MENU

セールスマンは何人必要か

私が訪れるメーカーの多くは、営業マンが著しく不足している。この不足は致命的な欠陥といえる。一方、流通業者ではここまで販売活動が欠如している企業は見当たらない。むしろ、営業マンの数がそのまま売上を左右しているのが現実だ。

どの場合でも、「自社に必要な営業マンは何人か」といった問いを検討することはない。関心が向けられるのは、営業マン一人あたりの売上高に過ぎないのだ。

その売上高は「多ければ多いほど良い」という固定観念に支配されている。「自社の営業マンは足りていないのではないか」といった疑問を抱くことはまずない。営業マンの増員を検討するのは、売上が急増し、現場が手に負えなくなった時だけだ。この姿勢こそが、売上が伸び悩む大きな要因の一つとなっている。

売上が伸びたから営業マンを増やすのではなく、先に営業マンを増やして売上を伸ばすのが本来のあり方だ。「そんなことをしたら採算が取れなくなる」という考えは誤解に過ぎない。この点については、社長学シリーズ第五巻『増収増益戦略』の290ページを参考にしてほしい。

無計画な増員なら話は別だが、極端な増員をしない限り、営業マンを増やしたことで採算が取れなくなることはほとんどない。この点を正しく理解してほしい。

そうなると、「自社にとって適切な営業マンの人数はいったい何人なのか」という問いが重要になる。この答えを見いだせないままでは、経営が手探りの状態、いわば盲目的な経営に陥ってしまうことになる。

適切な営業マンの人数とは、「自社が生き残るために必要な売上高を確保できる人数」のことだ。その計算には、現在の売上高だけでなく、将来を見据えた先行投資や、新商品・新事業の推進に必要な人員などを総合的に考慮する必要がある。短期的な視点にとどまらず、長期的な戦略を基に判断しなければならない。

まず、市場戦略構想書を作成し、それに基づいて各テリトリーごとの必要人員を算出する。この必要人員は、定期訪問基準や月次訪問計画書を作成する際に、常に市場戦略構想書と照らし合わせながら確認していく必要がある。このプロセスを繰り返すことで、戦略と実務の整合性を保ち、効率的な営業体制を構築できる。

このようにして算出された必要人員は、多くの場合、社長が想像もしなかった規模になることが少なくない。その上で、新規開拓、新商品の展開、新事業の推進に必要な営業マンをさらに加えてみるべきだ。このプロセスを経ることで、真に必要な人員数が明確になる。

もし算出された人員数に対して「これほど多くの人員を抱えるのは不可能だ」と感じた場合、社長自身が「これが現実的な限界だ」と考える人数を再設定し、それを市場戦略構想書に割り当て直してみる必要がある。この調整を通じて、現実的な範囲で最適な戦略を練り直すことが求められる。

当然ながら、その結果として戦略は縮小せざるを得なくなる。しかし、「これでは消極的すぎる」と感じた場合には、再度の検討が必要となる。この際、「増分計算」が重要な役割を果たす。増員による売上の増加分を具体的に算出してみると、その増加分が予想以上に小さいことに気づくことがある。これにより、効率的な増員計画を立て直すための指針が得られる。

最後に、増加した営業マンの人件費を反映させた利益計画を立て、その結果を既存の利益計画と比較してみる。この際、重要なのは、現在の利益よりも長期的な視点から「将来の利益を増やすために」今は一時的に利益を減少させても営業マンの人数を思い切って増やすことだ。短期的な利益にとらわれず、将来の成長を見越した投資として捉えることが、持続的な成長に繋がる。

この点については、社長学シリーズ第四巻『新事業・新商品開発』篇において、「未来事業」という考え方が事業経営にとって不可欠であることを強調しているので、そのことを思い出してほしい。将来に向けての投資やリスクを取ることが、事業の成長を促進する鍵であり、今の利益にとらわれず未来を見据えた経営が重要であるという視点を再確認することが必要だ。

事業を発展させるためには、中小企業が最も弱い部分である「販売」と「新事業」に社長の関心を集中させ、今後の成長を見据えて「今、何をすべきか」を考え、積極的に手を打ってもらいたい。社長が自社の将来を見越して戦略を立て、実行に移すことが、企業の発展を大きく後押しする。

そして、積極的に市場戦略を進めていけば、予想以上の成果が待っていることは間違いないと確信して良い。戦略を実行に移し、挑戦を続けることで、見えてくる成果は企業の成長に大きな力を与えることになるだろう。

セールスマンの適正人数を決定するためには、以下のステップを踏むことが重要です。

1. 必要売上高と市場戦略に基づいた人員設定

  • まず、「生き残るために必要な売上高」を明確にします。これは単に現在の売上だけではなく、新規事業や新商品の展開、先行投資を含む長期的な視野が必要です。
  • 市場戦略構想書を作成し、各テリトリーごとの売上目標と市場占有率に基づき、必要なセールスマンの人数を算出します。

2. 定期訪問基準と訪問計画に基づいた確認

  • 予測された人員数に基づいて、各テリトリーでの定期訪問基準月次訪問計画を立て、訪問の頻度とカバー率に基づいて妥当性を検証します。
  • 相互チェックを行い、市場戦略の達成に必要な訪問頻度とカバーエリアを確保できるかを確認します。

3. 新規開拓と新事業に対する要員の追加

  • 新規開拓や新商品・新事業にどの程度の人員が必要かを具体的に検討し、追加要員を見積もります。
  • 社長の感覚や経験に基づく予測も取り入れ、「必要な人員数」と「実際に確保できる人員数」に調整を加えます。ここで不足が生じる場合、戦略の見直しや増員が可能かを検討します。

4. 利益計画への組み込み

  • 人員を増やした際の人件費も含め、長期的に利益が増加する計画を立てます。
  • 現在の利益が多少減少しても、長期的な成長のために人員拡充が有益である場合は、思い切って増員することが推奨されます。

5. 増員効果の確認

  • 増分計算(追加人員による追加売上)を行い、費用対効果を明確にします。増員によって予測される売上増加が、戦略的に有効かを判断します。

結論

  • 最適なセールスマンの人数は、短期的な売上拡大ではなく、中長期的な成長を重視して設定することが重要です。
  • 必要に応じて増員を行い、将来の利益確保に向けて積極的な市場戦略を展開する体制を整えます。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次