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社長の断は下る

このような分析と考察の結果を社長に提示し、業績回復のためには「製品以外の何をどう改善しても解決できない問題である」ことを伝えた。

取るべき策としては、低収益の四品目を切り捨て、それに代わる収益性の高い新製品を開発することであり、それ以外に道はないことを強く訴えた。

私の話をじっと聞いていた社長は、しばらく黙り込んでいたが、やがて口を開き、「そこにわが社の業績不振の原因があったのか。今、初めてその真因がはっきりと分かった」と言った。

「なまじ『しゃれた手法』にとらわれていた自分が間違っていた」と、まず感想を述べた社長は続けて、「この四品種は生産を中止する。その件について得意先への説明や了解を得るのは私が責任を持って行う。新製品に関しては、すでに二品種を試作どころか見本まで完成させて、得意先に持ち込んである。お得意様も気に入ってくれて、すぐにでも製造を始めてほしいと言われている。だが、忙しさにかまけて着手できずにいた。四品目をやめることで生まれる余力を活用して、新製品の製造を始める。その立ち上げに関しては、ぜひとも指導をお願いしたい」と語った。

私は「喜んでお手伝いします」と返答した。そして、新製品の予定売価と原価を確認すると、その収益性が非常に高いことがわかり、安心することができた。

私は社長の決断に心から感服した。自ら良いと信じたことを即断即決するというのは言葉で言うほど簡単なことではない。特に、そのような決断には常にリスクが伴うからだ。

おそらく、自分が社長の立場であったとしても、これほど見事な決断を下せたかどうか、自信はまったく持てない。この「決断力」こそ、創業者に共通する美点であり、最大の強みだ。そして、この決断力こそが、社長という立場に求められる最も重要な条件の一つなのだ。

世間では、創業者のワンマンぶりや頑固さを取り上げ、その時代遅れな側面ばかりを批判する傾向が多いのは残念なことだ。

二代目経営者やサラリーマン経営者には、このような決断力がなかなか求められないのが現実だ。実際、大企業の経営者であっても、この決断力を欠いている人が少なくないことを私はよく知っている。

社長に製品構成の問題を伝え、低収益製品からの撤退と新製品の開発という明確な方針を提案しました。その結果、社長はすぐに理解し、問題の核心を見極めた上で「即戦即決」の行動に踏み切ったのです。

社長はまず、長年抱えていた業績不振の根本原因が明確になったことに驚き、これまで手法や表面的な改善策にとらわれていた自分を振り返りました。そしてすぐに、「低収益の四品種の生産を中止し、すでに得意先からの評価も高い新製品に注力する」という決断を下しました。

社長がすぐに取り組むと決めた新製品は、すでに試作品が完成し、市場からも評価されていましたが、これまでは忙しさゆえに実現には至っていませんでした。新たに生まれる生産余力を、新製品の製造に振り分け、収益性の向上を図ることが明らかになったのです。

このような即断即決の行動は、容易にはできないことです。多くの経営者が、変革に伴うリスクや顧客への影響を恐れて躊躇するものですが、創業者の決断力はこれらの迷いやためらいを超えて、確信に基づいた判断をもたらします。この「決断力」こそ、創業者が持つ強みであり、経営者の最も重要な資質の一つです。

社長のような創業者は、しばしばその強い意志や一貫した姿勢が「ワンマン」や「頑固」と評されがちですが、その本質は大胆な決断力であり、成功を導く大きな力です。この力が、新しい挑戦を実現し、会社の未来を築くための大きな推進力となるのです。

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