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間接部門削減の目標を

Z社の話に戻る。自分は社長にこう答えた。「合理的な人員を割り出そうとしても、それは現実的に無理だ。仮に計算が可能だったとしても、実行には至らないだろう」と。その理由を述べたうえで、

「間接人員の目標を設定することが重要だ。この目標は経営計画から導き出される。経営計画では、必要な利益を生み出すための条件がまず設定される。それに基づいて賃金の総枠が決まり、その枠を賞与を含めた計画賃金ベースで割り算すれば、必要な人員枠が算出される。この枠をまずは外部向けの部門(営業部門)や将来を見据えた部門(研究開発部門)、そして直接部門に優先的に配分する。そのうえで余剰が間接部門に割り当てられる。この手順で目標となる間接人員数が決まる。」

次に、この目標人員を各部門に割り振る。しかし、これを純粋に技術的に行おうとしても不可能だ。もともと無理がある。だからこそ、ここでは経営者の勘が活躍する。経営者の頭には、長年の経験を通じて蓄積された膨大なデータが存在する。そのデータを基にした勘の結論で十分だ。特に繰り返し行われる仕事に関しては、この勘がかなり高い信頼性を持っている。

この人員を各部門に目標として割り当てる際には、まず「この人数でやるのは本来無理だ」という前提を共有する。しかし、必要な利益を確保し、会社が存続していくためには、どうしてもこの人数で業務を遂行しなければならない。そのため、この人数で対応可能な仕事の進め方を各部門で考えてもらいたい。どうしても不可能だと判断した場合には、申し出てもらえばよい。その際には、一倉が共に解決策を検討すると伝える。これがポイントだ。

「そんな無茶な……」と思う読者もいるかもしれない。しかし、それはそれとして、ぜひ続きを読み進めてほしい。

社長は「なるほど」と納得し、間接人員の目標を設定しようとした。全体としての間接人員の総枠は決まったものの、各部門への割り振りができないという状況に直面した。「大なた」を振るう覚悟が必要だったが、部門の実情をある程度理解しているがゆえに、踏み込むことができないのだ。結果的に、「一倉さん、ここはひとつ頼むよ」という話になった。

私は「これもあくまで私の勘ですよ」と念を押した上で、強引に「割り付け案」を作り上げた。社長はその案を多少修正し、最終的な割り付けを決定した。ただし、これはすぐに実現できるものではない。実行には時間が必要だ。もし会社が赤字であれば、一刻も早く強引にでも進めなければならないが、黒字であるならば、時間をかけて段階的に進めればよいのだ。

私は、最終目標に到達するまでに三年ほどの時間をかけることを勧める場合が多い。こうすることで、欠員不補充の方針を採用すれば、配置転換の負担を最小限に抑えられる。ただし、これが可能なのは、業績が良好な会社に限られる。しかし、そうした場合でも、年度ごとの中間目標を必ず設定し、特に初年度については、達成期限を明確に「何月まで」と定める必要がある。このアプローチにより、Z社では間接人員の削減が順調に進んでいる。

S社で取り組んだ際には、女子事務員が10名以上余剰となり、「減員はするにしても、配置先が決まるまで待とう」という意見が出るほどだった。しかし、ある役員が「配置先は後から考えればよい。まずは減員を進めるべきだ」という断固たる意見を述べ、それがそのまま実行された。その姿勢は見事と言うほかない。

生身の人間を配置転換する以上、さまざまな問題が発生するのは避けられない。それでもなお、これを断行しなければならないのが経営者の役割だ。もしそれができないならば、経営者としての資格はないと言えるだろう。経営者の決断というものは、常に苦渋を伴うものだ。もしその苦しい決断を避けたいのであれば、経営者の座を降りるべきだ。なぜなら、苦しい決断から逃げ続ければ、いずれ会社を破綻させることになるからだ。

私は、この方法を用いて、これまで多くの企業で間接人員の削減を支援してきた。しかし、これまでの経験の中で、削減後に「人員が足りない」と訴える場面に遭遇したことは一度もない。もちろん、これには理由がある。それは、経営担当者の意識革命にほかならない。その詳細については、次に述べることにしよう。

これまでに、この方法を使って多くの企業で間接人員の削減を支援してきた。だが、削減後に「人員が足りない」と訴えた例には一度も出くわしたことがない。もちろん、これには理由がある。それは、経営担当者の意識が大きく変わるということだ。この意識革命については、次に詳しく述べる。

間接部門の人員削減を実行するには、合理的な人員数を単に算定するだけでは不十分だ。経営計画から必要利益を達成するための賃金枠を設定し、そこから間接部門の人員目標を割り出す。間接部門の目標人員を各部門に分配する際、詳細な計算や理論に頼るのではなく、経営者の経験と勘を活用することがポイントだ。長年の経験から導き出される判断は、多くの場合、的確な割り付けを可能にする。

社長の勘に基づいた案が決まった後、時間をかけて間接人員の削減を進めていくことが理想的だ。黒字企業の場合、3年ほどかけて達成するのが現実的で、欠員が出た場合には新たな採用を控えることで、配置転換の負担を軽減できる。このように年度ごとの中間目標を設定し、ステップを明示することで、無理なく削減目標に向けて進むことができる。

ただし、削減が進むにつれ、新たな配置の難しさや社員の士気の維持が課題となる。ここで重要なのは、経営者が決断をためらわず、実行に移す姿勢だ。社員の配置転換や役割変更を伴う苦しい決断も、会社を健全に保つために不可欠であり、これを行わなければ企業の存続そのものが危うくなる可能性がある。経営者が自らの決断を徹底し、間接部門の最適化を進める意識を持つことで、組織全体が変革に向かう土壌ができあがるのだ。

間接部門の人員削減は一見難題に見えるが、具体的な目標設定とそれに対する経営者の信念があれば、実現可能だ。

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