「ひとりよがり」の考え方に陥ると、発案者の「いい」という思い込みがそのまま市場でも通用すると錯覚しがちです。実際には、事業が成功するためには「顧客の視点」や「市場の需要」が欠かせないものであり、発案者の自己満足だけでは成り立ちません。
1. 事業は「顧客のメリット」を提供するもの
最初のクローム鍍金の例では、廃棄物の再利用を新事業として進めようとする「技術的可能性」に酔いしれ、顧客にとってのメリットを見失った結果、一見革新的なアイデアであっても事業化が難しいと判断されました。事業の基本は「顧客にとっての価値」を提供することであり、技術的な成功と事業の成功は別物であるという教訓が示されています。
2. 特許や公的推薦は販売保証ではない
「ウインカー付バックミラー」や「ウォーター・キー」の例では、特許や公的機関の推薦があっても、それが必ずしも販売に結びつくわけではないことが強調されています。特許が取得できたから売れる、という安易な考え方に陥ると、「市場が求めているか」という根本的な視点が欠けてしまいます。事業には特許や推薦以上に「誰が、なぜこの商品を買うのか」を冷静に見極める必要があるのです。
3. 「ひとりよがり」にならないために
三洋電機の井植社長のように、「顧客が実際に使い続けるかどうか」をモニターテストで確認することが「ひとりよがり」を防ぐために重要です。自分だけの視点で物事を進めるのではなく、顧客の反応を事前に見て、それを判断基準にすることで、自己満足に陥ることを防ぎ、市場に受け入れられる商品を開発することができます。
4. 新しい視点で事業を捉える重要性
「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」という言葉にあるように、企業は自らの強みや専門分野に根ざした事業展開が最も安全であるといえますが、もし新しい分野に進出するなら、それに見合う時間、努力、資金を伴った準備が必要です。
5. 市場心理を読み解くことの重要性
最後の「カジノブーム」と「パチンコ」の例は、事業成功には顧客の心理をしっかりと読む必要があることを教えています。顧客の立場に立って、「何が喜びをもたらすか」を読み取ることで、事業は顧客に支持され、長期的な成長につながります。
結論として、事業においては「顧客第一の視点」「市場の需要の確認」「慎重なテスト」の3つが欠かせず、これらを忘れて自己満足に走ることは、失敗のリスクを高める要因となるのです。
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