Z社は業績が優秀な中小企業だ。しかし、社長には間接部門の肥大化という悩みがあった。ある日、社長がこんな質問を投げかけてきた。
「これからの企業経営は、経験や勘だけでは限界がある。科学的な管理がどうしても必要だと思い、合理化に力を入れてきた。本を読ませたり、社員を交代で講座に送り出して勉強させたりもしている。
「しかし、合理化を進めるたびに間接部門の人員が増えていった。増えること自体は仕方ないとしても、問題なのは、それらの合理化の効果がはっきり見えないことだ。」
「役立っているのは確かだと思うが、その確証が得られない。最近になって、こうした合理化に疑問を感じ始めた。これほど多くの間接部門の人員が本当に必要なのか。なんとか減らす方法はないだろうか。賃金は上がり続けており、間接部門の人員の賃金だけでも莫大な額になっている。」
社長はそう語ったわけだ。この問いに答える前に、少し立ち止まって考えてみる。この悩みは、実は多くの社長たちに共通するものではないだろうか。
社長が悩む一方で、各間接部門からは人員不足を訴える声が絶えない。成果が上がらない、増え続ける仕事をこなせない、やりたい業務に手が回らない、といった苦情が次々と社長のもとに届いてくるのだ。
直接部門でさえ、間接部門から求められる各種の報告書類を作成するために、事務要員を増やしたいと要求してくる。結果として、全社的に見ても間接部門は常に人員不足の状態にあるのが現状だ。
こうした雰囲気の中では、社長が間接部門の人員削減を打ち出すのは容易ではない。一度でも削減案を提示すれば、たちまち社内から強烈な反発を受けることになる。
「今でさえ人手が足りないのに、これ以上減らされたら仕事が滞ります」「原価が把握できなくなります」「品質の保証はできません」といった声が次々に上がる。さらに厄介なのは、これらの主張に対して社長が「そんなことはない」と確信を持って言い切れるだけのデータや根拠を持ち合わせていないことだ。
あるのは、勘と人員を減らしたいという願望だけ。他社の事例を引き合いに出しても、「うちとは事情が違います。うちはこういう特殊な状況なんです。社長はわが社の実情を理解していない」と逆効果になるだけだ。
まったく手がつけられない、というのが社長の正直な感想だ。しかし、何も言わなければ間接人員の比率はますます高まる一方だ。間接部門は、社長の意志が最も実現しにくいどころか、むしろその意図に反して逆方向に進んでしまう。これが賃金ベースの上昇に拍車をかけ、損益分岐点を急速に引き上げる原因の一つとなっているのだ。
この文章では、企業における間接部門の肥大化とその管理に関する悩みが述べられています。社長は、合理化を進めたにも関わらず間接部門の人員が増加し、その合理化の効果が実感できないことに疑問を抱いています。さらに、間接部門からは人員不足の苦情が絶えず、業務が滞ることを懸念する声が上がる中で、人員削減を試みることが非常に困難であることが描かれています。
社長は「よその会社の例」を参考にしたり、人員削減を提案しようと試みるものの、実際には「特殊事情」や「実情をよくつかんでいない」と反論され、なかなか進展しないというジレンマに直面しています。この問題は、間接部門の人員増加が賃金ベースの上昇を引き起こし、会社の損益分岐点を急速に押し上げる元凶となることが指摘されています。
このような悩みは多くの経営者に共通するものであり、効率的な人員管理と業務の見直しが求められていますが、実行には大きな困難が伴うことが強調されています。
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