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社長は秘書を持て

社長という存在は、会社の中で最も忙しい立場にある。しかし、その貴重な時間の使い方が驚くほど非効率的なケースが目立つ。

本来取り組むべきではない業務に手を出し、やる必要のない仕事に多くの時間を割いてしまう。その結果、社長として本当に重要な役割を果たすための時間が圧倒的に足りなくなる状況が生まれている。

社長が果たすべき最も重要な仕事は、おおよそ七つに分類される。それらは以下の通りだ。

  1. お客様の要求を知り、競合他社の情報を収集するために外へ出向くこと
  2. 会社の方向性を示し、それを経営計画書として明文化し、社内に徹底させること
  3. プロジェクト計画書の作成や、重要な活動の基準を設定すること
  4. 計画書や指令をチェックすること
  5. クレームに対して、社長自らが対応を指示すること
  6. 人事に関する判断と管理
  7. 資金調達

中でも、最も時間を要するのは「お客様訪問」であり、最もうまくいかないのが「計画書や指令のチェック」だと言える。

ここで特に注目すべきは「チェック」の重要性だ。チェックがなければ、社長の意図を現場で実現することは不可能である。それほど大切な役割であるにもかかわらず、いざ「どうチェックを行うべきか」となると、多くの社長が完全に行き詰まってしまっているのが現実だ。

次々に出される計画や指令は、社長自身の忙しさゆえにチェックが追いつかず、そのまま放置されたり、忘れ去られたりすることが多い。一方、それを受けた役員や管理職も同様に忙しさに追われ、「やらなければ」と思いつつも手が回らず、進捗が遅れていく。その遅れ自体も、社長からのチェックがないまま放置され、やがて誰の記憶からも消えていくのが現状だ。

こうして、指令を「出しっぱなし」「聞きっぱなし」にするという無管理状態が生まれる。この無管理状態こそが極めて危険だ。それは単に指令が遂行されないことによるデメリットにとどまらず、組織運営そのものを揺るがす根本的な問題に直結しているからだ。

指令が実施されないことで引き起こされる業績の低下は、表面上の損失だけでは計り知れないほど深刻だ。この状況が続けば、組織全体の信頼や秩序が失われ、取り返しのつかない事態へと発展する可能性が高まる。

このような大損害を回避するためには、どうしても秘書の存在が不可欠となる。秘書は女性でも問題ない。その役割で最も重要なのは、社長個人(あくまで職務上の存在であり、私人としてではない)の多岐にわたる雑用を効率的に処理することである。

秘書が雑用を引き受けることで、社長は本来集中すべき重要な業務に専念できるようになり、組織全体の管理が強化される。この役割を担う秘書は、単なる補助ではなく、社長の意図を現場で確実に実現するための重要な存在と言える。

秘書がいなければ、社長個人の雑用を処理する人が誰もいなくなる。会社の社員たちは一見すると社長が自由に使える存在のように思えるが、実際にはそう簡単に動かせるわけではない。

社員にはそれぞれの役割と業務があり、社長の雑用まで手が回るわけではない。結果として、社長は自分で対応せざるを得なくなり、本来注力すべき業務に支障をきたす。これが秘書の不在による最大の問題だ。

こんなにも時間を浪費するのは、あまりにも勿体ない話だ。社長の時間は、何よりも貴重であり、簡単に削られてよいものではない。このような雑用は秘書に任せるべきだ。

来客の応対や、出張先への連絡、乗車券やホテルの予約といった業務は、秘書が適切に対応することで解決できる。これにより、社長は雑用から解放され、本当に重要な業務に集中することができる。効率的な時間の使い方こそが、会社全体の生産性向上に直結するのだ。

秘書の役割の第二は、社長が出した指令が漏れなく、円滑に実行されるようサポートすることにある。ただし、ここで注意すべき点がある。それは、秘書自身にチェックを任せてはならないということだ。

秘書がチェックを行うようになると、次第に社員に対して発言力を持つようになり、組織内の力関係に歪みが生じる恐れがある。秘書が社員に対して行うべきことはただ一つ、社長の意思を正確に伝えることだけだ。この役割を明確に区別し、秘書の職務範囲を厳格に定めることが、健全な組織運営のために重要である。

社長が出す計画や指令については、チェックのタイミングを明確に決め、それを秘書に伝える必要がある。この際、秘書にはその内容を必ず復唱させるよう教育することが重要だ。具体的には、メモや口頭で「この計画は〇月〇日にチェックする」と伝え、秘書が確認し復唱することで、認識の齟齬を防ぐ。

秘書は指令や計画をチェック日別に整理し、スケジュール管理を徹底する。そして社長が出社した際には、「〇〇のチェックは本日予定されています」とタイミングよく報告を行うようにする。これにより、指令のチェックが漏れることなく、スムーズに実行に移される体制が整う。

社長は秘書からの報告を受け、その計画や指令を予定通り実行するか、あるいは何日に延期するかを即座に判断する。その判断内容を秘書が正確に記録し、社員に伝える役目を担う。この際、伝達方法は厳密に書面で行うと決めておく必要がある。口頭での伝達は誤解や伝達漏れの原因となるため、必ず回覧やメモなどの書面形式で行うことが基本だ。

こうしたルールを徹底することで、社長の指令が確実に全社員へ正しく伝わり、計画が円滑に進行する環境が整えられる。明文化された指令は、後の確認やトラブル対応の際にも有効な証拠として機能するため、組織運営の安定にも寄与する。

「そこまで徹底しなくても……」と思うかもしれないが、実際にやってみると、それを実施するかどうかで大きな差が生まれることが分かるだろう。そして、この方法は決して煩雑なものではない。むしろ、組織運営の効率を上げ、無駄を減らすためには非常に効果的だ。

ただし、一度指令を出した後の督促や念押しに関しては、必ずしも書面である必要はない。この場合、口頭で行っても問題ない。重要なのは、指令そのものの初回の伝達や変更の記録を徹底し、それが確実に共有される仕組みを維持することである。

たったこれだけの工夫で得られる効果の大きさに、社長自身が驚くことになるだろう。秘書を持つことで、社長は初めて本来取り組むべき仕事のための時間を確保できる。そして、社長業の中でも最も重要な役割の一つである「チェック」が、これまで以上に円滑かつ確実に行えるようになる。

秘書のサポートにより、社長は雑用から解放されるだけでなく、計画や指令の進捗を把握しやすくなり、組織全体の動きを的確にコントロールできるようになるのだ。この変化は、組織の生産性を大きく向上させ、社長自身の働き方を根本的に変えるきっかけとなる。

だからこそ、社長が秘書を持たないのは、大きな誤りを犯していると言える。特に中小企業の社長の場合、社員が30名以上いる規模であれば、女性の秘書は不可欠だ。秘書の存在が、社長の業務効率と組織全体の運営に直結するからである。

一方で、男性秘書については、よほどの特殊な事情や必要性がない限り、特に求められるものではないといえる。これは業務内容や役割分担の性質によるもので、通常の中小企業では女性秘書だけで十分に対応可能だからだ。要は、組織にとって最適な形で秘書を配置し、社長がその役割を最大限に活用することが重要なのである。

男性秘書を採用する場合、その役割や責任範囲には細心の注意を払う必要がある。特に、男性秘書に重要な仕事を任せすぎると、次第に社内での発言力を持つようになり、その結果、出過ぎた行動を取る可能性が高まる。これが原因で社員たちの批判を受けたり、さらにはスパイ視されるような事態に発展するリスクがある。

こうした状況を避けるためには、男性秘書に過剰な権限を与えず、社長の補助に徹する役割に限定することが重要だ。組織内の力学や人間関係において微妙なバランスを保つためにも、秘書の役割設定には慎重さが求められる。

秘書の役割は、いかなる場合も社長個人の仕事に限定するべきだ。この点を強調しておきたい。秘書に社内の他部門に対する発言力を持たせることは絶対に避けるべきであり、これが守られないと、組織内での混乱や不信感を引き起こす可能性がある。

また、秘書の仕事について注意すべき点として、たとえ秘書としての業務が余ったとしても、他部門の仕事を手伝わせることは厳禁だ。これを許してしまうと、秘書本来の役割がぼやけ、社長個人のサポートという核心業務が疎かになりかねない。秘書はあくまで社長の時間を最大化し、業務を円滑に進めるための存在であり、その職務範囲を明確に守ることが組織の安定に繋がる。

秘書に本来の役割以外の仕事をさせると、その業務範囲が次第に拡大し、結果として秘書本来の仕事に支障を来すようになる。この悪循環を防ぐためには、いかなる場合でも例外を作ってはならない。たとえば、社長が海外に長期出張するような状況であっても、秘書に他部門の業務を手伝わせることは禁物だ。

秘書の職務は社長個人のサポートに特化しており、これを曖昧にすると、社長自身が本来の業務に集中できなくなるだけでなく、組織全体に悪影響を及ぼす可能性がある。職務範囲を厳格に守ることが、秘書の価値を最大化し、組織運営をスムーズに進める鍵となる。

秘書の役割を曖昧にし、本来の仕事以外の業務を任せてしまうと、そこから徐々に崩れていく危険がある。そのような状況を避けるためにも、社長が長期の海外出張などで秘書が通常の業務から一時的に解放される場合には、明確な対応を決めておく必要がある。

たとえば、その期間中は秘書に自由に休暇を取らせるなど、リフレッシュの機会を与えるのも一つの方法だ。それが難しい場合には、平常時に手をつけられなかった資料や情報の整理、業務の効率化に向けた準備作業を指示するのが適切だ。重要なのは、どんな場合でも秘書本来の役割を守り、それ以外の仕事を安易に押し付けないことである。これにより、秘書の業務の質を維持し、社長のサポート体制を万全に保つことができる。

この方針を守るためには、秘書自身だけでなく、社内全体にもその重要性を十分に理解させることが必要だ。「秘書が遊んでいる」といった誤解や批判が出ないように、秘書の役割とその範囲を明確にし、全社員に徹底して共有することが不可欠である。

秘書の仕事は表面的には見えにくい部分が多いが、社長の業務効率を支える極めて重要な役割であることを社内に認識させる必要がある。そのためには、秘書の業務内容や目的を説明し、秘書が持つ特殊なポジションの意味を周知する機会を設けるとよい。これにより、不必要な誤解や不満が解消され、社内の調和を保つことができる。

私の助言で秘書を採用したY社長は、こう言った。「先生のすすめで秘書を置き、出社時にチェックのメモ帳を差し出させるようにしました。」

「そして、メモをもとにチェックを最優先で行ったところ、その効果の大きさに驚きました。これまで遅々として進まなかった施策が嘘のように実施され、懸案が次々と解決していくのです。」

「メモをもとにチェックを最優先で行ったところ、その効果の大きさに驚きました。これまで進まなかった施策が嘘のように実施され、懸案が次々と解決していくのです。」

「正直、自分でも信じられないほどです。これまで、言いっ放しや聞きっ放しがどれほど多かったのか、改めてよく分かりました」と、Y社長は私に語ってくれた。

会社の中の仕事は、実際のところ、チェックなしでは進まないといっても過言ではない。そして、その重要なチェックを確実に行うには、秘書の存在が不可欠であることは間違いない。

社長秘書一人が生み出す効果は、数十人、いや数百人分の仕事に匹敵するものであることを理解するべきだ。

社長が秘書を持つべき理由は、会社の中で社長が本来やるべき仕事に集中でき、重要な仕事の「チェック」が確実に行えるからです。秘書がいることで、社長の指令や計画が実行されないリスクを避け、会社全体の効率が格段に上がります。以下、秘書を持つことで得られる効果について、特に注目すべきポイントをいくつか解説します。

1. 社長の時間の効率化

社長が個人の雑用を処理していると、名刺や書類の整理、来客応対、出張の手配といったことに貴重な時間を奪われます。秘書がこうした雑務を担当することで、社長はお客様対応や市場調査、経営方針の策定など、経営者としての本来の仕事に集中できるようになります。

2. チェックのシステム化

社長が出す指令や計画には、チェックを設定しないと実行されないことが多々あります。秘書がチェックの日時を記録し、社長に定期的に報告することで、社長が「言いっぱなし」「聞きっぱなし」にならないようサポートする役割を果たします。これにより、社長が決めた方針や指令が実際に実行され、会社の計画が円滑に進行するのです。

3. 発言力のケジメ

秘書がチェック業務に関わりすぎると、社員に対して秘書が発言力を持ってしまう恐れがあります。秘書の役割は、あくまで社長の意思を伝えることであり、社員に指示をすることではありません。これを徹底することで、秘書が社内での影響力を超えた発言力を持たないようにする必要があります。

4. 他部門の兼務禁止

秘書が他部門の業務を手伝うことは、秘書本来の業務に支障をきたすため避けるべきです。たとえ秘書に余裕がある時でも、資料整理や情報の整備などに時間を使うことで、秘書の役割に集中できる環境を整え、社内での誤解や批判を防ぎます。

5. 実行力の向上

秘書のサポートを受けた社長は、指令や計画を出すだけでなく、その実行状況を随時確認できるようになります。こうしたシステムを確立することで、社内の施策が滞ることなく進み、会社の成果が上がります。結果として、秘書の存在は数十人、数百人分の仕事の効果を発揮することにもつながるのです。

秘書を置くことで、社長は本来の業務に集中し、チェック機能が効果的に働くことで、会社全体の運営がより円滑に進むという大きな効果が得られます。

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