京都に拠点を置く漬物メーカー「大安」は、パッケージデザインの工夫によってブランドを強く印象付けています。同社の製品パックには、中央に大きく描かれた「かぶ」のシンボルマークと、その下に配置された「大安」の文字が目を引きます。さらに、袋の上部には「大安の」という文字が目立つように記され、品名は控えめに添えられる形。このデザインからは、商品名よりも「大安」というブランドそのものを消費者に訴求する姿勢が明確に読み取れます。
このようなアプローチは、ブランドの認知度を高める上で非常に有効です。しかし、反面として、消費者が商品名を探しにくいと感じる可能性も否めません。ブランド名を強調しつつ、商品の特徴も分かりやすく伝えるバランスが鍵を握ります。それでも、「大安」の戦略は、ブランドを前面に押し出すことで消費者に一貫した印象を与えるという点で成功を収めているといえます。
「ブランドを売る」という基本に忠実な戦略
「大安」は週刊誌広告にも積極的にブランド名を目立たせるデザインを採用しています。これにより、消費者の記憶に「大安」という名前を深く刻み込む戦略を徹底しています。このような「ブランドを売る」という考え方はシンプルですが、驚くべきことに、多くの企業がその重要性を軽視しているのが現状です。ブランドを通じて商品全体の価値を伝え、信頼を構築するという基本原則が見過ごされているのです。
漬物業界を例に挙げると、多くの商品パッケージでは「紅しょうが」や「きうり漬」といった品名が大きく目立つ一方で、メーカー名やブランド名は小さく控えめに記載されています。これでは消費者がブランド名に注目する機会を失ってしまいます。一貫したブランド戦略が欠けているため、長期的には市場での競争力を弱めるリスクを抱えることになるでしょう。
ブランドを訴求するデザインの在り方
透明なパッケージであれば、商品名は小さく記載するだけで十分です。消費者は中身を一目で確認できるからです。それよりも、最優先すべきはブランド名を大きく目立たせ、消費者に強い印象を与えることです。ブランドは品質や信頼の象徴であり、それを前面に押し出すことで、商品の付加価値が高まります。この戦略こそがパッケージデザインの本質といえるでしょう。
ブランド軽視の背景にある問題点
多くのメーカーが「ブランドを売る」という基本戦略を理解していない背景には、単なるマーケティングの未熟さ以上に、発想そのものの欠如があると考えられます。「わが社のブランドは目立たせなくても、消費者は自然に覚えてくれるだろう」という受動的な姿勢は危険です。競争が激化する市場で生き残るためには、ブランドを積極的に発信し、消費者の記憶に刻み込む努力が不可欠です。
「大安」の事例から学べることは、ブランド戦略の基本に立ち返り、ブランドを通じて商品の価値を伝える重要性です。競争が厳しい時代において、ブランドこそが消費者との信頼関係を築く鍵となるのです。
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