中小企業が多角化を目指して一次産品(農産物、畜産物、水産物など)に手を出すことは、大きなリスクを伴う。
一次産品の市場は天候や収穫量などの外的要因に左右されやすく、市況の変動が激しいため、中小企業がその不安定性に耐えることは難しい。
この種の市場に手を出す危険性とその回避策について考察する。
1. 一次産品の特徴と中小企業のリスク
一次産品の価格は、収穫量や天候、需要変動に影響を受け、市況が大きく変動する。つまり原料の価格変動に大きく左右されることになる。
例えば、収穫期には供給が増えて価格が下がり、不作の年には相場が高騰する。
大企業はこの変動に対して価格交渉力を持ち、さらに、自ら設定した価格でしか購入しないというスタンスを崩さないため、大企業からの下請け業務は、資金力が乏しい中小企業は市場の波に耐えらない。
また期間が収穫期のごく短い間に限られるため、不安定になる。
2. 利権や規制の壁
一次産品には輸出入規制や実績に基づく割当などの利権や規制が絡むことが多く、市場への参入には特別な許可や流通ルートが必要である。
こうした利権の壁も原料供給などの制約が多い市場で中小企業が安定した収益を上げるのは、現実的には難しい。
操業を維持するだけの十分な原料を安定的に確保するのは難しいものである。
3. 市況商品への慎重な態度
一次産品に限らず、市況性が強い商品(畜産物、水産物、果物など)も、経験やコネが不可欠な分野である。
これらの商材に参入するには、業界で長年の信頼関係と豊富な経験が必要である。また、供給ルートの確保が安定収益の前提となるため、新規参入者にとっては高いハードルである。
4. 中小企業に適した事業戦略
中小企業が一次産品や市況商品に手を出すのは得策ではない。むしろ、自社の技術力やサービス力を活かせる分野、あるいは競争が少なく市場が安定している分野に注力する方が、安定した収益を得ることができる。
外部から「儲かる」という話を安易に信じるのではなく、自社の実力と市場の特性を見極めた上で、慎重に判断することが求められる。
結論
一次産品や市況性の強い商品は、価格変動や利権の制約、必要とされるコネクションといったハードルが高く、中小企業が安易に参入できる分野ではない。
一次産品は、典型的な市況商品だ。その価格は豊作や不作による相場の変動が大きく、中小企業が耐えられる限界をはるかに超えている。
さらに、この分野には利権が絡むことが多く、輸出入規制や過去の実績に基づく割当など、多くの制約が存在する。こうした条件下では、中小企業が手を出すのはリスクが高く、避けるのが賢明な選択と言えるだろう。
一次産品に限らず、市況性の強い商品――たとえば畜産物、水産物、果物など――も同様にリスクが高い。これらの商品は、取引を円滑に進めるためのさまざまなコネや、長年にわたる商売の経験と技術が求められる分野だ。そのため、これらを直接扱う事業に新規参入するのは、非常に慎重であるべきであり、むしろ避けるのが賢明だといえる。
自社の資金力や交渉力に見合った分野で、自社の強みを活かした事業展開を目指すことが、中小企業の長期的な成長と安定を支える戦略といえる。
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