購買行為者と購買決定者の違いを理解する
購買行為者に向けたアプローチが的外れであることは、日常的な例からも明らかだ。例えば、子供が母親の指示を受けて惣菜を買いに行く場合、子供は「購買行為者」に過ぎない。ここで子供に対して「エビフライが特別サービスだよ」と売り込んでも、決定権のない子供は「ママに聞かないとわからない」と返すだけだ。
この例が示すのは、購買決定者、すなわち母親に直接訴えかけることの重要性だ。購買行為者にどれだけ力を入れてアプローチしても、決定権を持つ購買決定者に届かなければ効果を上げることはできない。このように、購買行為者と購買決定者を区別し、後者に焦点を当てた販促活動を行うことが、効果的な販売戦略の第一歩となる。
メーカーの犯しがちな過ち
この購買行為者と購買決定者の違いを理解していない企業は少なくない。例えば、購買行為者に向けた販促活動に時間や予算を費やし、効果が薄いと感じることは多い。しかし、それは販促活動自体の質が悪いのではなく、ターゲットが間違っているからだ。
メーカーがまず取り組むべきは、自社の商品やサービスの購買決定者を正確に特定することである。このステップを軽視して販促活動を進めてしまうと、時間やコストが浪費されるだけでなく、競争優位性も失われかねない。
間接的なアプローチの重要性
購買決定者が一般大衆である場合、訪問販売や通信販売のように直接アプローチできる手法は限られる。そのような場合には、購買決定者に影響を与えるポジションにいる存在、例えば小売店や業者をターゲットにするのが効果的だ。
たとえば、玄関扉のような商品では、最終的な購入決定者は消費者(施主)であるが、実際には業者が薦める商品が選ばれることが多い。このような場合、消費者に直接訴求するだけでなく、業者に自社商品を推奨してもらうための戦略が鍵となる。
実質的な購買決定者としての業者
業者が自社商品を薦めない限り、消費者がその商品を選ぶ可能性は極めて低い。つまり、購買決定者が消費者であっても、実質的な決定権は業者にある。この事実を踏まえると、メーカーは次のような戦略を取る必要がある:
- 業者向けの情報提供と教育
業者が商品を自信を持って薦められるよう、製品の特徴やメリット、競合優位性について十分な情報を提供する。 - 業者向けインセンティブプログラム
業者が自社商品を積極的に推奨するよう、販売実績に応じた報酬や特典を設定する。 - 業者との関係強化
定期的な交流やフィードバックの機会を設け、業者との信頼関係を深める。
効果的な販促戦略の設計
購買決定者が誰であるかを正確に特定し、必要に応じてその周辺にいる影響力を持つ存在(業者や小売店)をターゲットにした間接的なアプローチを行うことが重要だ。このように、多層的な戦略を展開することで、購買決定者に届く効果的な販促活動が実現する。
真の購買決定者を中心に据えた販売戦略を構築することで、無駄なリソースを削減し、効率的に売上を伸ばすことが可能となる。この視点を取り入れることこそ、現代の競争激しい市場で勝ち残るための鍵である。
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