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生産性変化率格差

ある生産財メーカーで、激しい競争の中に身を置いていた。主材料である鋳物の価格が大幅に上昇するだけでなく、賃金や運賃も上がり続け、さらに諸経費の増加が経営を圧迫していた。

このままでは赤字に転落するのは明らかだ。一体どうすればいいのか。私は「値上げを実行すべきだ。それ以外に当面の解決策はない。ただし、一社だけで行うのでは意味がない。業界全体で話し合い、協定を結ぶ必要がある」と提案した。その理由は以下の通りだ。

多量生産品の場合、設備投資や製造方法の改善を通じて、生産性を大幅に向上させることが可能だ。このように「生産性変化率」が大きい業態であれば、生産性の向上によって増大する資金や経費を吸収し、価格を据え置いたまま運営を続けることができる。ただし、それも永続的な解決策ではない。

しかし、生産財のように生産量が少ない製品では、設備投資や製造方法の改善による効果は、多量生産品と比べてはるかに限定的だ。つまり、「生産性変化率」が小さい業態に分類される。そうなると、賃金や諸経費の上昇を生産性の向上で吸収することは現実的には不可能な話だ。

値上げ以外に解決策は存在しない。それにもかかわらず、業者同士が競争に明け暮れていれば、いずれ共倒れになるのは目に見えている。だからこそ、早急に業界内で協定を結び、値上げを実行すべきだ。それこそが経営者としての責務であり、本来果たすべき役割だというわけだ。

社長は意を決して立ち上がり、同業者たちに呼びかけた。すると、誰一人として反対する者はいなかった。話は驚くほどスムーズにまとまり、そればかりか、社長は同業者たちから感謝の言葉を受けることに。結果として、業界全体の信頼を得ると同時に、自身の評価も大いに高めることとなった。

生産性の変化における格差は、どうにも埋めようがない現実だ。そして、インフレが続く限り、賃金の上昇が止まらない限り、生産性変化率の小さい分野では、値上げをするか、事業を畳むか、あるいは別の分野へ転進するか、そのいずれかの選択を迫られる。これ以外に生き残る道はない。

生産性変化率の格差という現実を直視し、それに対する適切な対応策を講じなければ、会社は存続できない。この課題に対して行動するか否か、その決断を下すのは他でもない社長の責務だ。

国際紛争、世界経済の動揺、自由化の波、急速な技術革新、後進国の台頭、人口動態の変化に伴う消費者の嗜好の変化、さらには流通革命――企業を取り巻く環境は刻一刻と変化し、そのスピードは増すばかりだ。

これらの変化は、直接的にも間接的にも、緩急織り交ぜながら企業に影響を与える。もし変化への対応を誤れば、会社は瞬く間に窮地に追い込まれるだろう。

社長こそが、その変化を的確に見極め、それに対応する戦略を打ち立てる責任を担っている。もし社長が企業内部の問題ばかりに気を取られて外部の変化を見逃せば、その会社は確実に行き詰まる運命をたどるだろう。

生産性変化率が低い業界では、賃金や材料費の上昇を吸収するための生産性向上が難しく、値上げをしないと赤字を避けられないというのが本質です。多量生産品と異なり、生産財業界のように少量生産の製品は、生産性向上に限界があり、「生産性変化率格差」を抱えています。このため、同業者間で価格協定を結び、適切な値上げをすることが企業の存続と利益確保に欠かせません。

さらに、企業を取り巻く環境はインフレ、国際競争、技術革新といった外部要因によって絶えず変化し、社長にはこれらの変化を敏感に読み取り、適切な戦略を打ち出すことが求められます。社長が変化を軽視し、企業内部の効率化にのみ集中していると、外部環境の変動に対応できず、最悪の場合、会社の存続に関わるリスクを引き寄せてしまいます。

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