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青年部会

東京都のK工業協同組合には青年部会という組織がある。ここに集まるのは、いずれ会社を背負って立つ「次世代の経営者候補」たちだ。肩書きを見れば、副社長、専務、常務といった立場の人物が多く、まさに経営の実務を学び、深めるための研究グループだ。年齢制限が設けられているため、付き合い始めて八年ほど経つが、いつも若さとエネルギーに満ちているのが印象的だ。20名ほどの小規模なグループだが、その熱心さと研究に取り組む姿勢には感服せざるを得ない。

この青年部会では定期的に研究会を開催しており、その形式は三種類に分かれている。「経営研究会」「経営サロン」「経営放談会」という名前が付けられ、それぞれが毎月一回ずつ開かれる。つまり、月に二度、夜間に集まって議論や情報交換が行われている。

「経営研究会」は、各分野で卓越した権威を広く招き、その話を聞き、質疑応答を行う場となっている。招かれるゲストの顔ぶれは実に多彩で、経営者や経営学者、経営コンサルタントをはじめ、政治家、経営者団体の役員、労働団体の役員、ジャーナリスト、作家、囲碁や将棋の高段者、引退したスポーツの名選手、医師など、多岐にわたる。それぞれの分野で第一線を走る人物たちの知見に触れることで、メンバーたちは視野を広げ、経営の知識を深めている。

多彩な講師陣による講義から、メンバーたちは幅広い教訓をどん欲に吸収している。その内容は、高邁な哲学からセックス・コントロールに至るまで、多岐にわたるものだ。さらに、研究会の活動として年に数回、企業の見学会も実施されており、私にもその見学先を紹介してほしいと依頼が来ることがある。過去にはアメリカを訪れ、中小企業の視察を行うなど、国際的な視点も取り入れた活動が行われている。

「経営サロン」では、特定の研究テーマを設定し、それぞれの会社の方針や考え方を率直にぶつけ合う場となっている。議論の範囲は、新製品の開発から始まり、販売戦略、生産計画、労務管理、資金調達、税務対策に至るまで非常に幅広い。根本的な理念に触れるものから、時事的なトピックに至るまで、多彩なテーマが取り上げられる。これまでに何度かオブザーバーとして参加する機会があったが、その内容は驚くほど興味深く、同時に多くの学びを得られる場でもある。

「経営放談会」は、その名の通り自由な放談の場であり、特定のテーマは設けられていない。日常のさまざまな出来事が話題に上がり、新聞や雑誌の記事が取り上げられることもあれば、麻雀大会や釣り、ゴルフの予定を立てることもある。中には、頑固な親父との意見の対立についてぼやきが飛び出すこともあり、そうした話が出ると特に盛り上がる。それぞれ似たような経験を持つメンバーたちの間で、親父教育の共同作戦(?)が計画されることすらあるのだから、実にユニークで面白い場だ。

これほどの熱心さを持っているだけあって、このグループから倒産した会社は一つも出ていない。それ自体が実に立派な成果だ。この素晴らしい研究グループが長年にわたり継続している理由の一つには、二世経営者たちの情熱があるが、もう一つ見逃せないのが、協同組合の専務であるT氏の手腕だ。T氏はその才覚を表に出すことなく、あくまでも「縁の下の力持ち」に徹しており、その姿勢にはただただ敬服するばかりだ。さらに、この研究会が地域に根ざした団体であることも、継続を支える重要な要因の一つだろう。

同じ地域に根ざしているため、メンバー同士は身近な存在として共通の話題を持ちやすく、自然とある種の連帯感が生まれている。その上、参加者たちが異業種で構成されており、得意先や取引先が重ならないことが、率直で腹を割った議論を可能にしている。この距離感と多様性の絶妙なバランスが、グループの結束力と有意義な交流を支えていると言えるだろう。

同業組合や特定企業の協力工場組合では、どうしても利害関係が絡むため、メンバー間で牽制し合う場面が多い。そのうえ、協力工場組合の研究会には、親企業の幹部がオブザーバーとして出席することも少なくない。この出席が監視のためなのか、善意によるものなのかは不明だが、そんな状況では本音を語り合うことなど到底できない。結局、研究会という名目で集まったものの、実態はただの「呑み会」に終わるのが関の山というのが現実だ。

余談はここまでとして、この青年部会のような研究グループがもっと増えてもいいのではないかと思う。それは何も二世経営者候補に限った話ではない。現役の社長たちにとっても、外部の講演をただ聞くだけの受動的な研究ではなく、社長同士が経営についてざっくばらんに話し合える場を持つことは、間違いなく自社経営にとって大きなプラスとなるだろう。経営に対する新たな視点や気づきが得られるこうした交流の場は、どの世代の経営者にとっても価値があるに違いない。

東京都のK工業協同組合の青年部会は、二世経営者候補たちによる真剣な研究グループで、定期的に経営に関する研究会、経営サロン、経営放談会といった活動を通じて知識を深め、互いに刺激を与え合っている。これらの会合では、各分野の第一人者から幅広く学び、メンバーの会社経営に生かしており、会社見学会や海外視察も行っている。

経営研究会では、経営者や専門家を招いての講義や質疑応答が行われ、多様な知識や哲学からビジネスの実務まで幅広い話題がカバーされる。経営サロンでは具体的な経営課題について意見を交換し、実際の経営方針や対策についても深く議論する。また、経営放談会では、テーマを定めずに日常の悩みや気づきを自由に話し合い、互いの親父世代への対処法についての話もあり、社内外の関係を良好に保つ知恵を共有する。

この青年部会の活気と熱意が支えられている背景には、協同組合の専務T氏の見えないサポートと、同地域内のメンバー同士が利害の絡まない異業種であることによる連帯感がある。また、地域団体ならではの親しみやすさと共通の課題が、グループ全体の団結力を高めている。

こうした活動の成果として、倒産会社は一つもなく、安定した経営が続いている。このようなグループが増えることは、経営者やその後継者にとっても学びの場を広げるだけでなく、各自の経営を大きく支え、地域全体の経済にプラスの影響を与えることが期待できる。

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