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経営計画をもて

実務の経験は十五年ほど積んできた。その中で最も厄介だったのは、社長が自分の方針を明確にしないことだった。どれだけ真剣に職務を全うしようとしても、社長の意図が見えてこなければ動きようがない。

やむを得ず、自分なりに社長の意図を推測し、行動に移すと、決まって関係部門から批判や反発が起こる。「また一倉が点数稼ぎをしている」といった声が飛ぶのだ。一生懸命やればやるほど周囲から浮き上がり、孤立していく。本音を言えば、どうにも手の打ちようがなかった。

もう一つ、最も大きな不安は「この会社の将来はどうなるのか」ということだった。会社の行く末が自分の人生にも大きく影響するというのに、社長からは将来についての展望が一切語られなかった。この不安は自分だけではなく、先輩や同僚たちの言葉の端々にもにじみ出ていた。

コンサルタントとしての活動を始めてから、その重要性を改めて痛感することになった。それが「経営計画」の必要性だ。自身の経験を通じて、経営計画の策定を社長に提案するようになった。社長自身の姿勢や方針を経営計画として明文化し、社員に協力を求めることが不可欠だという確信があったからだ。

驚かされたのは、経営計画発表会の場面だった。集まった幹部社員たちは、経営計画の意味や目的を全く理解しておらず、「呼ばれたから来た」というような表情で会場に足を踏み入れていた。

しかし、そんな社員たちの表情が、社長の説明を聞くうちに変わっていく。次第に真剣さが増し、最後には社長の顔を食い入るように見つめながら、一言一句を聞き逃すまいとする姿勢に変わっていった。それは、まさに社員たちが最も待ち望んでいた社長の言葉だったからだ。

この説明会を境に、社員が劇的に変わった例を何度も目の当たりにしてきた。ある会社のR社長は、「これほど驚いたことはない。会社全体の空気が一変し、意欲がものすごく高まった。今の私の新たな悩みは、このムードをどうやって持続させるかだ」と語っていた。しかし、社長のその心配は杞憂だった。

経営計画は、社員を変える前にまず社長自身を変える。なぜなら、経営計画を通じて社長は初めて自分の会社を本当の意味で理解するからだ。私の経験から言えば、会社全体を把握する手段は経営計画をおいて他にない、というのが実感である。

経営計画を通じて、社長は自分が何をすべきかを明確に理解し、同時に増収増益への具体的な道筋を掴むことができる。迷いが払拭され、自信を持って事業の舵を取ることが可能になるのだ。

事業の経営は、社長一人の力では成り立たない。得意先、仕入先、銀行といった外部の信用、そして内部の社員からの信頼と協力があって初めて成り立つものだ。

そのために必要な要件は二つある。第一に、経営計画を通じて自らの姿勢と方針を明確に示すこと。第二に、その計画を実現するために、社長自身が先頭に立って全力で取り組むことだ。

事業経営を通じて、何よりも忘れてはならないのが「お客様」の存在だ。それ以外のことを考える必要はない。お客様に対して正しいサービスを提供し続ける限り、増収増益は自然に達成される。増収増益こそが、社会への奉仕を実現し、会社を安定させ、株主に報い、そして社員の生活を安定させ向上させる原動力となるのだ。

経営計画は、企業の将来を見据え、社長が自らの方針と姿勢を明確にすることで、組織全体に方向性と自信をもたらすものです。社員にとって、社長の明確な意図は大きな意味を持ちます。経営計画は、社員の信頼を築くだけでなく、社長自身にも多くの気づきを与えます。経営計画により、社長は会社の現状と課題を正確に把握し、何を成すべきかが明確になり、経営への自信と方向性が得られます。


経営計画の発表と社員の変化

経営計画発表会は、社員に社長の思いと方針を伝える重要な場です。社員は、経営計画に込められた社長の言葉を通じて、自らの仕事の意義や、将来のビジョンを理解します。社長が真剣に考えた方針や計画が社員の意識に浸透し、会社全体の空気が一変し、意欲が高まることが多く見られます。

社長自身の変化

経営計画は、単に社員の意識を変えるだけでなく、社長自身の視点や考え方にも影響を与えます。計画の策定を通じて、自社の現状を把握し、必要な施策や方針が明確化され、社長としての自信が増し、迷いが払拭されます。経営計画を持つことは、社長が持続的な成長と安定を目指して舵を取るための羅針盤を持つことと同義です。

社会と会社に貢献する増収増益

増収増益の実現は、単に企業の利益を追求するためだけではなく、社会貢献、顧客への奉仕、株主や社員の安定に寄与します。この増収増益の基盤にあるのが「お客様へのサービス」であり、企業活動の目的は「顧客満足」にあります。正しいサービスを提供し、顧客満足を追求することで、持続的な収益が確保され、企業としての安定と発展がもたらされます。


経営計画は、社長と社員が同じ方向を向いて進むための不可欠なツールです。社長の方針と姿勢を明確にし、社員に共有することで、組織は結束し、成長への道筋が整います。

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