損益分岐賃率と必要賃率の計算は、経営改善において極めて実用的なツールである。これらの計算は通常、過去の実績データではなく、将来の収益目標や経営計画を基に行うべきである。
未来志向の賃率計算
固定費の推定
固定費は過去の実績値ではなく、利益計画に基づく推定値を用いる。
これにより、収益目標を達成するために必要な賃率を正確に計算できる。
変動費と作業時間の予測
変動費や作業時間も将来の予測値を基に算出する。
これにより、現実的かつ計画的な指標が得られる。
利益計画がない場合、まず利益計画を作成することが優先される。損益分岐賃率や必要賃率は経営目標を達成するための指標であり、計画がなければ十分な効果を発揮できない。
実際賃率の計算と調整
実績データの利用
実際賃率は、過去の実績データを基に計算する。
総工数には、直接工の定時間勤務を基準とするが、残業が常態化している場合は超過勤務系数を掛けて調整する。
出勤率と操業度の考慮
出勤率は、実際の稼働状況を反映するため、有給休暇や無給休暇を含めた実態を捉える。
操業度は、季節変動や閑散期の非稼働時間を考慮して算出する。特に閑散期には、稼働していない時間を「遊び」として除外することで実態に即した値を得られる。
業種別の計算単位
土木・建築分野
「人工」を単位とする計算が一般的で、一日単位での対応が実務に適している。
個別生産
「人工」で間に合う場合もあるが、正確さを求める際には「時間当り」の計算が必要になることも多い。
中量・多量生産
中量生産では「時間当り」、多量生産では「分当り」の計算が実用的であり、特に中小企業では「分当り」の計算が広く採用されている。
大企業の影響
取引先や親会社の要件によって、「秒当り」での計算が求められる場合もある。ただし、通常は「分当り」程度が実用的である。
外注品の扱い
変動費としての外注費
部品やサブアッセンブリーの外注費は変動費に含まれるため、賃率計算の対象外となる。
オール外注品の付加価値調整
オール外注品の付加価値分は、自社で直接生み出す必要がないため、賃率計算の分子からその金額を引き去る。
調整後の計算式:
人員増加の影響と現実的な解決策
直接工を増やすことで分母が増え、賃率が下がるように見えるが、固定費の増加や操業度の低下、付加価値の減少などのリスクを伴う。
- 固定費の増加
- 人員増加により、給与や福利厚生費が増加する。
- 操業度の低下
- 作業量が一定であれば、稼働率が下がる可能性がある。
- 付加価値の減少
- 増員しても効率が上がらない場合、1人あたりの付加価値が低下する。
代替案
- 作業効率の向上
- 適切な外注化
- 稼働率の最大化
- 製品構成の見直し
実践的な収益管理への道
率計算を活用することで、単なる数値分析を超えて、未来志向の経営改善に役立つ指標が得られる。これにより、経営資源を効率的に配分し、持続的な成長を実現するための計画が可能になる。
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