社長学シリーズ第二巻「経営計画・資金運用」篇で触れた通り、方針書の各項目ごとにプロジェクト計画書を作成し、さらにその計画書に記載された活動項目ごとに詳細なプロジェクト計画書を用意する必要性を強調している。
また、定期的なチェックが欠かせないことについても言及している。チェックに関する基本的な考え方は「経営計画」篇で説明しているので、そちらを参照してほしい。ここでは、チェックの具体的な進め方において重要なポイントを取り上げてみる。
M社は石油販売業を手がける超優良企業だ。M社長の経営計画およびプロジェクト計画の定期チェックは、各SS(ガソリンスタンド)マネジャーと一対一で行われる。そのチェックは二~三時間にも及び、非常に濃密な内容で進められている。
K社は農薬の問屋であり、農薬業界では驚くほどの優れた業績を誇っている。この成功の背景には、セールスマンが出張する際に、販売担当専務がセールスマンとマンツーマンでスケジュールや訪問先の一つ一つについて綿密な指導と打ち合わせを行うという徹底した取り組みがある。
優良企業と低迷企業の違いの中でも、チェック体制の差は極めて大きい要因の一つだ。実際のところ、「チェックなくして正しい経営はあり得ない」と言っても過言ではない。優れた企業ほど質の高いチェックを徹底して行い、一方で低迷している企業は、チェックを形だけで済ませ、本質的な意味で実施していないのが現状だ。
最悪なのは、チェックしようにもチェックの土台がない状況だ。つまり、明確な方針や目標が存在せず、あるのは場当たり的な「叱責」だけという状態である。叱責を方針や指導と勘違いしている社長は意外と多い。
最もよく見られるのは、一応目標らしきものが存在し、一応チェックらしきことをしている、というケースだ。この「一応」という曖昧さがすべてを物語っており、全体的に適当さが漂う。そして、そうしたチェックは大抵の場合、会議という形で行われる。
会社全体の「前月実績」が一覧表として経理から提出され、それをもとにチェックが行われるという形式だ。この方法では十把一からげとまではいかないものの、その効果は限られている。表面的なチェックに終始しがちであり、分析も断面的なものにとどまってしまうからだ。
断面の検討だけでは、本質を把握することはできない。本当に重要なのは、時系列的な検討を行い、「改善傾向にあるのか、それとも悪化傾向にあるのか」といった動向を見極めることだ。実績そのものを論じても、それ自体が過去の結果であり、そこから未来への方向性を見出さなければ意味がない。
本当に重要なのは、「方針が正しいかどうか」を徹底的にチェックすることだ。方針が間違っていれば、速やかに転換する必要があるし、正しければその方針を自信を持って貫けばよい。状況が悪化しているなら方針を見直し、改善傾向にあるならその方針を継続するだけでよい。すべての判断は、この基本に基づくべきだ。
傾向を正確に把握するためには、時系列的な検討が不可欠だ。そして、そのためには個々の商品、営業所、得意先について、一つ一つ丁寧にチェックする必要がある。全体をざっと見るだけでは本質を見落としてしまう。結局のところ、「個別チェック」こそが本当に効果的な手法である。この節で挙げた二つの優良企業のチェックこそ、まさにその個別チェックの実践例であり、成功の鍵を握る方法と言える。
責任者や担当者と一対一で向き合い、商品、営業所、得意先の一つひとつを詳細に検討し、その上で方針の適否を判断する。このプロセスこそが、正しいチェックの在り方である。本質に迫るためには、こうした個別かつ具体的な検討が欠かせない。
利益計画を用いて会社全体の状況をチェックするというのは、厳密には「チェック」というよりも「確認」に近い。会社全体がどうなっているのかを大まかに把握し、その上で方針や指導に誤りや不足がないかを大局的に捉えるための手段である。詳細な改善や具体的な対応に進む前の全体的な見極めが、この段階の目的となる。
そして、「さてどうするか」を見出すためには、個別チェックが不可欠だ。利益計画は全体の確認に重点を置き、大局的な状況を把握する。一方で、販売計画では個別の要素を詳細にチェックし、具体的な改善や対応策を検討する。このように、全体確認と個別チェックを役割ごとに使い分けることが、効果的な経営の基本となる。
企業の経営において、適切な「個別チェック」は非常に重要であり、会社全体の健全な方針と適切な経営判断を支えるものです。ここで述べられている「個別チェック」についてのポイントを簡潔にまとめます。
1. 個別チェックの意義
- 本当に効果的なチェックは、会社全体の会議や統一した数値の確認だけでは不十分であり、各商品、営業所、顧客単位での個別な確認とフィードバックが不可欠です。
- 個別チェックにより、各部署や担当者が抱える課題や成功点を具体的に理解し、改善・強化する方針を立てやすくなります。
2. 個別チェックの具体例
- 例として、優良企業のM社ではガソリンスタンドのマネージャーと社長が一対一で話し合い、各スタンドの状況を徹底的に検討しています。
- また、K社では、販売担当専務がセールスマンと一対一で出張先やスケジュールを詳しくチェックしています。このような密な個別のやりとりは、経営の精度を上げ、効果的な指導が可能となります。
3. 時系列的な検討の重要性
- チェックは表面的な数値や断面の確認にとどまらず、時系列での変化を見ることで、状況の改善傾向や問題の兆候を早期に把握できます。
- 時系列的な視点から「方針が正しいかどうか」を見極めることが大切で、方針の転換や維持の判断に繋がります。
4. 確認と個別チェックの役割
- 利益計画のような会社全体の確認は「全体を俯瞰」するために有用ですが、具体的な指導や方針変更の検討は個別チェックによる詳細な状況把握によって行います。
- これにより、現場に密着した実際的な対応ができるようになり、会社全体の方針に反映させやすくなります。
5. 効果的な個別チェックの方法
- 責任者や担当者と直接一対一で検討し、商品の売上、顧客の状況、営業所ごとの活動を徹底的に確認します。
- この一対一の形式は、実際の問題点や改善点を明らかにし、責任者の意識向上や課題解決を促進します。
このように、「個別チェック」により、会社全体の健全な方向性と、現場レベルでの対応力が高まります。
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