初めてレストランのA社を訪れたのは、十年以上前のことだ。当時のA社は業績が右肩下がりで、大幅な赤字に苦しんでいた。近隣に次々と新しいレストランができたことが原因だとされている。
「何が競争相手のせいだ。自分でやるべきこともせずに売上が減ったと嘆くのは筋違いだ。性根を入れ替えて環境整備に取り組め。こんな汚い店ではお客様が嫌がるのも当然だ。それを放置したまま、店の宣伝に頼るなんて怠け者のすることだ」と、断じてそう考えたのだ。
この日を境に、A社長は心を入れ替え、環境整備に本腰を入れるようになった。それ以降、三か月に一度ほどのペースでA社を訪れ、各店舗の採点と注意点を伝えることにした。二度目の訪問時には、すでに売上がわずかに上向いていた。そして三度目の訪問のときだ。私が行った各店舗の採点をグラフに記入した社長が、「アッ」と驚きの声を上げた。私の採点の上昇と、店舗ごとの売上の伸びが見事に一致していたからだ。
採点が上昇した店舗では売上の増加が大きく、逆に採点があまり上がらなかった店舗では売上の伸びもわずかだった。この結果を目の当たりにし、A社長は自分が何をすべきかを明確に自覚するに至った。この頃になると、社長をはじめ社員一人ひとりの意識や姿勢が大きく変わりつつあった。
社員一人ひとりが環境整備にとどまらず、「どうすればお客様により良いサービスを提供できるか」を真剣に考えるようになり、サービス向上のためのアイデアを積極的に話し合うようになった。A社全体に、まさに「心の革命」と呼べる変化が起きたのだ。その結果、A社の売上はその後の十年間、ただの一か月たりとも下がることなく、ひたすら上昇を続けた。
客席の回転率は全店で通常六回転を達成していた。八店舗すべてでこの数字を実現していることに対し、A社長は「六回転なんて本来できるはずがないのに」と首をかしげていた。この結果を、私は「オーラがもたらした奇跡」とでも表現したい。今やA社は、社長以下全員が環境整備の鬼と化している。しかし、この鬼たちはお客様に対しては心のこもったサービスを提供する、心優しい鬼たちなのである。
全店舗が心洗われるような清潔さを誇り、社員だけでなく、パートや学生アルバイトまでもが一生懸命にお客様にサービスしている姿を見ると、心から嬉しさが込み上げてくる。A社の環境整備は、もはやホテルオークラに優るとも劣らないレベルに達していると、私は確信している。
レストランのA社が、環境整備を徹底したことにより、驚異的な業績回復と売上増加を遂げた話です。
最初の訪問時、A社の売上は下がり、赤字に悩まされていました。競争相手の出現が原因だと言い訳していたA社に対し、私は「まず店を清潔に整えることが先決である」と叱責しました。その言葉に奮起したA社長は、心を入れ替え、環境整備を徹底的に行うようになったのです。
環境整備が進むと、各店舗での売上増加が徐々に顕著になり、特に私の採点と売上の上昇が見事に一致することに気づきました。環境整備が進んだ店ほど売上が増加していたのです。この発見により、A社長も社員たちも、自分たちがどのように改善すべきかを確信し、環境整備への熱意が社内全体に広がっていきました。
さらに、社員たちは「お客様にもっと喜んでいただくためにはどうすればよいか」を考えるようになり、サービス向上のためのアイディアを積極的に出し合うようになりました。これが「心の革命」を呼び、A社の売上は十年にわたり一度も下がることなく右肩上がりを続けました。
A社は八店舗を構え、各店の客席回転率が驚異の六回転を記録するまでになり、全店が心のこもったサービスと、心洗われる清潔さで満たされています。
A社の環境整備は、ホテルオークラにも匹敵するほどのレベルに達していると私は確信しています。このように、環境整備は売上や顧客満足度を向上させるだけでなく、企業全体の心の変革をも促す力を持っているのです。
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