話を元に戻す。手伝いを引き受けた自分は、財務分析をそこそこに切り上げ、製品分析に取りかかった。これまでの社長の説明を聞く限り、従来の対策では会社の生命線である「製品」にまったく手がつけられていないことが明らかだったからだ。
従来の対策は、成果を生み出す過程にばかり注目したり、方向性を見誤ったりして、肝心の成果そのものに焦点が当たっていないのだ。
どれだけ能率的で合理的な手段を講じたとしても、製品そのものの収益力が低ければ、業績の向上には限界がある。
自分が行った製品分析は、ごく簡単なものだった。それにも関わらず、その結果はF社の業績低下の原因を鮮明に浮かび上がらせていた。
企業のメンバーがどれほど優秀であろうと、どれだけ懸命に努力しようと、収益性の低い製品を作り続ける限り、優れた業績を上げることは不可能だ。
付け加えると、伝統的な原価計算では製品の収益性を正確に判定することはできない。この点については「社長学第五巻」で詳しく述べることにする。
製品の種類はおよそ40種類あるが、そのうち20種類は売上の約5%にとどまり、受注状況も安定していない。そのため、大勢に影響を与えないと判断し、当面は対象外とすることにした。
売上の約95%を占める20種類の製品を分析した結果、以下の事実が浮かび上がった。主力製品の中でも4品種は付加価値率が低く、生産に必要な工数が多い。そのため、単位時間あたりの付加価値が著しく低い状況にあることが明らかになった。
これら4品目を全体と比較した場合の比率を算出すると、売上では27%、付加価値ではわずか12%、投入工数では38%を占めるという結果が得られた。
これら4品目の低収益製品こそが赤字の原因であった。小型であるため元々売価が低い一方で、投入工数は大型製品とほとんど変わらないという構造的な問題があった。
さらに、これらの製品は生産数量が多く、長期間にわたって製造が続けられていた上、度重なる値下げを強いられた結果、ここまで収益性が悪化してしまった。一方で、人件費や経費の上昇が収益を大幅に上回り、ついには赤字へと転落する事態に至った。
業績悪化の原因は明らかだ。では、どう対処すべきか。収益を向上させるためには、原因を取り除けばよい。その手段として、収益性の低い4品目を切り捨てる一方で、現在の製品群の中で収益性の高いものの売上を拡大するか、もしくは収益力の高い新製品を投入することが挙げられる。要するに、製品構成を見直し、構造的な変革を実行するということである。
とはいえ、これらの方策は口で言うほど簡単ではない。どの施策も外部、つまり取引先との直接的な関係が絡むため、一筋縄ではいかない問題だからだ。
このように、経営とは常に外部環境に対応するものである。その対応を成し遂げられるのは、最終的には社長の強い意志をおいて他にない。
製品分析が示した真実と構造的変革の必要性
F社の業績悪化の原因を追究した結果、問題の核心は「製品そのもの」にありました。製品分析により、業績が低迷していた理由が、収益性の低い製品群の存在にあることが明確に浮かび上がりました。このように、どれだけ能率や合理性を追求しても、肝心の製品が収益を生み出さない限り、企業全体の業績向上は見込めません。
製品分析からわかったこと
- 収益力の低い主力製品の存在
F社が抱える製品のうち、主力製品として生産されていた四品目が極端に低収益でした。この四品目は、小型で売価が低い一方で、大型製品と同等の工数がかかるため、単位時間あたりの付加価値が著しく低い状態にありました。 - 売上げと付加価値の不均衡
これら低収益製品は、全体売上の27%を占めていたにもかかわらず、付加価値は全体のわずか12%にとどまり、投入工数は全体の38%を消費していたことが分かりました。つまり、多くのリソースが収益性の低い製品に投入されていたため、業績が改善しない原因となっていたのです。 - 継続的な値下げとコストの増加
これらの製品は長期間にわたって生産され、たびたびの値下げ要求に応じた結果、利益が圧迫されていました。その一方で、人件費や経費が増加し、低収益がさらに悪化して赤字の原因になっていたのです。
構造的変革の必要性
分析の結果から、業績を改善するためには「製品構成を見直す」構造的な変革が不可欠だという結論に達しました。具体的な施策は以下のとおりです:
- 低収益製品の撤退
収益性の低い四品目を思い切って製品ラインから外すことで、赤字要因を排除します。これにより、リソースを高収益製品や新たな製品開発に集中させることが可能です。 - 収益性の高い製品の売上増加
既存の製品のうち収益性の高いものに注力し、売上を増やす施策を展開します。これにより、収益力が改善し、業績向上の見込みが高まります。 - 新製品開発の推進
高付加価値かつ収益性の高い新製品の開発と販売に注力します。これにより、製品ラインが収益性の高い製品で構成されるようになり、企業の収益構造を強化できます。
社長の意志と外部対応の重要性
製品構成の見直しという変革には、既存の得意先やマーケットへの影響が避けられないため、企業のリーダーシップが不可欠です。収益を生まない製品から撤退する決断は、外部との関係性を考慮しつつ、社長の明確な意志によってのみ実現できます。
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