新商品の開発においては、まず開発部門を独立させることが出発点となる。その上で、明確な開発方針と目標を定め、プロジェクトチームを編成し、責任者となるマネージャーを配置する。さらに、プロジェクト計画書を作成させ、それを正式に承認するプロセスを経る。しかし、これらの準備を整えたからといって、後は放っておけば物事が自然と進むわけではない。
- 一、開発部門を独立させ
- 二、明確な開発方針と目標を設定し
- 三、プロジェクトチームを編成してマネジャーを任命し
- 四、プロジェクト計画書を作成させてこれを承認する
「任せる」という行為は、放任と紙一重の関係にある。「任せたのだから、あれこれ口を出さないほうがいい」と思いつつも、進捗が気になってしまうのが人情だ。そこで、時折「どうだ」と声をかけてみると、返ってくる答えは「まあまあです」といった曖昧なものに終始する。続けて「しっかりやってくれ」と念押しすれば、「ハイ、しっかりやります」とお決まりの応答が返る。この一連のやり取りは、いわば禅問答のようなもので、具体性も実効性も欠けている。そのため、このやり方で成功を期待するのは難しいだろう。
一方で、やたらと「ヤイノ、ヤイノ」と口出しをすると、相手からは鬱陶しいと思われるだけだ。そして、結局は「任せると言いつつ、あれこれ細かく指図してくる」と不満を抱かれるのが関の山だ。では、どうすれば適切に進行を把握できるのか。その答えは、「定期的にチェックを行う」という方法にある。頻度としては、月に一度程度が最適だろう。この定期的なチェックについては、プロジェクト計画書に明記しておくことで、双方の認識を揃え、無駄な摩擦を避けることができる。
チェックの際には、必ず報告書を二部複写で作成させる。一部は社長用のファイルに保管し、もう一部は「マスター」として開発資料室に収納する。この開発資料室は、ファイリングキャビネットや書棚でも構わないが、マスター資料そのものは門外不出とするルールを徹底する。閲覧を希望する者は、その部屋内でのみ閲覧を許可し、必要に応じてコピーを取ることは問題ない。ただし、原本を外に持ち出すことは厳禁とする。これにより、情報の一元管理と安全性を確保する。
こうする理由は、日本の企業において研究記録が個人保管されるケースが多いためだ。この慣習の結果、研究者が退職する際に、その資料一式を持ち去ってしまう事例が後を絶たない。こうした事態が起これば、せっかくの研究成果が無駄になり、会社にとっては大きな損失となる。しかし、マスターを会社側で一元管理していれば、そうしたリスクを未然に防ぐことができる。重要な知的財産を守るための基本的な対策と言えるだろう。
月に一度のチェックで報告書を基に説明を受ければ、現在の進捗や状況が明確に把握できる。このタイミングで必要な指示や助言を行えば十分だ。もし新たな計画が必要であれば、その場で計画書の提出を指示すればよい。この方法を取ることで、進行状況を的確に把握できるだけでなく、担当者にとっても適度な緊張感と張り合いが生まれる。結果として、担当者は気を抜くことなくプロジェクトを進めざるを得なくなる。
月に一度のチェックというのは、あくまで一般的な基準に過ぎない。必ずしもこの頻度に固執する必要はない。特にプロジェクトが大詰めを迎える段階では、状況によってはより頻繁にチェックを行う必要が出てくる。進捗の確認を適切に調整することで、プロジェクト全体の質と速度を保つことが可能になる。
日本の社長は往々にして、定期的なチェックを怠る傾向がある。その結果、開発の進行が遅れ、大きなリスクを招く可能性が高まる。「忙しいのでつい」という言い訳は論外だ。もし本当に忙しさを理由にチェックを怠るのであれば、その開発が自社の将来にとってさほど重要ではないと、社長自身が認識していることの表れだろう。会社の未来を左右するような開発であれば、忙しさにかまけて放置するような姿勢は取るべきではない。
本当に重要な案件であれば、忘れようとしても忘れられるものではない。それが記憶から抜け落ちるのだとしたら、そもそも重要度が低いのだろう。しかし、社長という立場上、忙しいのは避けられない。だからこそ、時間を有効に活用するためには、チェックを計画的に行うことが必要だ。事前にスケジュールを組み、定期的に確認することで、効率よくプロジェクトを管理し、確実に進捗を把握することができる。
そのためには、プロジェクト計画だけでなく、あらゆる計画やチェックが必要な指令について、最初の段階で「いつチェックするか」を明確に決めておく必要がある。このスケジュール管理は、秘書に委ねるのが効果的だ。社長には秘書を置くべきであり、その役割として、チェックのタイミングを社長のスケジュールに組み込むことを命じる。こうすることで、チェックが抜け落ちることなく、計画的かつ確実に進行状況を管理できるようになる。
このようにして、チェックを誤りなく、漏れなく行うことが、成果達成と時間の計画的な活用を両立させる鍵となる。付け加えるならば、長府製作所の川上米男社長は、「チェックこそが社長の重要な仕事の一つであり、それを怠るようでは社長としての責任を果たせない」といった趣旨の言葉を強調している。チェックを軽視せず、むしろそれを経営の中核と捉える姿勢こそ、組織の成功を支える要因と言えるだろう。
新商品開発や重要なプロジェクトの進行において、定期的なチェックを行うことは、社長やリーダーにとって非常に重要です。その際のポイントは次のとおりです。
1. 定期的なチェックのタイミング
- 月に一度のチェックが基本: 一般的には1か月に1回程度のチェックが最適で、進行状況をしっかり把握することができます。
- 状況に応じて頻度を調整: プロジェクトが大詰めに差し掛かっている場合や、重要な局面では、より頻繁にチェックを行う必要があります。
2. チェックの事前計画
- チェック日時の事前設定: プロジェクト計画書に、定期チェックの予定を明記し、担当者にも共有しておくと良いでしょう。
- 秘書へのスケジュール管理の依頼: 忙しい社長が効率よくチェックを行えるよう、秘書にチェック日程をスケジュールに組み込むようにします。
3. チェックの方法と報告体制
- 報告書の複写提出: チェック時には必ず複写の報告書を提出させ、一部を社長が保管、もう一部をマスターとして開発資料室に保管する体制を整えます。
- マスター保管の徹底: 万一、担当者が退職した場合でも知見が失われないよう、資料を社内に管理することが重要です。
4. チェックの内容と指示の出し方
- 進捗確認とフィードバック: チェック時には、進捗報告に基づいて具体的な助言や改善指示を行います。必要があれば、新たな計画書の作成も命じます。
- 報告とフィードバックのルーチン化: 定期的なチェックとフィードバックを行うことで、担当者は責任感を持ち、開発の進行に張り合いを持つことができます。
5. チェックの重要性
- 計画的チェックの効果: 社長が定期的にチェックを行うことで、プロジェクトの進行が遅れるリスクを防ぎます。忙しさにかまけてチェックを怠ることは、会社の将来にとって致命的となり得ます。
長府製作所の川上米男社長が述べているように、チェックを怠らないことが社長の責務です。計画的なチェックの体制を整えることが、会社の成果達成を確実にする重要な要素となります。
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