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製造部長が営業の第一線で

I社の製造部長は、出勤後におよそ1時間ほどでその日の製造指示や必要な業務を片付け、背広に着替えて得意先へ向かう。この日課は、ほぼ毎日のように繰り返されている。

そのため電車の定期券を持ち、一日中得意先で過ごす生活を続けている。この習慣は何年も繰り返されてきた。その理由について、製造部長は次のように語った。

「製造部長だからといって、社内で生産業務に専念すればいいと思われがちだ。しかし、営業課に任せておくと、仕事が欲しいあまりに安い価格で受注してくることがある。それを製造現場で効率よくこなすのは簡単なことではない。

「だから、営業員は別の事業部の仕事に回して、自分で営業をしている。毎日のように得意先に足を運んでいるおかげで、たいていの情報は他社よりも早くキャッチできる。得意先の担当者にとっても、新しい仕事が発生すれば、すぐそばにいる私に真っ先に話を持ちかけるのが自然な流れになるんだ。」

「だから、いつも競争相手より先手を取ることができる。もし私が一割高い価格で注文を取ることができれば、その仕事が続く限り、わが社は特別な努力をせずとも一割多くの収益を得られるというわけだ。」

「製造部長というのは、単に物を作る部長ではなく、経済的価値を生み出す部長だと私は考えている。この考えは間違っているだろうか?」と彼は語った。その言葉を聞いた瞬間、思わず「立派だ!」と叫んでしまった。この製造部長には、社長としての資質が十分に備わっている。

製造部長が営業の第一線に立つ意味:価値を創造するリーダーシップ

I社の製造部長は、製造現場にいるだけでなく、ほぼ毎日営業活動の第一線に立ち、得意先との関係を築くための時間を惜しみません。その理由は、単に製造の効率を高めるだけでなく、「経済的価値を創造する」ためです。製造部長としての役割を「物を作る」ことだけに限定せず、より高い価値を生み出すために自ら営業活動に取り組んでいます。

この製造部長の行動から、次のような重要な経営の教訓が得られます。

  1. 製造と営業の融合による価値創造
  • 製造部長自らが得意先を訪問し、競争相手よりも早く情報をキャッチすることで、会社にとって有利な条件で受注を獲得しています。これにより、安易な価格競争に巻き込まれることなく、一割高い価格で注文を受けることが可能となり、安定した収益を確保できるのです。
  1. 得意先との密な関係構築
  • 製造部長が直接得意先と接することで、顧客からの信頼も深まり、新しい仕事の話があれば、まず最初に製造部長に相談が来るというポジションを築いています。このようにして、得意先との信頼関係が強固になることで、継続的な受注にも繋がりやすくなります。
  1. 「経済的価値を製造する」という視点
  • 製造部長が自らの役割を「物を作る」のではなく「経済的価値を製造する」ものと捉えていることは、経営者としての視点に通じます。生産現場を知り尽くしながら、営業にも深く関わることで、会社全体の利益を最大化するという意識が醸成されています。

この製造部長の姿勢は、製造と営業が密接に連携してこそ企業価値が高まることを教えてくれます。製造部門のリーダーシップが営業の最前線に立ち、収益性を確保する役割を担うことは、企業全体の競争力を強化する上で欠かせない要素といえるでしょう。この製造部長のように、自らが生み出す価値を見据え、積極的に行動する姿勢こそ、経営者としての資格があるといえるのです。

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