生産性についての基本的な説明はすでに述べた通りだ。この生産性の計算式を活用すれば、商品別や部門別の分析では見えない、企業全体の施策や活動の効率性を評価することができる。これは、「産出に対する投入の割合」という生産性の定義を、多様な施策や活動に応用することで実現される。
測定方法としては、生産性の算式を用い、分子に産出高、すなわち付加価値を、分母に投入高、つまり測定対象とする要素を設定する。この手法では、単年度の数値だけでは正確な評価が難しいため、少なくとも3年程度のデータを分析し、その傾向を把握するのが効果的だ。
総資本の生産性を測定する場合は、次の算式に数字を代入すれば求めることができる。
これを3年間にわたって測定し、その数値を比較することで、総資本の生産性が「上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのか」を把握できる。総資本利益率と同じ目的を持ちながらも、異なるニュアンスを持つ指標として機能する。同様の方法で、
という形式で算式を設定すれば、特定の対象の生産性を測定することが可能だ。ただし、本社ビルなどの大規模な固定資産を建設した場合、生産性の数値は一時的に急激に低下することがある。
「人」の生産性を測定する場合は、算式に分子と分母を適切に当てはめることで可能となる。これをさらに細分化し、間接部門ごとに分析すれば、どの部門の生産性が向上しているのか、または低下しているのかを把握できる。もし間違ったマネジメントによって管理人員を増加させれば、生産性は明確に低下する。そもそもマネジメントとは、管理の結果として付加価値を増加させるか、コストを削減することで生産性を向上させるために行うものである。生産性を下げる管理であれば、むしろ行わない方が賢明だ。このような視点から現状を評価できるのが、間接部門生産性という指標である。
間接部門の生産性が存在するならば、当然、直接部門の生産性も測定可能である。その算式は以下のようになる。
特定の直接部門の生産性を測定したい場合は、先の算式に対象部門の数値を代入すればよい。
直接部門の生産性を測るもう一つの方法として、以前に述べた「賃率ク」が挙げられる。これは直接工数の生産性を表し、いわば「時間生産性」とも呼べる指標である。
次に挙げるのは「賃金生産性」だ。その算式は以下の通りである。
賃金ではなく、人件費を用いても同様に測定が可能だ。この賃金生産性は、一般的にはその逆数が使われるケースが多い。その逆数が「労働分配率」と呼ばれるものである。
「付加価値の何%が賃金として消えていくか」という意味を持つのが労働分配率だ。ここまで読んできた方は気づいているかもしれないが、生産性とは、結局のところ「パーヘッド」の効率を測る指標である。
これまでさまざまな生産性の測定方法について述べてきたが、このような測定法がそのまま販売に関する分野では通用しなくなることを、しっかりと認識しておく必要がある。
セールスマンの生産性を測定する際に、
という算式を用いてセールスマン一人当たりの売上高を計算し、「値が大きいほど良い」と短絡的に考えると、大きな誤りを招くことになる。
確かに、企業の産出高は本来「売上高」ではなく「付加価値」であるが、自社内で生産性を測定する場合に付加価値率がほぼ一定であれば、売上高を代用として用いることは可能だ。ただし、その結果をどう解釈するかには慎重さが求められる。
セールスマン一人当たりの売上高が一定の限度を超えると、顧客へのサービスが行き届かなくなったり、一社あたりの訪問頻度が減少するリスクが生じる。その結果、競合他社にその隙を突かれてシェアを奪われ、売上高、すなわち市場占有率を低下させてしまう危険があるのだ。このような状況に陥れば、もはや占有率を拡大しようとする戦略は絵に描いた餅に過ぎなくなってしまう。
占有率を増大させるための作戦において、「競合を上回る顧客訪問回数」を確保することは絶対条件の一つだ。特に占有率が低い場合には、競合の2倍以上の訪問回数を実現する必要がある。この戦略を実行すれば、当然ながらセールスマン一人当たりの売上高は低下する。しかし、これを恐れていては占有率の増大など望むべくもなく、ひいては会社の成長や発展は不可能となる。競合を凌駕する活動量こそが、未来のシェア拡大と企業の成功につながる鍵なのである。
「なるほど、それは理解できるが、そうすることで売上は増加するかもしれない。しかし、単に売上を増やせば良いという話ではない。収益性が悪化してしまうのではないか」と懸念する読者もいるだろう。この点について、もう少し掘り下げて考えてみる必要がある。
例えば、売上高が20億円、人員が100名、そのうちセールスマンが10名いる会社を考える。この場合、販売生産性、つまりセールスマン一人当たりの売上高は次のように計算される。
20億円 ÷ 10名 = 2億円
これがセールスマン一人当たりの売上高となる。
セールスマンを5名増員し、1人当たりの売上高を年間4,000万円(従来の1人当たり売上高の5分の1)と仮定する。この場合の販売生産性は次のように計算される。
- 増員後のセールスマンの総人数:
10名 + 5名 = 15名 - 新たな売上高の計算:
増員した5名の売上高 = 4,000万円 × 5名 = 2億円
全体の売上高 = 従来の20億円 + 増員による2億円 = 22億円 - 増員後の販売生産性:
販売生産性 = 総売上高 ÷ セールスマン総人数 = 22億円 ÷ 15名
販売生産性 = 約1.47億円(1億4,700万円)
この結果から、販売生産性は従来の2億円から低下するが、売上規模の拡大に成功していることがわかる。
セールスマン一人当たりの売上高は大幅に減少するものの、総人員一人当たりの売上高は逆に5%上昇する。このように総人員の生産性が向上すれば、それに伴い収益性も向上し、最終的に利益の増大が期待できる。生産性向上の効果は、単に個別の指標にとどまらず、会社全体の効率改善や成長に直結する。
その場合の詳細な計算方法については、次章「セールスマンを増員したらどうなるか」を参照してほしい。ただし、結論を先に述べると、意外なほど少ない売上高の増加で費用対効果が見合う(ペイする)ことがわかる。さらに、ペイする範囲内であれば、たとえ利益が同水準であっても、占有率の向上という大きなメリットが得られる。この点が戦略的に重要なポイントである。
この例では、収益と利益が明らかに増加するとともに、占有率の向上も同時に達成されている。このような戦略を理解していないことが、日本の中小企業においてセールスマンの数が著しく少ない原因の一つだ。右のような数字や占有率の原理を知らないために、どれほどの売上増加の可能性を逸し、収益を減少させ、最終的に利益を低下させているか計り知れない。戦略的な人員配置の重要性を理解することが、中小企業の成長において欠かせない要素である。
事業経営において重要なのは、消極的に経費を削減することではなく、積極的に売上を伸ばし、利益を拡大する姿勢だ。経費削減は困難を伴う一方で、利益を増やすためのチャンスや手段は数多く存在する。この積極的なアプローチこそが、事業を成長させる原動力となる。
セールスマン一人当たりの売上高に固執するもう一つの誤りは、新商品の販売に関する考え方だ。新商品というものは、発売当初は簡単に売れるものではない。その理由は、新商品の存在や特徴、価格などをお客様一人ひとりに丁寧に説明する必要があるからだ。さらに、その説明を聞いたお客様が即座に購入を決断するとは限らず、時間を要することが多い。これが、新商品の販売が初期段階で難しいとされる理由である。
お客様の立場からすれば、使ったことのない商品をセールスマンの説明だけで即座に購入することはまずない。多くの場合、他社での使用実績を確認したり、自社で一定期間試用してみるなど、慎重な判断を下すプロセスを経る。このため、新商品の販売には時間がかかり、一人当たりの売上高を単純に追求するだけでは、その本来の価値やポテンシャルを評価することが難しくなる。
新商品の販売には、粘り強さと根気が不可欠だ。その努力はすぐに結果を生むものではないが、徐々に成果として現れ、売上が少しずつ伸びていく。そして、ある程度の売上に達すると、成長のスピードが加速し、本格的な「成長期」に入る。この段階では、新商品の市場での受容が進み、認知度や信頼が高まることで、売上が一気に拡大する可能性が高まる。
成長期までの期間は「発生期」と呼ばれるが、この発生期にセールスマン一人当たりの売上高ばかりを気にしていては、育つべき商品も育たなくなってしまう。新商品の売上については、初期段階では売上の絶対額ではなく、伸び率を基準に判断すべきだ。この基本を理解していなければ、新商品のポテンシャルを正しく評価できず、十分な成長を促すことも難しくなる。発生期の取り組みは、後の成長期での成功を大きく左右する重要なプロセスである。
新商品の売上を短期間で増大させるための方策として、その商品の売上高が特定の水準、例えば狙った地域での占有率が10%程度に達することを目指すとよい。この10%という占有率は、新商品が「限界商品」の状態から脱し、本格的に市場で受け入れられ始める転換点とされる。
そのため、この水準に達するまでは、セールスマン一人当たりの売上高を敢えて低い水準に抑え、販売活動を広範囲かつ集中的に行う必要がある。これにより、占有率を効率的に高め、市場での確固たる地位を築くことが可能となる。
この売上高の水準は、おおむねセールスマンの人件費の2倍に相当する付加価値を生む水準と考えられる。この程度の売上高であれば、セールスマンの人件費と販売費を十分に賄うことができるため、会社としては赤字を出すことなく運営を継続できる。この状態を維持すれば、販売活動を安心して展開することが可能となり、新商品の市場拡大に集中できる。会社にとっても、リスクを最小限に抑えた戦略的な販売活動が実現するのだ。
新商品の売上高が徐々に上昇し、やがてセールスマン一人当たりの売上高が前述の水準を超えるようになる。この時点で、一人当たりの売上高をその水準に抑えるには、セールスマンを増員する必要がある。増員を通じて販売力を強化することで、さらに市場での活動を広げることが可能となる。このプロセスが、新商品の売上増大に直結していく。販売力の拡大が成長の加速を支える鍵となるのだ。
このように、セールスマン一人当たりの売上高が人件費の3倍を超えるたびに増員を行い、それによって販売力をさらに強化する。このプロセスを繰り返すことで、占有率を着実に高めることができる。増員と販売力増強の循環は、持続的な市場拡大と競争優位の確立に寄与する重要な戦略といえる。
占有率が10%を超えた時点からは、セールスマンの増員ペースを緩め、一人当たりの売上高を増加させることで利益を上げるフェーズに移行する。この段階では、効率の向上と収益性の確保に重点を置くことで、新商品の収益貢献を最大化することができる。これが、新商品を最も短期間で市場に定着させ、育てるための秘訣である。
発売初期からセールスマン一人当たりの売上高に固執していては、売上の拡大やそれに伴う利益の増加をいつまでも実現することはできない。新商品の成長を阻害しないためには、初期段階では一人当たりの効率よりも、市場全体での認知拡大と占有率向上に注力する必要がある。
棚卸資産の生産性は以下の算式で表される。
棚卸資産生産性 = 売上高 ÷ 棚卸資産
この生産性は、社内の運営効率の観点から見れば高いほうが望ましい。しかし、販売に直結する部分であまりに高すぎると、在庫不足、すなわち「品切れ」のリスクが高まり、それが原因で販売機会を逃してしまう「売り損じ」が発生する可能性がある。適切なバランスを保つことが重要である。
したがって、棚卸資産の生産性については、原材料や仕掛品に関しては数値が大きいほうが望ましい。一方で、完成品については「適切な範囲内に収まる」ことが重要だ。その範囲とは、「品切れを起こさない在庫水準」を指し、販売機会を逃さないための最低限の在庫量を確保しつつ、過剰在庫を避けるバランスが求められる。この調整が、効率的かつ効果的な在庫管理の鍵となる。
ここで重要なのは、完成品(流通業者の場合には仕入商品)を会社内部だけで評価してはいけないという点だ。流通の観点を無視し、在庫を単に社内での効率性だけで判断すると、大きな誤りを招く可能性がある。流通業者や最終消費者まで含めたサプライチェーン全体での在庫状況や需要を考慮することが、適切な在庫管理と販売機会の最大化に欠かせない。
M社は靴の販売業を展開しており、複数のチェーン店を運営していた。そのうちの一店舗では、売り場が1階と2階に配置されていたが、3階の売上高が思わしくなかった。この問題の背景には、そもそも3階という立地特性が売上に不利である上に、3階で取り扱っている商品が1階と同じであったため、差別化が全くなされていなかったことがある。結果として、顧客にとって3階を利用する動機が乏しく、売上が低迷するのは当然の状況であった。
そこで、思い切って3階の売り場を大幅に変更し、その大部分をショルダーバッグで埋めてみた。するとこれが的中し、売上は一気に3倍に跳ね上がった。しかし、その成功も長くは続かず、しばらくすると再び売上が減少し始めたのである。この結果は、単に商品を入れ替えるだけでは持続的な成果を得るのが難しいことを示している。
不審に思い、売場を確認しに行ったところ、ショルダーバッグの陳列数が通常の半分程度に減少していた。これでは顧客の目に触れる商品の選択肢が少なくなり、売上が下がるのも当然である。陳列数の減少が売上低迷の原因であることが明白となった。適切な在庫と陳列の維持がいかに重要かを示す典型的な例と言える。
「何をしているんだ、早急に商品の補充をしなさい!」と売場の主任に指示を出したところ、予想外の返答が返ってきた。「補充の申請は既に行っていますが、社長から厳命されている最大在庫金額の制限を超えるため、補充が認められないのです」というのだ。
この状況は、在庫管理のルールが厳しすぎるあまり、売場の実態に即した補充ができなくなり、売上機会を逃している典型的な例と言える。効率を重視する在庫管理と、現場での販売状況を両立させる仕組みが求められる。
在庫が極端に少ない状況で、最大在庫金額をオーバーするとはどういうことか調べてみると、驚くべきことに、それは店舗の在庫ではなく、会社全体の総在庫が最大在庫金額を超えているという理由だった。これを知ったとき、私は呆れるばかりだった。この問題の根本原因は、現場の実情を無視した社長の厳命にある。売場の状況に合わない一律のルールが、結果的に販売機会を妨げているのだ。
「在庫をこれこれの金額以下に絶対に抑えろ」という杜撰な厳命のため、全社の総在庫金額を機械的に管理していた結果がこれだ。売上が振るわない店舗では在庫が過剰になり(回転率が悪化している状態)、一方で売上が好調な店舗では在庫が不足し(回転率が異常に高くなっている状態)、必要な補充ができなくなっていた。こうした不均衡が放置された結果、明らかに販売機会を失い、売上を自ら落とす事態を招いていたのである。
M社長のような「杜撰な指令」によって売上が阻害されている例は、世間には意外なほど多い。在庫基準を会社全体で一律に管理しようとすると、デッドストックや売上不振部門が過剰に在庫を抱え、ランニングストックや売上好調な店舗・商品の補充に必要な在庫が不足する事態に陥る。結果として、会社にとって最も重要な部分で柔軟な対応ができなくなり、成長の足かせとなる。在庫管理は、全体最適ではなく、局所的な実態を反映した柔軟な基準が必要である。
在庫基準は、会社全体で一括して管理するのではなく、個々の部門、店舗、商品群ごとに細分化して設定する必要がある。「そんな面倒なことを……」と思うかもしれないが、収益を上げるための活動は本来、手間がかかるものである。この「面倒」を避けると、必ずと言っていいほど売上減少や機会損失を招く。収益を最大化するためには、手間を惜しまない姿勢が不可欠であることを肝に銘じておくべきだ。
これは心構えとして述べたものであり、実際にはそれほど手間がかかるわけではない。一度在庫基準を細分化して設定してしまえば、後は年に一度見直す程度で十分だ。むしろ、こうした仕組みを導入することで、複雑な問題を未然に防ぎ、日常業務を簡略化する効果がある。さらに重要なのは、これによって収益低下を未然に防ぎ、会社の利益を守る大きな効果が得られることだ。面倒どころか、効率と成果を同時に向上させる手段となる。
何事においても、法則性がある事柄には基準を設定することで、設定に要した時間やコストの何百倍、いや何万倍もの時間をその後に節約することが可能となる。この「時間」とは単なる作業時間の短縮にとどまらず、収益の低下を防ぎ、さらには収益を増大させる結果をもたらす。基準設定は、一見手間に見えるが、長期的には効率化と利益向上の鍵となる重要な投資である。
売場に関連して触れておくと、売場効率を測定する指標としてよく使われるのが「売場の単位面積あたりの売上高」、いわゆる「坪あたりの売上高」である。この指標は、売場面積に対してどれだけの売上を上げているかを評価するもので、売場の運用効率を判断する基本的な基準の一つだ。
計算式は、いわゆる「パーヘッド」の考え方に基づいた生産性の算式となる。それは以下のように表される。
坪あたりの売上高 = 売上高 ÷ 売場面積
なお、売場面積の代わりに「陳列長さ」を用いることで、より陳列効率に焦点を当てた指標にすることも可能だ。この柔軟性によって、売場の特性に応じた効率性の評価ができる。
この場合も、「坪あたりの売上高」の値が大きければ大きいほど良いというわけではない。一定の水準を超えると、陳列されている商品の種類が不足し、「売り損じ」が発生するからである。このような場合には、陳列面積を拡大し、商品の多様化を図ることで「売り損じ」を防ぐ必要がある。
単位面積あたりの売上高は、高すぎても低すぎても、最終的には販売生産性を低下させる要因となる。適切なバランスを見極め、効率的な売場運営を行うことが、販売の成果を最大化する鍵となる。
販売に関連する生産性の指標として、「配送効率」というものがある。この指標は、配送業務の効率性を測定するものであり、具体的には以下のような形で表される。
- 配送1回あたりの売上高
- 配送走行キロあたりの売上高
これらの指標を用いることで、配送業務が売上にどれだけ貢献しているか、あるいはリソースの使用効率がどの程度かを評価することができる。これもまた、販売活動全体の生産性を向上させるための重要な視点となる。
ある問屋では、経費節約を目的に配送効率の向上を社長方針として強力に推進した結果、売上が1割以上も減少する事態に陥った。確かに配送効率そのものは改善されたが、その代償として配送サービスの質が低下し、小売店の店頭で品切れが発生するようになったのが原因だ。これでは、効率を追求するあまり、本来の目的である売上拡大や顧客満足を損なう「本末転倒」の結果と言わざるを得ない。効率化とサービスのバランスを取ることが重要である。
以上述べてきたように、販売におけるミクロ的な生産性に関しては、「高ければ高いほど良い」という一般的な通念はまったく通用しない。販売の現場では、生産性の数値が高すぎる場合に、かえって売り損じやサービスの質の低下を招き、結果として売上や顧客満足度を損なうリスクがある。適切なバランスと柔軟な対応が求められる分野であり、一律の基準ではなく状況に応じた判断が必要だ。
販売生産性においては、「高すぎても低すぎてもいけない」という特性が常に存在する。販売活動は「社外に対する活動」であるため、社内業務の生産性とは本質的に異なる性質を持つ。この違いをしっかりと理解しなければならない。過度に効率だけを追求することは、顧客満足や売上機会を損なうリスクを伴うため、「誤った指導」を避けることが極めて重要だ。販売生産性は、外部環境や顧客ニーズに適応した柔軟な戦略が鍵となる。
事業経営において重要なのは、「個々の生産性」ではなく「事業全体の生産性」である。個々の生産性を追求することが、必ずしも事業全体の成果や効率に直結するわけではない。この点を理解し、部分最適にとらわれず、全体最適の視点で経営判断を行う必要がある。個々の生産性が向上しても、それが事業全体のバランスを崩し、かえって利益や成長を阻害するケースも少なくない。全体を見渡した上で、最適な戦略を組み立てることが肝要だ。
生産性分析は、事業全体の効率を測るために不可欠であり、生産性の数値は単に「高ければ良い」というものではなく、会社全体の生産性向上を目指す際には、以下のような視点が求められます。
1. 生産性の基本計算
生産性は「産出に対する投入の割合」と定義され、分子に付加価値や成果、分母に投入された資源やコストを置くことで計算されます。これは会社の全体的な生産性だけでなく、部門別や商品別にも適用でき、継続的な分析が必要です。生産性を一年単位で見るよりも、三年程度の推移を観察することで傾向が分かりやすくなります。
2. さまざまな生産性の指標
- 総資本生産性:「付加価値 / 総資本」で算出し、資本の効率性を測定します。
- 物的生産性:「付加価値 / 物的投入(設備や資材)」で計算し、新たな設備導入がもたらす効率変化を測定します。
- 人的生産性:「付加価値 / 労働投入」で算出し、管理の増加によって生産性が向上しているかどうかを把握します。管理人員が増えれば生産性が下がりやすいため、注意が必要です。
3. 直接部門と間接部門の生産性
- 直接部門の生産性:「直接部門の付加価値 / 部門の人件費」を使って、生産の現場でどれだけ効率よく生産されているかを見ます。
- 間接部門の生産性:「間接部門の付加価値 / 間接部門の人件費」で計算し、管理部門が全体の生産性に貢献しているかを測ります。
4. 販売生産性とセールスマンの効率
販売生産性では、例えば「セールスマン一人当りの売上高」を単純に評価すると、顧客サービスが行き届かなくなり、競合他社にシェアを奪われるリスクが生じる場合があります。そのため、販売生産性は次のポイントを重視します。
- 顧客訪問頻度:競合よりも多くの訪問回数を確保し、占有率を向上させる。
- 新商品販売の生産性:初期には売上額ではなく、伸び率や顧客への浸透度を重視し、成長期に利益増大を図る。
5. 在庫基準の適切な管理
- 棚卸資産生産性:「付加価値 / 在庫総額」の算式で測定し、品切れリスクを避けながら在庫管理を行うことが重要です。例えば、特定の店舗や商品に在庫を集中するために、総在庫基準を設けず、個別の在庫基準を細分化して設定します。
6. 売場効率
「売場の単位面積当りの売上高」を算出する際は、販売効率が高すぎても売り損じが発生するため、陳列面積を広げるなど、商品多様化による損失回避が必要です。
7. 全体最適化の視点
会社の経営において重要なのは、個々の生産性を追求するだけでなく、事業全体の生産性向上を目指すことです。
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