次に製造業について考える。製造業の場合、製造活動があるため、損益計算では売上高から製造原価を差し引いて売上総利益を算出する。しかし、非製造業の売上原価と製造業の製造原価は、その性格が異なっている点に注意が必要だ。
製造原価とは
製造原価は、製造原価報告書を参照すると分かるように、非製造業でいう売上原価に相当する外部仕入れ(原材料費や外注費)と、企業内部の費用である製造経費が合わさったものだ。
このように、製造原価は外部仕入れと内部費用という性質の異なる要素が一体となって構成されている。
製造減価の考え方の不都合
過去の数値を報告するだけであれば問題はないが、これを前向きに活用しようとすると不都合が生じる。その理由は、外部仕入れ(原材料費や外注費)は変動費である一方、内部費用(製造経費)は固定費であるからだ。
製造原価=外部仕入(原材料費や外注費)+内部費用(製造経費)
売上高が変動すると、変動費である外部仕入れは比例して増減するが、固定費は変動しない。この性質により、売上高の変動が製造原価率の変動を引き起こすことになる。
この事実は、必要な利益を達成するための売上高を計算する際に、一定の製造原価率を適用することができないことを意味する。
製造原価率が売上高の変動によって変化する以上、正確な必要売上高を算出することが難しくなる。
結果として、利益計画そのものが立てられないという問題に直面することになる。
利益計算時の製造原価の考え方
利益計画を可能にするには、製造原価を固定費と変動費に分ける必要がある。こうなると、製造原価という概念は利益計画においてはほとんど意味を持たなくなり、重要なのは変動費と固定費の二つの要素だけになる。このアプローチによって初めて正確な利益計画が可能になるのだ。
こうなれば、製造業であっても非製造業であっても、利益計画の手法は全く同じものになる。
違いは用語の使い方だけである。非製造業の売上原価に相当するものが、製造業では「外部仕入れ(変動費)」となり、非製造業の売上利益に相当するものが、製造業では「加工高」として表現される。
これが用語の違いを除いた本質的な共通点である。
加工高という用語について
「加工高」という用語は中小企業庁で使用されているものであり、これに類似した概念として「付加価値」(控除法の場合)や「限界利益」がある。厳密には完全に同一ではないが、本質的には同じ意味を持つものと考えてよい。
このような用語については、どれを使用しても実務上の不便や問題はなく、むしろ同じ意味で一貫して使うべきだというのが私の主張だ。
なぜなら、理論的に細かく取り組みすぎると、理論上は正しいとしても、実務では全く役に立たなくなる危険があるからである。
実用性を重視し、分かりやすさと一貫性を保つことが重要だ。
固定費について
固定費は、製造固定費(製造経費から変動費である外注費を除いたもの)と一般管理費・販売費を合わせたものとして捉える。
この固定費全体を「内部費用」として一括して扱えばよい。このような考え方に基づいて作成された利益計画のフォーマットが、巻末の「第5表」に示されている形となる。
この方法を採用すると、人件費も経費も全社で一本化され、非常に分かりやすくなる。ある社長は、このフォームに基づく運用を始めてから、「こんなに分かりやすい表現はない。人件費も経費も、これまで製造部門と管理部門に分けて考えていたのが馬鹿らしく思える」と私に語ったほどだ。
この統一的な視点により、経営の全体像が明確になり、計画の立案と実行が一層効率的になるのである。
ただし、「製造原価がどうしても必要だ」とおっしゃる方には、巻末の「第6表」のようなフォーマットを採用することを提案する。
この場合でも、重要なのは製造原価そのものではなく、「加工高」であることは言うまでもない。加工高を中心に据えることで、製造業の利益計画をより実質的に進めることが可能になる。
利益計画とは、事業経営の最も基本的な「枠組み」を示すものであり、その中で最も重要な数字は、言うまでもなく経常利益である。
利益計画は、必要な経常利益を達成するために、どの要素がどのような数値でなければならないかを明確にするための指針である。これにより、事業運営の目標とその達成のための道筋が具体化される。
その次に問われるのは、その数字を実現するためには具体的に何をすべきか、という点である。つまり、利益計画は経営の「出発点」であり、「終点」ではないということだ。
計画そのものは方向性を示すに過ぎず、その実現に向けた行動こそが、経営の本質的な課題となる。
利益計画を実現するうえで最も重要な数字は、売上総利益(粗利益)、製造業の場合は加工高である。これがまさに利益の「源泉」にあたる。
しかし、この粗利益や加工高を具体的にどう生み出すかという方法論は、利益計画そのものからは導き出せない。なぜなら、利益計画は「こうあるべきだ」という目標を示すものであり、「こうして利益を生み出す」という手段や戦略を具体的に示すものではないからだ。
利益を生み出す手段と戦略
「こうして利益をあげる」という計画は、まさに「販売計画」の役割である。しかし、その販売計画に入る前に、再度強調しておきたいことがある。
それは、利益計画とは「社長が達成したい利益をまず明確に決め、その目標から逆算して粗利益や売上高を算出する」ものである、という点だ。
これこそが利益計画に対する正しい基本的な姿勢であり、経営計画全体を導く出発点であることは言うまでもない。
それでは販売計画の説明に移る。
※後退する判断をくだす場合
しかし、事業運営とは常に前進だけを追求するものではなく、必要に応じて後退する判断を下さなければならない場合もある。
例えば、石油ショックによる不況がその典型例だ。この不況では、食品や日用雑貨などの生活必需品を除いて、ほとんどの業界で売上が減少した。
市場そのものの需要が大幅に縮小したため、従来の体制のままでは対応が不可能であることは明らかだった。こうした状況では、「縮小均衡」を図ることが避けられない。
事業とは、市場の変化に柔軟に対応するものであり、環境に合わせて体制を調整することが求められる。
縮小均衡の基本的な姿勢は、市場の需要予測に基づき、まず予測される売上高を設定し、その数字をもとに「我が社が生き残る道」を見いだすことである。
果敢な人員削減を断行し、新たな状況に適応することで、困難な事態を乗り越えることもできる。そ
コメント