企業の使命は「顧客にサービスを提供すること」に尽きる。しかしながら、その本質を見失い、顧客を軽視して自社の都合ばかりを優先する企業があまりにも多い。
戦後、民主主義を誤解した「エゴ」と自己主張の風潮に、高度成長期の人手不足が重なり、社員の機嫌を取るような姿勢や内部管理優先のマネジメント思想が、顧客軽視をさらに助長したのだろう。結果として、世の中は驚くほど「サービス不在」の時代に突入してしまった。
だからこそ、正しい姿勢――つまり、正しいサービスを提供する企業は、顧客から圧倒的な支持を得ることができる。優れたサービスを提供する企業は業績が良くなり、サービスの質を高めれば収益も増加する。さらに、そうした企業は、ある意味で過当競争の枠外に位置することが可能となるのだ。
例えばT社は、競合他社より1~2割ほど高い価格で商品を販売しながらも、その優位性を保ち続けている。流通業者からは「価格は高いが、何よりサービスが抜群だから選ぶ」という声が上がっているのだ。
「自社の売上が伸び悩んでいる原因は、サービスの質に問題があるのではないか」という疑問を、経営者は常に抱き続けるべきである。
自社のサービスのどこに問題があり、どう改善すべきかを知るには、経営者自らが顧客のもとを訪れ、直接意見を聞けばいい。顧客の求めるサービスを実践することで、会社は成長し、繁栄を手にすることができる。
顧客サービスとは、単に人的な対応を指すものではない。その最も基本となるのは、「顧客が求める商品や商品群をきちんと揃えていること」だ。
このような考え方を実践している企業は決して多くない。多くの企業は、自分たちの都合や視点に基づく「天動説」に従って商品を展開し、顧客の存在を忘れてしまっているのが現状だ。
顧客のニーズを知らずして、売上が伸びるはずがない。それにもかかわらず、この当たり前の事実を理解できていない企業が、業績不振に陥っているのだ。
だからこそ、私は経営者自身が顧客のもとを訪れ、直接意見を聞くことの重要性を強く訴え続けている。営業部門に任せきりにするだけでは不十分だ。実際には「任せる」という名の怠慢にすぎない場合が多いからだ。
営業部門は現在ある商品を一生懸命に販売してくれるが、「顧客のニーズに合った商品構成とは何か」を考えることまではしない。それこそが、経営者自身が果たすべき役割なのだ。
顧客サービスと収益は、企業の成長と存続に不可欠であり、そのバランスを維持することが重要です。この観点から、顧客サービスの改善が企業の収益に直接的に影響を及ぼす具体例を以下の三つの話で見ていきましょう。
第一話: B社のパンと洋菓子チェーン
B社長は売上不振に悩んでいましたが、顧客店舗への訪問で、配送時間や商品取り扱いに関する顧客の不満を知りました。店舗が求めるサービス改善(配送時間の早め、衛生面での配慮、追加注文対応)を実施したことで、売上が増加。顧客サービスの改善が、顧客満足度の向上と収益増大に直結した例です。
第二話: L社のふとん販売
L社は配送効率を重視するあまり、スーパーマーケットからの注文対応が遅れることがありました。その結果、主要顧客が競合企業へ流れてしまいましたが、配送納期を守る方針に変更したところ、顧客からの信頼が回復し、新たな顧客も増加しました。迅速な納品対応が、収益向上につながった実例です。
第三話: G社のプロパンガス販売
G社は新規顧客開拓に注力していたものの、成果が思うように出ませんでした。既存顧客へのサービスに集中することで、信頼を勝ち取り、既存顧客からの紹介で新たな得意先が増えました。既存顧客への満足度向上が自然と収益を押し上げる結果となりました。
まとめ:顧客サービスと収益の相互関係
- 顧客サービスが収益に与える影響: 顧客サービスの改善が収益を増大させ、顧客からの信頼と支持を得られる結果になります。
- 経営者の役割: 社長自ら顧客の声を直接聞き、サービスを改善することが企業成長の要因になります。
- 顧客ニーズの理解: 商品ラインナップも含め、顧客が本当に求めている商品やサービスを提供する姿勢が大切です。
サービス改善によって顧客満足度を高めることは、顧客と長期的な関係を築き、企業の競争優位を確立する鍵となるのです。
コメント