会社における人々、特に管理職の行動次第で業績に大きな差が生まれることは明白だ。
そうした人々に適切な行動を促すためには、経営計画書で方針や目標を明確に示し、重要事項についてはプロジェクト計画書を作成して推進することが求められる。
しかし、それだけでは不十分だ。彼らは忙しく、実行に移そうと思いながらも遅れがちになる。難題に直面して行き詰まることもある。こうした状況下で、いかに管理職を適切に指導し、管理していくか――これこそが重要な課題となる。
この章では、この重要な課題に対して取り組んだ内容を述べていく。
環境整備とは何を意味するのか
多くの会社で清潔や整頓の重要性が声高に叫ばれている。それにもかかわらず、清潔整頓が具体的に何を指すのかとなると、曖昧なままのケースが多い。その結果として、実際の成果もほとんど上がっていないのが現状だ。
環境整備とは、単に清掃したり、きれいにしたり、物を片付けたりすることを指すわけではない。明確な定義と正しい指導が伴ってこそ、初めて実効性が生まれるものだ。そこで、ここでは環境整備の定義を明らかにしていく。
環境整備とは、以下の五つの要素を対象とするものと考えるべきである。
- 規律
- 清潔
- 整頓
- 安全
- 衛生
これら五つの要素を軸に、環境整備を進めていくことが求められる。
●規律
辞書では「きまり」や「秩序」といった意味で説明されている。旧陸軍では、規律を「上下等しく法規を厳守し、命令を必ず実行すること、これを軍規振作の実証とする」と定義していた。この明快な定義を、私も採用したいと考えている。
これを現代の言葉で言い換えるならば、規律とは次のように表現できる。
- 指示や命令が必ず実行されること
- 定められたルールや約束事を必ず守ること
これが規律の本質と言える。
これこそ、組織管理における根本的な要件であることは言うまでもない。極めて当たり前のことではあるが、この二つを確実に実行するのは意外に難しいのが現実だ。
だからこそ、本書では「正しい指導」の章で、次の二つのポイントを取り上げて強調している。
- 「社長の決定や指令は守らなくてもよい、という誤った教育をしていないか」
- 「方針・指令・規則違反は人前で厳しく叱るべきである」
これらを通じて、規律を確立する重要性を改めて示しているのだ。
●清潔
辞書には「汚れのないこと」「清らかなこと」と記されているが、これを単に「きれいにする」というだけでは不十分だ。私の定義では、清潔とは次の二つの要素から成り立つ。
- いらないものを捨てる
- 必要なものを捨てない
この二つを実践することで、真の清潔が実現されると考えている。
清掃や拭き掃除は清潔の一部に過ぎず、それだけで清潔を達成したとは言えない。どれだけきれいにしていても、使わない機械や不要な物を残しておけば意味がない。一方で、小型の部品や必要なメモ用紙などを誤って捨ててしまうようでは、清潔の本質を損なってしまう。清潔とは、単なる美観ではなく、必要と不要を正しく区別し、適切に管理することにある。
社長は、このポイントを深く認識し、何よりも優先して環境整備の指導に力を注がなければならない。
いらないものを捨てない状態は「便秘」に例えられ、必要なものを捨てることは「下痢」に相当する。組織の健康を維持するためには、この「便秘」と「下痢」を解消することが欠かせない。これこそが、組織の健全な運営の基礎条件と言える。
社長は、このポイントを深く認識し、何よりも優先して環境整備の指導に力を注がなければならない。
いらないものを捨てない状態は「便秘」に例えられ、必要なものを捨てることは「下痢」に相当する。組織の健康を維持するためには、この「便秘」と「下痢」を解消することが欠かせない。これこそが、組織の健全な運営の基礎条件と言える。
職場から「便秘」と「下痢」を完全に取り除くことこそが、清潔の実現である。不要なものは一切排除し、塵ひとつない状態にまで清掃を徹底する。窓ガラスは文字通り透き通るように磨き上げ、機械はピカピカに輝くまで手入れを行う。これが職場における真の清潔であり、環境整備の要となる。
●整頓
辞書には「きちんと片づけること」と記載されているが、これでは本質を捉えていない。例えば、何でもかんでも押し入れに放り込んで「はい、片づきました」とするのは整頓とは言えない。
職場においても「きれいに片づけろ」と指示すると、「片づけたら仕事にならない」「忙しくて片づける余裕がない」という反発が起きがちだ。しかし、整頓とは単なる片づけを意味するのではない。むしろ、物や情報を効率的かつ機能的に配置し、必要なときに即座に取り出せる状態を作ることが整頓の本質である。
整頓とは、次の二つを徹底することを指す。
- 物の置き場所と置き方を明確に決める
- 置き場所の管理責任者を指定し、それを表示する
若い頃の話だが、ある日残業していると、社長が工場に入ってきて「工場を見回るから一緒に来い」と言われた。その際、私は工場の出入口の扉の開閉を担当することになった。この経験が、整頓の重要性を改めて考えさせるきっかけとなった。物や設備の管理が徹底されていれば、無駄な動きが減り、作業効率が格段に向上するのだ。
ある日、職場の作業台の上に大型のノギス(精密測定器)が無造作に放り出されているのを目にした。その時、社長が「だらしがない、大切なノギスを」と独り言をつぶやいた。その言葉を聞いて、私はハッと気づいた。「ノギスの置き場所はどこだろう?」と。
もちろん、ノギスのような精密な道具は大切に扱われるべきで、通常は専用の箱に入れて棚にしまう。しかし、その「置き場所」は誰が決めるべきなのか?職場を改めて見回してみても、置き場所を示す表示は一つもなく、物はすべて適当に置かれているだけだった。この状況では整頓が機能するはずもない。適切な整頓とは、置き場所を明確に決め、それを全員が理解し守る仕組みがあって初めて成立するものなのだと痛感した。
「片づけろ」や「だらしがない」と叱る前に、まず「どこに置くのか」を明確に決めておかなければならない。片づける側からすれば、置き場所が決まっていなければ、どこに片づければよいのか分からないのが当然だ。だからこそ、物の置き場所を決めることが整頓の第一歩であり、最優先で取り組むべき課題なのである。
置き場所は、作業の効率を最優先に考え、仕事に最も便利な位置に決める。そして、どのように置けばさらに作業がしやすくなるかを徹底的に研究することが必要だ。
例えば、奥の物を取り出すために手前の物を動かさなければならない、上の物をどけないと下の物が取れないといった状況では、時間と労力が無駄になる。また、崩れやすい、傷みやすいといったリスクを排除する工夫も重要だ。整頓とは、ただ片づけるのではなく、物の配置がスムーズな作業を実現するように最適化されていることを意味する。
置き場所の表示については、会社として統一感を持たせるために、表示板のサイズを二種類か三種類に決めておくのが望ましい。用途に応じて縦型や横型を使い分けると、視認性が高まる。
文字は、会社内で字が得意な社員に任せるか、より専門的で美しい仕上がりを求めるならプロに依頼するとよい。統一されたデザインと分かりやすい表示は、職場全体の整頓意識を高める効果がある。
担当の割り振りは、社員の経験や役割に応じて行うのが効果的だ。例えば、新人には道具や工具、部品の管理を任せ、経験のある古参社員には治具や検測具といったより専門的な管理を担当させるのが適切だろう。一方で、管理監督職には建物の保全、危険物の管理、安全対策、防火対策、戸締まりの確認など、より広範かつ責任の重い業務を割り当てるのがよい。
各担当者は、毎日終業時に自分の担当箇所を点検し、異常があれば速やかに上司に報告する体制を徹底する。こうした仕組みを整えることで、全員が責任感を持って職場環境の整備に取り組むことが可能となる。
私が製造部門の管理職をしていた頃、工具の整理ボードを作成したことがあった。終業時にはすべての工具が揃っているのを確認していたのに、翌朝出勤してみると、いくつかの工具が紛失していることがあり、非常に困った経験がある。
原因を探ると、他の職場の人が工具を持ち出して使用したものの、使用後に元の場所へ戻していないことが判明した。これは、単に工具が使われたまま放置されるという問題だけでなく、必要なときに工具が見つからず、作業に遅れが生じるという大きな影響を及ぼしていた。整頓を徹底するためには、工具の使用ルールを明確にし、全員がそのルールを守る意識を共有することが重要だと痛感した。
あまりにもひどい状況だったため、工具を戸棚に収納し、鍵をかけることにした。すると、「一倉は冷たい」「自分だけ良ければいいのか」といった逆恨みを受けることになった。しかし、私は「冗談じゃない。使うのは構わないが、使ったらきちんと元に戻しておかないから、やむを得ずこうしたのだ」と正当防衛を主張せざるを得なかった。
この経験を通じて、安全や衛生に関して改めて考える機会を得た。実のところ、規律・清潔・整頓が徹底されていれば、安全や衛生は自然と実現されるものである。したがって、これらを特に意識する必要はなく、まず規律・清潔・整頓に注力することが重要だと理解した。
どう指導するか
最初に重要なのは、社長自身の強い決意だ。少し大げさに聞こえるかもしれないが、この決意が何よりも基本となる。そして、その決意を具体的に示すために、経営計画書の方針書に明確に記載することが必要だ。
例えば、「職場の規律・清潔・整頓を徹底する」「環境整備を最優先事項とする」といった形で、方針として掲げる。これにより、社内全体に社長の意志が伝わり、従業員一人ひとりがその重要性を理解する土台が築かれる。
例えば「日本一の職場環境を目指す」というような明確な目標を掲げれば、社員の意識を高め、動機づけとして大きな効果を発揮するだろう。ただし、その目標を実現するためには、社長自身が「日本一うるさく」徹底的に指導する覚悟が必要だ。中途半端な取り組みやスローガンだけで終わるようでは、逆に会社全体の信頼感を損ないかねない。
スローガン倒れを防ぐためには、具体的な行動計画と定期的な進捗管理が欠かせない。口先だけの目標ではなく、実行を伴った取り組みこそが会社を強くし、目標達成を可能にするのだ。
次に、具体的な行動を進めるためにプロジェクト計画書を作成し、推進していく。この計画書には、以下の項目を明確に記載することが重要だ。
- 分担区域:職場全体をいくつかの区域に分ける。
- 責任者とメンバー:各区域ごとに責任者を任命し、担当するメンバーを決める。
分担は通常、部門ごとに行うのが効率的だろう。例えば、製造部門、営業部門、事務部門といったように、自部門の範囲を担当する形にする。これにより、各部門が自分たちのエリアを管理する責任を持ち、全体の環境整備がスムーズに進む。責任者を中心にメンバーが協力し、日々の活動を通じて目標に向かう体制を整えることが重要だ。
まず最初に取り組むべきことは、職場から現在使っていないものを徹底的に取り除くことだ。「将来使うかもしれない」という曖昧な理由で物を残しておくのは禁物だ。そうした物は往々にして不要なスペースを占有し、職場の効率を低下させる原因となる。
本当に必要なものは、頻繁に使われているか、または確実に使用予定があるものに限られる。判断基準を明確にし、職場全体で「不要なものは持ち込まない、残さない」というルールを徹底することが、環境整備の第一歩となる。このプロセスを通じて、職場のスペースを有効活用し、作業効率を向上させる基盤を作ることができる。
現在使用しているものだけに厳密に限定することが肝心だ。「将来必要になるかもしれない」という曖昧な理由で物を残してしまうと、環境整備が中途半端な結果に終わる危険性がある。
将来必要になった場合には、その時点で持ち込めばよい。この原則を徹底することで、職場から不要な物を排除し、本当に必要な物だけが存在する状態を維持できる。こうした厳格な基準を守ることが、環境整備の成功と持続性につながる。職場の効率化と整然とした環境を確保するために、この原則を崩してはならない。
取り除いたものは、思い切って捨ててしまうのが最善の選択だ。「将来必要になるかもしれない」という理由で残しておいても、実際に使う機会はほとんどない。それどころか、保管しておくスペースや管理の手間が無駄になることが多い。
さらに、仮に将来必要になったとしても、その時には技術の進歩などでより優れた製品や道具が市場に出ている可能性が高い。その際に新たに購入したほうが、結果的に効率的で合理的だ。不要な物を捨てる決断をためらわずに行うことが、職場の整頓を確実に進め、環境整備の質を向上させる鍵となる。
不要なものをすべて捨て去ったら、次に取り組むのは徹底的な清掃だ。天井、壁、窓、床、機械、什器、工具類、車両や運搬具まで、あらゆる場所を対象にする。職場の隅々まで塵ひとつ残さず、すべてをピカピカに磨き上げる。
この清掃作業は単に見た目をきれいにするだけでなく、職場全体の雰囲気を一新し、作業効率や安全性を向上させる重要なプロセスである。また、清掃を通じて設備や道具の状態を点検する機会にもなるため、予期せぬトラブルを未然に防ぐ効果も期待できる。この段階で徹底的に清掃を行うことが、環境整備の基盤を強固にする。
清掃の次は、機械や設備のメンテナンスを徹底する。注脂や注油を行い、必要以上の油はしっかり拭き取る。これにより、設備の動作を滑らかにし、寿命を延ばすことができる。
さらに、屋根、外壁、門柱、塀、看板、スクラップ置場といった職場全体のあらゆる箇所に目を配り、環境整備を徹底する。傷んでいる部分は速やかに修理し、汚れや錆が目立つ場所は適切に塗り替える。こうした細部への配慮が、職場全体の印象と安全性を向上させる。
特にトイレの清掃は、職場の環境整備において最も重要な部分だ。トイレが清潔に保たれていることは、従業員のモラルや衛生管理の水準を直接反映する。汚れや臭気が残らないよう、他の場所以上に念入りに清掃とメンテナンスを行うべきである。
清潔と並行して整頓を進めることは言うまでもない。その中で特に工夫が求められるのは「棚」の設計と配置だ。棚に物をきちんと整理して置くことが、整頓の効果を最大化する。
しかし、多くの工場で見かける棚には、奥行きが深すぎたり、中段が少なかったりする問題がある。これは、押し入れをイメージして棚を作ってしまうためだ。この設計では、奥にある物を取り出すのが困難になるだけでなく、上下のスペースが有効に使えず、結果としてスペースが無駄になる。
理想的な棚は、奥行きが浅く、複数の中段があり、どの物にもすぐ手が届く設計である。さらに、棚の各段に適切な区分やラベルを付けることで、誰が見ても一目で分かる状態にすることが重要だ。このように棚を工夫することで、整頓がしやすくなり、作業効率も大幅に向上する。
棚の基準的な寸法として、奥行きは40センチ、中段の間隔も40センチが適切とされる。この寸法は、多くの作業環境において使いやすく、効率的な配置を可能にする。
さらに、これを二つ組み合わせることで奥行き80センチの棚にすることもできる。この場合、一方を前面収納用、もう一方を背面収納用として活用するのが効果的だ。ただし、奥行きが深くなるため、取り出しやすさを維持する工夫が必要になる。例えば、スライド式のトレイや引き出しを導入することで、奥に置いた物でも簡単に取り出せるようにするのが良い。
このような設計基準を守ることで、棚の機能性を高め、整頓の質を向上させることができる。
部品箱には標準的なサイズを設定することが重要だ。以下の寸法が適している:
- 縦:40センチ
- 横:30センチ
このサイズは、美しい一対確の比率に近く、視覚的にも整然とした印象を与える。また、使い勝手の面でも非常に効率的だ。
- 深さ:内寸で12センチ程度が理想的
この深さなら、部品を適度な量収納でき、取り出しやすさも確保できる。
さらに、この部品箱を二つ重ねると、40センチの中段にぴったり収まる設計になるため、棚との整合性も良い。素材としては、鉄板製の市販品を利用するのも十分実用的である。市販品を活用すれば、コストと手間を削減しながら整頓性を向上させることができる。この標準化された部品箱を導入することで、収納と管理が効率化され、職場全体の整頓が促進される。
工具類の管理においては、整理板に工具の影絵を描き、その隣に品名を記載する方法が非常に効果的だ。この方法を採用すれば、工具の名前や配置場所を一々教える手間が省け、新しいメンバーでも直感的に理解できる。また、工具が不足している場合も一目でわかるため、紛失や取り忘れを防ぐことができる。
表示の工夫は工具の品名や置き場だけに留まらない。職場全体の効率性と安全性を高めるため、次のような表示が必要となる:
- 通路表示:歩行者や作業車両の通路を明確に分け、視覚的に認識しやすくする。
- 車両進行方向矢印:運搬具やフォークリフトなどの安全な運行を促進する。
- 速度制限:作業車両の安全走行を確保するための制限速度を明示。
これらの表示を適切に配置することで、作業効率が向上し、職場の安全性が確保される。整理整頓を支える視覚的な管理手法は、職場の秩序を保つ上で非常に重要な役割を果たす。
机の引き出し内の整頓も、職場環境を改善するうえで重要なポイントだ。特に中央引き出しは、仕切りがないために物が散乱しやすく、非常に使いにくい。このような状態は、デスクメーカーが顧客サービスの重要性を十分に理解していない表れとも言える。
私自身、中央引き出しを有効活用するために、L字型の仕切り板を特別に作成して対応した。仕切りを設けることで、文房具や小物を整理しやすくなり、必要なものを素早く取り出せるようになる。
さらに、引き出し内の整頓を徹底するためには、どの引き出しに何を入れるかを明確に決めることが重要だ。このルールを守ることで、探し物の時間を削減し、業務効率が大幅に向上する。引き出しの中も職場環境の一部と捉え、整理整頓の意識を徹底させることが大切だ。
引き出しを整理整頓すると、これまで机の上に散乱していた書類――私が「居眠り用屏風」と呼んでいるもの――をすべて引き出しの中に収納することができる。これにより、机の上にあった障害物が一掃され、作業スペースがすっきりと片付き、効率的で快適な作業環境が実現する。
机の上が片付くことで視覚的にも心理的にもストレスが軽減され、集中力が高まる。整頓された引き出しと片付いた机は、職場全体の生産性向上に寄与する重要な要素と言える。
最後に忘れてはならないのが、安全装置や防護施設の整備、火災予防対策、防火訓練、そして戸締りの徹底だ。これらは職場全体の安全を確保するうえで欠かせない要素であり、特に管理職に対してその重要性を強く認識させる必要がある。
安全対策を効果的に進めるためには、全社的な委員会を設置し、各部門が協力して取り組む仕組みを作ることが有効だ。この委員会を通じて、具体的な施策の計画と実行、定期的な点検、問題の共有と改善を推進する。
また、防火訓練や安全装置の点検は、計画的かつ定期的に実施することで効果を高められる。これらの取り組みを全社的に強調し、安全意識を高めることで、万が一のトラブルを未然に防ぎ、職場環境の安全性を維持することが可能となる。
社長としての役割は、単にプロジェクト計画書を作らせるだけにとどまらない。環境整備を「推進運動」として位置づけ、全社員が一丸となって取り組むための仕組みを構築することが求められる。その際、以下のような具体的な手順が効果的だ。
- 期間の設定
環境整備運動を「第一次」「第二次」など、明確な期間ごとに区切り、段階的に目標を設定する。このことで、全体の進捗が管理しやすくなる。 - 社長による中間チェック
運動の途中で社長自ら現場を巡視し、中間チェックを行う。これにより、進捗状況を直接把握できるだけでなく、社員にとって社長の関心が強いことが伝わり、士気の向上にもつながる。 - 最終日の巡視と採点
運動終了日には、社長が全職場を巡視し、整備状況を採点する。この評価基準は事前に明確にしておき、公平性を保つことが大切。 - 表彰制度の導入
優れた成果を上げた職場や個人を表彰することで、努力が報われる仕組みを作る。表彰は次の運動へのモチベーションとなり、職場全体の意識改革を促進する。
このような運動の展開によって、環境整備が単なる日常業務ではなく、組織全体の成長を支える重要な活動として定着していく。
環境整備の徹底は、一度限りの運動で終わらせてはならない。毎月の定期巡回を確実に実施することが求められる。これこそが、社長自身の決意を具体的に示す行動であり、職場全体に環境整備の重要性を浸透させる手段となる。
さらに、その実施状況や成果をボーナス査定の最重要項目とするほどの重みを持たせるべきだ。それくらい環境整備は、事業経営にとって欠かせない要素である。環境整備の状態は、職場の効率性、安全性、そして従業員の意識を直接反映するものであり、これを疎かにしていては経営の基盤が揺らいでしまう。
そのため、本書でも貴重な紙面を割いて、細部に至るまで具体的に述べた次第だ。環境整備は単なる業務の一環ではなく、企業の成長と成功を支える基盤であることを、改めて強調したい。
環境整備は、単に「掃除」や「片付け」以上の深い意義を持ち、会社の生産性や品質向上に直結する重要な取り組みです。この物語では、環境整備によって工場や店舗の不良率が低下し、社員の士気や作業効率が向上した事例が描かれています。以下は環境整備を実施する上でのポイントを簡潔にまとめたものです。
1. 環境整備の基本方針
- 環境整備は、職場の清潔や整頓に限らず、規律・安全・衛生を含む全社的な取り組みとして実施する。
- 汚れが目立つ色の作業衣や制服を導入し、定期的な清掃とチェックを行うことで、職場の清潔さを維持する。
- 各部署や担当者に責任を持たせ、整理整頓や清掃のルールを明確化する。
2. 規律と清潔
- 規律: 「決めたことを必ず守る」「指令が必ず実行される」というルールを徹底する。
- 清潔: 不要なものを排除し、必要なものだけを適切に配置して職場を整える。
3. 整頓の方法
- 物の置き場所を決め、使用しやすい方法で整頓する。すべての物に「定位置」と「管理責任者」を設定する。
- 工具や部品箱には影絵やラベルを貼ることで、物の管理を分かりやすくし、紛失や探し物の時間を削減する。
4. 定期的なチェックと改善
- 社長や管理職が環境整備を巡回してチェックし、定期的に社員に対する指導や表彰を行う。
- 不足や改善点を明確化し、プロジェクト形式で段階的に進める。
5. 品質管理と生産性への効果
- 環境整備によって職場の雰囲気が整い、社員の意識が向上することで、不良率が自然に下がり、生産性が向上する。
- 清潔で整然とした職場環境は、仕事の効率を高め、さらには社員同士のコミュニケーションや士気向上にもつながる。
6. 徹底した環境整備の事例から学ぶこと
- M社やH社などの企業のように、環境整備によって大きな成果を上げた事例からも分かるように、整理整頓ができていない職場では、不良やトラブルの原因を突き止めることが困難です。
- また、整理整頓が徹底していることで、職場全体の雰囲気が明るくなり、仕事の質も向上することが示されています。
このように、環境整備は業績や社員の士気にも大きく影響を与えます。
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