前に「経営戦略篇」で「設備を持たないメーカー」の強みを述べ、本書では外注比率の増加が有利であることを数字を使って説明した。そして今、再び内外作の区分について取り上げることとなる。それほどまでに、外注を活用することは企業にとって極めて重要な意味を持つのだ。
外注の活用ほど、企業の安全性と収益性を同時に高める手段は存在しない。だからこそ、社長は自社の内外作区分に関して、明確な方針と具体的な目標を持つべきだ。
本書で推奨している内作「1」に対して外作「2」の比率は、あくまで最低限の基準と考えてほしい。実際、自動車や家電の組立メーカーでは、内作「1」に対して外作「4」程度の比率が一般的となっている。
外作比率に上限はない。極端な例を挙げるなら、外注が100%となり内作が完全に消滅した形態が「流通業者」だ。この事実を見れば、外注比率をどこまで高められるかが戦略次第であることが理解できるはずだ。
とはいえ、メーカーが流通業者に転換する必要はない。重要なのは、メーカーとしての主体性を維持しながら、安全性と収益性を高めるために外作比率を効果的に引き上げることだ。そのためには、適切な内外作比率の目標を設定し、長期的な外注工場整備計画を立て、その実現を目指すべきである。
外注工場整備において特に注意すべき点は、外注工場は可能な限り大型であるべきだという点だ。大規模な工場は、効率性や生産能力において小規模工場を大きく上回り、外注先としての安定性と競争力を高める鍵となる。
多くの企業では、外注工場に対する明確な方針が欠如しているのが現実だ。外注を担当する者も、単に「内作で不足する分を補うために外注する」だとか、「小規模な外注先のほうがコストが安い」という短期的な視点でしか捉えていない場合がほとんどだ。このような状況では、外注の活用が戦略的な手段ではなく、単なる応急処置にとどまってしまい、企業全体の競争力を高めることは難しい。
ここで、T社の事例を紹介しよう。この会社にも、外注工場に対する明確な方針は存在しなかった。ただ、増加する売上に対応するため、外注品の依存度が自然と高まっていったに過ぎない。
一方で、市場競争の激化を背景に、社長からはコストダウンの指示が出されていた。売上拡大とコスト削減という二つの課題を同時に抱えながらも、外注活用に関する長期的な計画や統一した戦略は見られなかった。これは、T社だけに限らず、多くの企業が直面する共通の課題と言えるだろう。
外注担当者にとって、外注工場の増加は当然の流れだった。しかし、コストダウンの方針に応えるため、小型の外注工場のほうが「ネットコスト」が低いという理由で、小型化を積極的に推進した。その結果、外注工場の数は加速度的に増えたものの、一つひとつの工場の規模は縮小し、零細化が進行していったのである。
この状況は、一見するとコスト削減に成功しているように見えるが、実際には多くの問題を引き起こしている。小型工場の増加は、管理コストの増大や品質のばらつきを招き、外注体制全体の効率を低下させる要因ともなり得るのだ。
その結果、品質は大きく低下し、納期の混乱が常態化した。さらに、材料や部品の支給、完成品の集荷に要する手間が増加し、社内の管理人員や受入検査のスタッフを増やさざるを得ない状況に陥った。
外注体制が零細化したことで、当初目指していたコスト削減どころか、むしろ運営全体の非効率化を招いてしまったのである。このような状況では、外注の活用が企業の強みではなく、むしろ負担となり、競争力を大きく損なう要因となってしまう。
私が訪問した際、混乱は頂点に達していた。普段は内部の問題には関与しない方針だが、品質と納期で顧客に多大な迷惑をかけている以上、これは「顧客サービス」の問題と捉え、介入せざるを得なかった。
私の勧告は「外注の大型化」だった。大型化すればコスト面での「ネット」は上がるが、それに見合う技術力や管理力を備えているのが条件だ。そして、ただの大型化ではなく、「自社よりも規模の大きい会社」を外注先として選び、思い切った推進を図るべきだと強調した。
折からの石油不況が追い風となり、外注大型化の方針は大きな成果を挙げた。新たに獲得した外注先は、T社の三倍の規模が二社、同等の規模が三社という布陣となったのである。
これらの外注先では、図面を渡し、商品説明書とラベルを支給するだけで、包装や梱包まで完了した状態で納品されるようになった。納入品は抜き取り検査を行うだけで済み、全てがスムーズに運ぶ体制が整った。
もちろん「ネット」は高いが、管理費が大幅に削減され、その結果、全体で30%のコスト削減が実現した。まさに「嘘のような本当」の成果が得られたのである。
さらに重要なメリットとして、従来の小型・零細外注は「オンリーさん」かそれに近い存在であり、外注とはいえ真の意味でのクッション機能を果たしていなかった点が挙げられる。
しかし、大型の外注先に切り替えたことで、相手の能力の一部を利用する形となり、売上変動に応じたクッション機能を果たすようになった。
つまり、相手の能力の20%しか利用していなければ、こちらが20%発注を減らしても、相手にとっては全体のたった4%の減少に過ぎない。これが大型外注の持つ強みであり、柔軟性の源となっている。
外注は大型とし、利用度をあまり高くしすぎないのが望ましい。ただし、利用度が低すぎると相手に「上得意」として扱ってもらえなくなる。理想的なのは、相手の能力の10%から30%を利用し、その範囲でナンバーワンの得意先となることだ。
外注政策は、我が社が生き残るための最重要課題の一つである。この点を深く認識し、真剣に取り組む必要がある。
繰り返し強調するが、「間に合わない分だけ外注する」「安いから外注する」といった安易な態度は断じて許されない。外注の増加は単なるコスト削減策ではなく、企業を守るための「企業防衛」そのものである。
企業の安全と成長を支える手段の一つとして、「内外作区分」があります。特に、外注の活用は、企業の安全性と収益性の両面で大きな利点があります。社長は自社の内外作の割合を明確にし、外注比率を高めることで得られるメリットを最大限に活かすべきです。
外注の重要性
- 内作と外作のバランス
外注比率の増加はコスト面や管理面で多くの利点があるため、可能な限り外注の割合を高めることが推奨されます。例えば、自動車や家電メーカーでは「内作1に対して外作4」ほどの比率が一般的です。 - 外注大型化のメリット
小型・零細の外注先に依存するよりも、規模が大きく管理体制が整った企業を外注先とするほうが、品質管理や納期の混乱を防ぎ、管理コストを削減できます。大型の外注先は技術力や管理力も備わっているため、外注品の品質を一定水準に保ちやすく、抜き取り検査のみで品質を保証できるケースもあります。 - クッション効果
大型の外注先に依頼する場合、自社の生産変動に柔軟に対応してもらえる余地が生まれます。例えば、外注先の生産能力の20%のみを利用する設定にすると、発注量が20%減少した場合でも外注先にとっては全体のわずか4%減に留まります。このように、需要変動に対するクッションが効くのです。
理想の外注方針
- 大型外注の選定
内製で不足する分を埋めるというだけでなく、長期的な外注先の選定が重要です。可能であれば、ナンバーワンの得意先として認識してもらえる20〜30%の利用度が理想です。 - 過度の依存を避ける
外注先の生産能力をフルに依存するのではなく、適度な余裕を持たせることで柔軟性と関係性を保つことが可能です。 - 安易な外注依存の回避
必要分のみを補うという短期的な視点ではなく、企業防衛として外注先を戦略的に活用することが不可欠です。
内外作のバランスと外注政策を長期的視野で検討することで、企業の安定と成長を図ることが可能です。
コメント