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会社の過去の功労者に対する処遇を忘れるな

熾烈な競争を勝ち抜き、生き残りを図る企業にとって、実力のある人材を見極めて適切に抜擢し、その力を存分に発揮させることの重要性は言うまでもない。

しかし、現実にはそれが容易に実現されることは少ない。年功序列やエスカレーター式の人事制度は、無能な者が重要なポジションに就く結果を招くと理解されていながらも、なお踏襲され続けている。

その結果として、その部門の業績が低迷し、会社全体のパフォーマンスを妨げる例は後を絶たない。さらに、部下たちは士気を失い、やる気を削がれ、時には退職する者まで出てくる。それにもかかわらず、無能な管理職をそのポジションから外すことができずにいるのが現状だ。

社長としては、会社がまだ名ばかりの存在だった頃、低賃金に耐えながら懸命に働き、現在の会社の基盤を築くことに貢献してくれた人物を、今になって能力不足を理由に役職から外すことはできないという思いがある。そのため、ある程度の問題は覚悟の上で、そのような人物を役職に就けているのが実情だ。

しかし、実際に任せてみると、予想以上に会社の業績に悪影響を及ぼす結果となる。ここに社長の苦悩が生じるわけだ。「このままではいけない」と分かっていながらも、具体的な行動を起こさず放置してしまう。こうしてズルズルと時間が過ぎる中で、会社の業績は停滞を続け、改善の兆しは見えないままになる。

ここで社長が真剣に考えなければならないのは、その人物の体面や個人的な感情を優先することで、会社の業績を低下させ、部下たちの士気を損なってもよいのか、という点だ。それが正しい選択であるはずがない。会社を存続させ、さらに発展させる責任を負う社長にとって、こうした判断は明らかに誤りと言える。

小さな利益や感情を捨て、大きな目的に従うべき時だ。昔の人も「小の虫を殺して大の虫を生かす」と言ったではないか。この決断は社長にとって非常に辛いものである。しかし、その苦しみに耐え、無能な人物を重要なポストから外す覚悟を持たなければならない。それが、会社の未来を守るために避けられない責務なのだ。

外された人物が会社に貢献した功労者であることは間違いない。そのため、十分な給与を保証することは必要だ。ただし、重要な役職には就けず、部下も持たせてはならない。部下をつけてしまえば、その影響で部下たちの士気が低下し、組織全体が腐敗してしまう恐れがあるからだ。

この場合、特に重要なのは社内からの批判をどう受け止め、対処するかという点だ。「仕事らしい仕事をしていないのに高い給与をもらっている」という声が必ず出るだろう。このような批判が組織内に広がれば、不満が募り、他の社員の士気にも悪影響を及ぼす可能性が高い。適切な説明や透明性のある対応が求められる。

こうした批判が出た際には、社長は毅然とした態度でこれを抑えるべきだ。「現在、その人物が仕事をしていないからといって批判するのは間違いだ。彼が過去に果たした貢献が、今日の報酬を正当化している。皆がこうして働ける環境があるのも、彼の尽力のおかげだ。自分自身の将来に置き換えて考えてみてほしい。

将来、君たちが会社に多大な貢献をし、高給を得る立場になった時に、後輩たちから『高い給与をもらっているだけで大して働いていない』と批判されたら、君たちはどう感じるだろうか? その時、過去の努力や成果が正当に評価されていないと感じるのではないか?」

会社の功労者に対して、目先の状況だけを見て批判することは許されない。それこそが、功労者に対する「礼」を尽くすということだ。過去の貢献は正当に評価し、報いるべきだ。しかし、同時に冷静な判断が求められる。将来の貢献が期待できないのであれば、重要な仕事から外すという決断を下す必要がある。このように過去と未来を明確に分けて考えることで、公平さと企業としての健全性を保つことができるのだ。

これを実行しなければ、会社全体が歪み、健全性を損なうことになる。ただし、この決断をもってすべてがきれいに解決するわけではない。どうしても割り切れない部分が残るものだ。それでも、完全な解決策が存在しないのが現実であることを理解しておくべきだ。社長という立場の本質は、こうした苦しみや葛藤に常に直面し、それを背負いながら会社を導く宿命を持つ存在だということだ。

会社の過去の功労者に対する処遇について、経営者としては複雑な決断が必要です。特に、かつて会社の成長に大きく貢献した社員が、現在の業績向上にとって適任ではなくなった場合の対応は慎重を要します。以下に、その際の対応方針の要点をまとめます。

1. 功労者としての貢献を評価する姿勢

  • 過去の貢献に報いる: その社員が会社の基礎を築く上で果たした役割を忘れず、感謝の意をもって報いることが重要です。十分な給与や待遇を提供し、功労者としての敬意を示すべきです。
  • 将来への貢献と役割の分離: 会社の現状と今後の発展を考えると、過去の功労者が現時点の重要な役職に不向きであれば、役職を外すことも視野に入れるべきです。

2. 社内の批判に対する対応

  • 功労者への敬意を促す教育: 他の社員が「今は仕事をしていないのに高給を受けている」と批判する場合は、過去の貢献に敬意を払うように社内教育を行いましょう。過去の功労者の存在が今の会社を支えているという点を伝えることが大切です。
  • 将来への心構えとしての教訓: 「自分が将来、同じ立場になったらどう思うか」という視点を持たせ、感謝と尊重の姿勢を育むことも重要です。

3. 貢献と適材適所のバランス

  • 功労者に配慮した配置転換: 将来の貢献が見込めない場合は、重要な役職や部下の指導から外し、別の役割に配置転換を行うことが得策です。配置転換においても、過去の貢献を尊重した給与や待遇を維持することが肝要です。
  • 無理に役職につけない: その役職に必要な能力や意欲が見込めない場合、無理に役職を与えることは避けるべきです。無理に部下を持たせれば、その部下がやる気を失ってしまう可能性もあるからです。

4. 割り切れない部分への対処

  • 割り切れない感情や葛藤の存在を認める: 社長として、功労者の処遇について完全に割り切ることが難しい場合があることを受け入れる必要があります。経営者としての判断に伴う葛藤や負担も、社長が果たすべき責務の一部であると考えましょう。

まとめ

過去の功労者への対応では、感謝と敬意をもってその貢献を評価しながらも、会社の持続的な発展を優先して冷静な判断を行うことが重要です。功労者に配慮しつつも、現在の業績に必要な体制と人材配置を確保するため、社長は柔軟かつ公平な姿勢で対応することが求められます。

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