が分断され、顧客への統一的なサービス提供ができていませんでした。その結果、顧客企業A社では、購入した会計機が実際の運用に適していないという事態が発生し、顧客満足度の低下を招きました。

解決策:同一市場一事業部制の導入

N社のようなケースでは、以下の方針が必要です。

  1. 市場ごとの一元化
    同一市場内に複数の事業部が競合しないよう、一つの市場には一つの事業部を設置する「同一市場一事業部制」を採用します。これにより、顧客への責任が明確化し、内部対立を防ぎます。
  2. 顧客ニーズの優先
    内部論理ではなく、顧客の視点に立った統一的なサービス提供体制を構築します。たとえば、ハードとソフトを統合した事業部を設置し、一貫したサービスを提供します。

K社の非効率:複数担当者による訪問

事務機商社K社では、事業部ごとに担当者を分けた結果、小売店への訪問に複数のセールスマンが必要となり、業務効率が著しく低下していました。このような体制では、顧客側の負担も増加し、信頼の低下につながります。

解決策:統合的な訪問体制の構築

K社のようなケースでは、以下の対応が必要です。

  1. 訪問担当の一本化
    事業部間の調整を行い、顧客訪問を一人のセールスマンが担う体制を構築します。これにより効率が向上し、顧客対応の品質も改善されます。
  2. 販売活動の統一
    各事業部の販売戦略を統合し、顧客ごとに最適な提案ができるよう調整します。

販売組織再構築の基本原則

販売組織を効果的に再編するには、以下の基本原則を押さえることが重要です。

  1. 市場中心主義
    販売組織は市場ニーズに応えるために存在します。市場ごとの特性を把握し、それに応じた柔軟な体制を構築する必要があります。
  2. 効率と機動力
    顧客への訪問や情報収集、競合他社との競争に迅速に対応できる機動力を持つ組織を目指します。
  3. 現場の声の反映
    現場の状況や顧客の声を正確に把握するために、社長や幹部が直接顧客を訪問し、生の情報を収集することが不可欠です。

結論:市場視点に基づいた柔軟な組織運営

販売組織の最適化には、内部論理に囚われず、顧客ニーズや市場特性を最優先に考える姿勢が求められます。市場に即した分担や再編成を行い、効率的かつ柔軟な体制を構築することで、顧客満足度と業績の向上が期待できます。

組織運営の成功の鍵は、現場感覚を持ち続けることにあります。社長や経営層が顧客の声を直接聞き、組織の運営に反映することで、販売組織は初めて市場に適応した有効な形となるのです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次