付加価値率の変動は、経常利益に直接的かつ明確な影響を与えます。
付加価値率が上昇すれば利益が増加し、逆に付加価値率が低下すれば利益は減少します。
この関係はシンプルですが、経営判断において見逃せないポイントです。以下では、具体的な影響と注意すべき点について解説します。
1. 付加価値率の増減が経常利益に与える影響
付加価値率が変動すると、それに応じて付加価値額が変動します。この増減がそのまま経常利益の増減に直結します。計算式は以下の通りです。
この増分付加価値は固定費に影響を与えないため、売上高が一定であれば付加価値額の増減はそのまま経常利益の増減に反映されます。
具体例
現状のデータを以下のように設定します:
- 売上高:10億円
- 付加価値率:40%
- 固定費:4億円
付加価値率が42%に上昇した場合、または38%に低下した場合の経常利益を計算してみます。
付加価値率 | 付加価値額 | 経常利益 |
---|---|---|
42% (+2%) | 4.2億円 | 0.2億円増加 (1.2億円) |
40% (現状) | 4.0億円 | 0.8億円 |
38% (-2%) | 3.8億円 | 0.2億円減少 (0.6億円) |
このように、付加価値率の変動幅に応じて経常利益が同じ幅で変動することがわかります。
2. 付加価値率の変動と損益分岐点
付加価値率が上昇すれば損益分岐点売上高は低下し、逆に付加価値率が低下すれば損益分岐点売上高は上昇します。この関係は以下の式で説明できます:
付加価値率は「1 – 変動費率」に相当するため、付加価値率が高いほど損益分岐点売上高が低くなることがわかります。
3. 注意すべきケース
付加価値率の高さが必ずしも利益の最大化に繋がらない場合もあります。以下はその具体例です:
閑散期の低付加価値率販売
閑散期に低い付加価値率で販売を行うことで固定費を回収し、全体の利益を底上げできる場合があります。特に稼働率を確保することが重要な業種では、短期的な付加価値率の低下が有効な戦略となることもあります。
値下げによる売上増加
値下げによって付加価値率が低下するものの、大幅な売上増が見込まれる場合、結果として利益が拡大する可能性があります。この際、増分計算を用いて値下げの効果を正確に評価する必要があります。
外注対応による付加価値率低下
売上増加に伴い外注を利用する場合、外注費が変動費として計上されるため付加価値率が低下します。しかし、この売上増加によって利益が拡大することもあるため、総合的な判断が必要です。
4. 経営判断における増分計算の重要性
付加価値率が高いほど利益が増加するという固定観念に囚われると、利益最大化のチャンスを見逃す恐れがあります。重要なのは、「付加価値率の変化が会社全体の利益にどのような影響を与えるか」を正確に把握することです。このためには、以下のような視点が求められます:
増分計算の活用:付加価値率の変動による増減分だけを評価し、利益への影響を計算する。
全体最適の視点:特定の期間や取引において付加価値率を犠牲にしても、長期的な利益増加に繋がる戦略を検討する。
結論
付加価値率の変動は経常利益に直結する重要な要素です。しかし、単純に付加価値率の高さを追求するだけでは、全体の利益最大化を実現できない場合もあります。
増分計算を駆使して、付加価値率の変化が会社全体の利益に与える影響を正確に評価することが、的確な経営判断を支える鍵となります。
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