市場戦略において重要な柱の一つが、得意先の選定と訪問基準の設定です。特に「蛇口作戦」を推進する際には、対象となる小売店やエンドユーザーを正しく選定し、訪問基準を明確に定めることが、効率的な営業活動の鍵となります。以下に、その具体的なプロセスと重要なポイントを解説します。
1. 得意先選定の重要性とプロセス
得意先を選定する際には、まず社長自身が現地を訪問し、直接確認することが不可欠です。営業担当者や過去の販売実績に頼るだけでは、重要な得意先を見逃すリスクがあります。実際、B社長の事例では、得意先訪問を通じて思わぬ「シンデレラ」の存在に気づき、その後の戦略に大きな影響を与えました。
選定プロセスでは次の手順を踏むことが推奨されます:
- 現地訪問
社長自身が主要な得意先を訪問し、実際の状況を確認。 - データ分析
「売上高ABC分析表」や「得意先別売上高年計表」を活用し、過去の実績を基に分類。 - 営業担当者の意見収集
営業チームから現場の情報や得意先の特性に関する意見を吸い上げる。 - 格付けの実施
得意先を「別格(AAA)」「最重点(AA)」「重点(A)」「安定(B)」「成行(C)」に分類し、有望な得意先を明確にする。
2. 訪問基準の設定と実行
選定した得意先に対し、役職や重要度に応じた訪問基準を設定することで、営業活動を体系的に管理します。この訪問基準は、「得意先訪問基準表」として具体化し、以下のように分類します:
- 別格(AAA): 常駐または毎日訪問
- 最重点(AA): 週2回
- 重点(A): 週1回
- 安定(B): 月1~2回
- 成行(C): 必要に応じて随時
特定の商材や業種(例:産業機械など)の場合、訪問頻度は若干調整が必要です。繁忙期や閑散期に応じて柔軟に変更することも求められます。
3. 定期巡回の徹底と注意点
得意先の訪問は、天候や注文の有無に関係なく一貫して行われるべきです。巡回の基準は三カ月ごとに見直し、状況に応じて修正することで、常に最適な訪問体制を維持します。
訪問時の注意点としては以下が挙げられます:
- 滞在時間の適正化
滞在時間は特別な用事がない限り、10~15分程度が適切です。長居は得意先の迷惑となり、信頼を損ねる原因となります。 - 曜日固定の巡回
最重点および重点の得意先には曜日を固定して巡回することで、強い印象を与え、信頼関係を深める効果が期待できます。
4. セールスマンの管理と教育
蛇口作戦を成功させるためには、巡回を徹底するセールスマンの存在が不可欠です。しかし、ベテランほど定期巡回を嫌がる傾向があり、巡回したふりをしているケースもあります。このような場合、毅然とした対応が必要です。根気強く訪問を続ける姿勢こそが得意先の信頼を勝ち取る鍵です。
セールスマンの訪問効率を基準に設定する際は、以下を考慮します:
- 社長の訪問効率を基準に
社長が巡回した場合の訪問回数よりも2~3割低い値を基準とすることで、無理なく達成可能な目標を設定します。 - 攻撃的な巡回の展開
同業他社の3倍以上の訪問頻度を意識し、特に最重点や重点の得意先には積極的なアプローチを行います。
5. 毎月の訪問計画書の作成
訪問基準をもとに、役職ごとに具体的な訪問回数を算出し、月単位で訪問計画書を作成します。訪問回数が基準を満たせない場合は、得意先の数を減らす調整を行います。ただし、訪問回数を減らす際には、以下を徹底します:
- 過去の訪問実績に依存しない
過去の実績は不十分な戦略を反映している場合があるため、新たに設定した基準を優先します。 - 戦略的な優先順位を重視
得意先の重要度を基に訪問頻度を調整し、効率的なリソース配分を行います。
まとめ
得意先の選定と訪問基準の設定は、市場戦略を成功に導くための基盤です。現地訪問による正確な情報収集と、データに基づく格付けを組み合わせることで、有望な得意先を見逃すことなく的確なアプローチを展開できます。
訪問基準の明確化と定期巡回の徹底を通じて、得意先との信頼関係を深め、競争力を高める営業活動を実現することが可能です。このプロセスを継続的に改善しながら推進することで、蛇口作戦の効果を最大化し、持続的な成長を達成できるでしょう。
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