企業における「事業部制」を排すべき理由について、事例を通じて説明します。
1. 部門利益責任の弊害
事業部制や独立採算制では、各部門が独自の利益を最優先し、全社利益に目を向けにくくなります。部門ごとに収益性が異なると、収益性の低い商品やプロジェクトに注力しないため、会社全体の収益が低下し、顧客対応が疎かになりかねません。
例えば、ある事業部が高収益商品に値引きを行い、売上は増えても利益が減少する場合が典型的です。また、低収益商品を製造部門が優先せず、納期遅れで顧客からの信頼を損ねることも起こります。
2. 短期的利益の追求による長期的発展の阻害
独立採算制のもとでは、各部門が短期的な利益を追求し、長期的な視点が欠如しがちです。新製品の開発や設備投資は短期の利益に影響を与えるため、各部門は消極的になりがちです。結果として、企業の成長戦略が損なわれます。
3. 外部対応の機動力と柔軟性の欠如
事業部制では、部門間での協力が疎かになるため、急な市場の変化や顧客の要求に対応する機動力が失われがちです。部門が独立した収益責任を持つため、他部門の業績には無関心で、部門間の調整が難しくなります。これにより、顧客サービスが低下し、販売機会を逃すことになります。
4. 社長の責任を社員に転嫁する無責任な体制
本来、企業の利益責任は社長が負うべきですが、部門利益責任制では責任を各部門に押し付けることになります。結果として、各部門長が無力化され、社内の士気が下がる原因となります。事業部制や独立採算制の導入は、責任転嫁であり、根本的な経営の誤りと言えます。
結論
企業の利益責任は社長が一手に引き受けるべきであり、事業部制や独立採算制のような部門利益責任制は、企業の一体感を損ない、長期的な発展を阻害します。
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