商品の特性に応じた適切な販売手法を採用することは、販売戦略を成功させる上での重要な要素です。
商品の性格は生産方式によって分類でき、それぞれの方式に適した販売戦略を立案することが求められます。
本稿では、主要な生産方式ごとに販売戦略のポイントを詳しく解説します。
目次
1. 個別生産:トップ層の関与が必須
概要
個別生産とは、顧客の要望や仕様に応じて一品一品を生産する方式で、大規模プロジェクトや特殊な用途の機械類が該当します。価格帯が高く、購入決定には顧客側の経営層が関与します。
販売戦略のポイント
- トップ対トップの交渉
契約や受注の最終段階では、顧客側のトップ層と直接交渉を行うことが必要です。自社のトップも現場に出向き、信頼関係を築くことが求められます。 - 長期的な関係構築
個別生産品の特性上、受注までに多くの手続きや交渉が必要です。継続的な関係構築を通じて、次のプロジェクトへの基盤を築くことが重要です。 - カスタマイズ力のアピール
顧客の要望に柔軟に対応できる技術力や実績を効果的に伝えることで、競争優位性を高めます。
2. 多量生産:販売網の整備が鍵
概要
多量生産とは、標準化された製品を大量に生産する方式です。日用品や食品など、需要が安定している商品が該当します。
販売戦略のポイント
- 効果的な販売網の構築
多量生産品は、適切な販売網なしには市場での流通が難しくなります。広範な流通チャネルを整備し、商品を効率的に届ける仕組みが必要です。 - 小規模市場での集中戦略
中小企業の場合、大規模市場での競争は不利になりがちです。小さな市場で圧倒的な占有率を目指し、効果的な資源配分を行う戦略が有効です。 - 差別化の推進
多量生産では、商品そのものの差別化が難しいため、価格以外の競争軸(サービス、ブランド価値など)を構築することが重要です。 - 在庫管理の徹底
生産効率を追求するあまり在庫が過剰にならないよう、需給バランスを適切に管理することが必要です。
3. 装置生産:市場開拓と需要喚起が重要
概要
装置生産とは、専用設備を用いて連続的に製品を生産する方式です。化学製品や鉄鋼など、大規模なインフラや製造業向けの素材が該当します。
販売戦略のポイント
- 新市場の開拓
装置生産品は、用途開発や市場拡張を通じて新たな需要を生み出すことが必要です。顧客に対して製品の新しい使い方を提案するキャンペーンが有効です。 - 需要喚起の施策
値下げを伴うプロモーションや用途提案による需要喚起を行います。生産規模を拡大しコストを下げることで価格競争力を高める戦略も重要です。 - 競争の管理
装置生産は業界全体での供給過剰や価格競争が避けられません。市場シェアを守りつつ収益性を確保するため、業界内でのカルテルや差別化の実施を検討します。
生産方式の変化に伴う戦略の見直し
少量生産から中量生産へ、あるいは規格品生産へと移行する場合、生産方式に合わせて販売戦略も柔軟に見直す必要があります。
戦略の見直しポイント
- 販売チャネルの拡大
生産規模が拡大するほど、流通チャネルの多様化が求められます。販売網の再構築を検討します。 - 販売スタッフの再配置
少量生産では個別対応が重視されますが、規格品では広域販売を行うため、営業の配置や訪問頻度を最適化します。 - 価格戦略の調整
中量生産では価格競争が激化しやすいため、適切な価格設定と付加価値の提供が重要です。
生産・コスト・販売の連動
生産方式の変更に伴い、コスト構造が変化することは避けられません。販売戦略を成功させるには、以下の連動を意識する必要があります:
- 生産効率の向上と販売力の強化
生産量が増加しても、それを適切に販売できる体制がなければ在庫が積み上がるだけです。生産拡大に合わせた販売施策の導入が必要です。 - コスト削減の共有
生産規模の拡大で削減されたコストを顧客に還元し、価格競争力を高めます。 - 収益性の維持
過剰供給や価格競争が収益を圧迫する場合、市場の整理や製品の差別化によって収益性を確保します。
まとめ
商品の性格によって販売戦略は大きく異なります。個別生産、多量生産、装置生産のいずれにおいても、商品特性を理解し、それに基づいた適切な販売手法を採用することが重要です。
また、生産方式の変化に伴うコスト構造や市場環境の変化を見極め、柔軟に戦略を見直す姿勢が、持続可能な事業運営の鍵となります。
企業は、生産・販売の連動性を意識しながら、適切なバランスを保つことで、競争優位性を確立し、収益を最大化することが可能となるのです。
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