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マネジメントには、事業経営の思想がないことを知れ

本章で取り上げた四つの企業の事例は、市場や顧客の存在を無視し、企業内部の対応だけに注力するというマネジメント理論の誤りを明確に示している。

これら四社に限らず、コンサルタントとして多くの企業に関わる中で、また社長セミナー後の相談の場でも、同じ問題に何度も直面する。そもそも、いわゆるマネジメントとは、企業経営の実態を知らない者たちが作り上げた単なる机上の空論に過ぎない。

事業を経営するとは何か、社長が何をすべきかについては誰も教えてくれない。だからこそ、自分自身の考えで進めていくしかない。しかし、うまくいかない状況に直面すると、多くの人が経営学と呼ばれる誤った学問や、権威者を名乗る外部の素人に頼りがちになる。

その全くの誤りが悲劇を生む原因となる。それらの理論が内向きの管理に偏っているからだ。内部管理に埋没すれば、企業の未来は暗闇に包まれるだけだ。

事業経営が市場活動そのものであることを理解している社長は、市場の観察や動向に常に注意を払い、お客様との接点を大切にする。そして、最も多くの時間を顧客訪問に費やしている。

そこから「自社が何をすべきか」を明確に見出し、迷うことなくそれを実行に移している。そして、その結果として優れた業績を上げている企業があることを、私は確信している。

こうした社長は、自らの信念を経営計画書として明文化し、それを推進する中で見事なリーダーシップを発揮している。その計画は社内の意思を一つにまとめ、全社員が協力して社長の意図を実現するために全力を尽くす。社内に対して余計な心配を抱えることもなく、「うちの社員には、ただ感謝しかない」と語る社長たちを、私は友人として数多く知っている。

マネジメント理論が抱える大きな問題は、事業経営の本質を見失い、企業の内向きの管理に焦点を当てすぎている点にある。これは、経営者が市場の声を聴き、顧客のニーズに応えるための活動ではなく、社内のプロセスやルールに囚われた管理型の運営を促してしまう。本来、経営者が注力すべきは市場との関わりであり、その中で生まれる「我が社は何を成すべきか」という自らの信念である。

事業経営の核は市場活動であり、経営者が最も時間を割くべきは市場の観察と顧客訪問である。このようにして、市場の動向に根ざした経営ができる社長は、単に内部管理の範囲を超えて、「市場でどのように価値を創造するか」という視点で経営を推進する。これは、内部における組織管理だけに囚われず、企業の成長を市場との接点で実現するという、真に実践的な姿勢である。

現実には、マネジメントの理論は内向きの管理体制を理想化しがちだが、これはしばしば市場のニーズや変化に目を向ける余裕を奪い、企業の未来を閉ざしてしまう。私が多くの企業で見てきた成功する経営者は、自らの考えを経営計画に具体化し、全社一丸となって推進していく。彼らにとって社員は「感謝すべき協力者」であり、社内の不安や懸念を抱えることなく、企業の成長を市場との結びつきの中で実現している。

マネジメントの机上論に囚われることなく、自ら市場を見据え、経営の意思を明確に示し続ける姿勢が、企業に持続的な成長と顧客からの信頼をもたらす。それこそが、経営者に求められる真のリーダーシップであり、事業経営の思想を知る者のみが持ち得る信念である。

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