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原価計算の限界と収益向上への実務的アプローチ

原価計算の分野では、「原価」を追求することに重きが置かれ、膨大な研究や論文が積み重ねられてきました。その結果、さまざまな種類の「原価」が次々と「発見」されています。

しかし、それらの大半は新たな視点による原価の解釈に過ぎず、実務の現場においてはさほど有用性がありません。それどころか、こうした理論が現場を混乱させる要因になることすらあります。

一方、企業活動の本質は、外部から調達した価値に独自の経済的価値を加え、新たな「富」を創造することにあります。

この「富」こそが企業の社会的使命であり、その根幹をなすのが「付加価値」です。

付加価値は次の算式で表されます。

付加価値 = 売上高 − 外部価値(変動費)

製造業ではこれを「加工高」、流通業では「粗利益」と呼ぶこともありますが、基本的な意味は同じです。外部価値が変動費を指し、内部費用が固定費を意味することを理解しておくことが重要です。

目次

原価理論の実務への影響と収益性への転換

学術的な原価計算の多くは、実際の経営に直結する成果を生み出すものではありません。特に、学者の関心が原価そのものに偏っている場合、収益の視点が欠けていることが問題となります。このような原価計算の限界を踏まえ、私たちは以下のような実践的なアプローチを採用するべきです。

収益論へのシフト

収益に焦点を当てた理論構築が求められます。これにより、付加価値を正確に把握し、収益性を向上させる具体的な手法を見出せます。

生産性の正確な理解

生産性の基本公式は以下の通りです。

生産性 = 成果 ÷ 費用 = 付加価値 ÷ 内部費用

ここで、成果(アウトプット)を増やすか、費用(インプット)を減らすかのいずれか、またはその両方を実行することが、生産性向上の鍵となります。

生産性向上の2つの戦略

生産性を高めるには、分数である生産性の公式に基づき、以下の2つの戦略が考えられます。

分子(成果)の拡大

売上を増やしたり、提供する価値を高めたりすることで、生産性を向上させます。このアプローチには明確な上限がなく、持続的な成長が期待できます。

分母(費用)の縮小

原価低減や内部効率化を図ることで、生産性を向上させます。ただし、費用削減には限界があり、効果が頭打ちになるリスクが伴います。

従来のマネジメントや会計学では、費用の削減に重点を置きがちです。しかし、分母を削減する施策だけでは企業の成長にはつながりません。

特に「原価削減」「能率向上」だけに集中する場合、企業は成長の限界に直面し、長期的な発展が困難になります。その典型例が「下請加工業」のような業種です。

収益向上の実現に必要な視点

企業が持続可能な成長を実現するには、費用削減以上に、売上や収益を増加させる戦略に注力する必要があります。これには以下の要素が重要です。

  1. 多角的な視点
    物事を一面的に捉えるのではなく、複数の視点から検討することで、新たな価値創造の可能性を見出します。
  2. 戦略的な意思決定
    収益向上には上限がなく、経営者の戦略的判断が企業の成長を左右します。単なる費用削減を社員に任せ、経営者自身は次元の高い収益戦略に集中すべきです。
  3. 具体的な収益向上施策
    • 新規市場の開拓
    • 商品・サービスの高付加価値化
    • 顧客満足度の向上を通じたリピート率の改善

結論:企業成長を牽引する収益志向

原価計算や費用削減に固執する従来の手法には限界があります。企業の持続的成長を目指すには、収益の最大化を目指した戦略が不可欠です。

分母の削減だけにとらわれるのではなく、分子を拡大する発想を持つことで、企業の潜在力を最大限に引き出せます。収益を増大させる実戦的なアプローチを実行し続けることが、競争力の向上と持続可能な成長の道を切り開くのです。

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