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売上状況分析

売上状況分析とは、端的に言えば「顧客の嗜好の変化」を把握するための手法だ。一見すると顧客の嗜好は変わらないように思えるが、実際には少しずつ、しかし確実に変化していく。その変化の方向性を正確に見極め、それに適応していかなければ、企業は存続できない。

その変化は緩やかであっても、一年も経てばかなり明確に表れるものだ。だからこそ、毎年一年分のデータを収集し、それを比較することが重要になる。

具体的な例を挙げてみよう。T社は家具を扱う問屋だが、ここ数年で業績が低迷し続けている。T社の方針は、回転率の高い商品を揃えることに重点を置いていた。回転率の高い商品といえば、必然的に低価格帯の商品が中心となる。しかし、その低価格帯商品の売上が最近になって伸び悩んでいるのが現状だ。

そこで「なるほど」と気づいたことがあった。それは、この方針には顧客の嗜好の変化がまったく考慮されていない、という点だ。

そこで、洋服タンスを例に取り、価格帯別の売上本数を二年間のデータで比較した年度別売上表を作成してみた。その結果が示しているのは、顧客の嗜好が明確に高級志向へと向かっているという事実だ。さらに念のため確認したところ、2万4千円以上の価格帯の商品は最近、品切れが多くなっていることが判明した。

顧客の嗜好の変化に気づかず、低価格帯の商品に注力していたことが、売上の低迷を招いた原因だった。「安価な商品が売れやすい」という単純な先入観だけで品揃えを決めていたのが誤りだったのだ。

重要なのは、過去の経験から生まれた先入観に頼るのではなく、「顧客の嗜好がどのように変化しているのか」を見極める姿勢だ。特にデザインや色柄といった要素は変化のスピードが速いため、意識していなくても自然と気づくことが多い。

しかし、ゆっくりと変化する要素、例えば価格帯の嗜好や、日本人の体格向上に伴うサイズの変化といったものは、見過ごしやすい。こうした変化は目立ちにくいため、注意深く観察しなければ気づかないことが多い。

味覚の嗜好の変化も同様の例だ。戦後から一貫して、顧客の嗜好は甘味の薄い方向へと変化してきた。しかし、多くの外食産業の経営者はこの変化に注意を払わず、料理の味付けをコックや板前任せにしてしまっている。その結果、甘味の強い料理を提供し続けることで、どれだけ売上を落としているか理解できていないのだ。

ある洋菓子メーカーのサポートをしていた際、駅で捕まえたタクシーの運転手が女性だった。行き先を告げると、「あそこのお菓子はみんなおいしいと言っていますよ。私もよく買って食べます」と話してくれた。その「おいしい」とは、甘味がちょうどよいという意味だった。一方で、他社の菓子については「甘すぎておいしくない」と評していた。顧客の嗜好が甘味控えめにシフトしていることを示す、貴重な生の声だった。

このような分析は、自社データだけでは得られない。他社製品との定期的な比較試食を行うことで味の違いを把握し、さらに興信所の調査などを活用して他社の売上動向を確認することで、味の嗜好と売上の関連性を探る手がかりをつかむべきだ。競合の状況を客観的に知ることで、自社製品の改善や方向性を見直す材料が得られるはずである。

「顧客の要求の変化をどうしたらつかめるか」という問いは、常に投げかけられるべき基本的なテーマである。この問いを忘れることなく、日々の経営や商品開発に取り組む姿勢が求められる。顧客の声や市場の動向に敏感であることが、企業の成長と存続の鍵となるからだ。

売上状況分析は、顧客の好みやニーズの変化を知り、会社がその変化に迅速に対応するための重要な分析です。顧客の嗜好は、目に見えにくいゆるやかな変化を伴って進みますが、一定の期間が経つと顕著に現れるため、毎年のデータ比較が欠かせません。

売上状況分析の重要ポイント

  1. データ収集と年次比較
  • 毎年、商品の売上状況を分析し、前年との比較を行うことで、顧客の嗜好がどのように変化しているかを把握します。特にプライスゾーン別の売上データを収集し、顧客がどの価格帯に関心を持っているか確認することが大切です。
  1. 例:価格帯の変化
  • T社の例では、洋服タンスの売上をプライスゾーン別に2年分比較したところ、顧客がより高価格帯の品を好むようになっていることが明らかになりました。このように、顧客の購買行動における高級志向の傾向や、品切れになっている商品の多さなどから、売上が伸び悩んだ原因を発見できる場合もあります。
  1. 先入観を排し、変化を見極める
  • 「安価な商品が売れやすい」という先入観に頼らず、データから顧客の変化を直接確認する姿勢が重要です。価格やサイズの変化は気付きにくいため、定期的な見直しを行います。
  1. 味や嗜好の変化
  • 味覚の変化は非常にゆるやかなため、業界全体の傾向を把握するのが難しいケースもあります。たとえば、外食産業や菓子業界では、甘味の好みが薄味に変わりつつあることを把握し、商品開発に反映することで競争力を維持できます。
  1. 他社との比較と顧客調査
  • 自社データだけでは顧客の好みの変化が見えにくい場合もあるため、他社製品との定期的な比較や試食などで、製品の特徴や人気度を把握します。また、外部の調査機関のデータも活用し、他社の売上成長や商品の特性から、顧客の変化に関するヒントを得るとよいでしょう。

売上状況分析のメリット

顧客のニーズの変化をいち早くキャッチし、それに合わせた商品やサービスを展開できれば、顧客満足度を向上させ、売上や市場シェアの維持・拡大にも貢献します。

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