付加価値率が高いほど経常利益が増加することは明らかだ。では、具体的にどれほど利益が増えるのか、逆に付加価値率が低下した場合にはどの程度減少するのか。その詳細は〈第40表〉に示されている。この表では、〈第38表〉で設定された目標値と同じデータを使用している。
付加価値率の変動によって生じる付加価値額の増減と同じだけ、経常利益も増減する。この点を理解していれば、わざわざこのような表を作る必要はない。
「増分」だけを計算すれば、それで事足りる。具体的には、次の式で求められる:
売上高 ×(42% – 40%)= 増分付加価値
これだけで瞬時に結果が出せるのだ。そして、経営者たるもの、この程度の計算を「一瞬」でできる能力が求められる。
付加価値率の変化によってもう一つ影響を受けるのが損益分岐点だ。付加価値率が上昇すれば損益分岐点は下がり、逆に付加価値率が低下すれば損益分岐点は上昇する。この関係は密接であり、経営判断において重要なポイントとなる。
付加価値率が経常利益に与える影響は極めて明快だ。その明快さゆえに、かえって経営者の思考を固定化させ、業績向上のチャンスを見逃してしまう例が少なくない。この固定観念が、さらなる成長への障壁となっている場合が多いのだ。
付加価値率が高いほうが会社全体の利益が大きくなるのは、あくまで他の条件が一定である場合に限られる。もし何らかの条件が変化すれば、付加価値率が高いことが必ずしも会社全体の利益増に繋がるとは限らない。この点を見落とすと、誤った判断を招く可能性がある。
これらの場合の主な例として、以下のような状況が挙げられる。
- 閑散期に低い付加価値率で販売を行った場合
- 値下げによって大幅な売上増が見込まれる場合
- 増加する売上を外注によって対応する場合
これらのケースでは、付加価値率の高さが必ずしも利益拡大に直結しないことがある。
このような場合に正しい判断を下すには、正確な計算が不可欠であり、その正確な計算こそ「増分計算」である。「付加価値率が高ければそれで良い」と短絡的に結論づけるのではなく、「会社全体としての利益がどう変化するか」を視野に入れて考えるべきだ。この視点を持つことが、本質的な経営判断を支える鍵となる。
むすび
付加価値率の増減が経常利益に与える影響は、その変動によって生じる増分付加価値と同額である。このシンプルな関係を正確に理解し、活用することが、的確な経営判断を支える基盤となる。
付加価値率の変化は、経常利益に直接影響を及ぼします。付加価値率が上がると、売上に対して得られる付加価値が増え、その増加分がそのまま経常利益の増加に寄与します。一方、付加価値率が下がると、同様に経常利益もその分だけ減少します。
付加価値率の変動による経常利益の変化
1. 付加価値率が上がる場合
- 付加価値率が上昇すると、同じ売上高に対して付加価値が増加し、その増加分が経常利益を押し上げます。
- 計算は単純で、売上高に対する付加価値率の上昇分をかけたものが、利益の増加分となります。
- 例えば、売上高が10億円で、付加価値率が5%上昇した場合、追加される付加価値は10億円 × 0.05 = 5千万円となり、これがそのまま経常利益の増加分になります。
2. 付加価値率が下がる場合
- 逆に、付加価値率が下がると、同じ売上に対する付加価値が減少し、その減少分が経常利益の減少につながります。
- たとえば、売上高が10億円で付加価値率が5%下がると、経常利益も5千万円減少します。
損益分岐点への影響
付加価値率の上昇は損益分岐点を下げ、下落は損益分岐点を上昇させます。つまり、付加価値率が上がれば、利益を確保するために必要な最低売上高が減り、逆に下がると必要な売上高が増えることになります。
ケース別での例外的な判断
付加価値率が下がっても、必ずしも経常利益が減少するとは限らないケースも存在します。以下のような状況では、付加価値率が下がっても会社全体の利益が上がる場合があります。
- 閑散期に低い付加価値率で販売したとき:売れ残りを避け、現金収入を確保するため。
- 値下げにより大幅な売上増が期待できるとき:販売数量の増加で利益が増える場合。
- 増大する売上を外注で賄うとき:増産コストを外注により抑えられる場合。
結論
付加価値率の増減による経常利益の変動は、その増減による付加価値の増減と同額です。付加価値率だけを基準にせず、「会社全体でどうなるか」を考慮し、増分計算を活用して正確に収益を予測することが重要です。
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