メーカーの主要な販売手法には、訪問販売、小売店への直接販売、卸売業者や商社を通じた販売、職場単位での販売、さらには通信販売などが挙げられる。
どの販売方法を選択するか、あるいは複数の方法をどう組み合わせるかを判断するのは、経営者自身が果たすべき重要な責務だ。この決定を販売担当役員や販売部長に一任してしまうべきではない。なぜなら、これこそが事業を前進させる原動力となるからだ。
「自分は技術者だから販売のことは分からない」と言って片付けている経営者もいるが、これは大きな誤りだと言わざるを得ない。そのような態度は、明らかな認識不足であり、問題の本質を見誤っている証拠だ。このような考え方では、事業を軌道に乗せることなど到底不可能だと心得るべきだ。
この手の経営者が口にする「販売」とは、実際には「商談」を指しているに過ぎない。だが、社長はセールスマンではないのだから、商談そのものをこなす必要はない。商談はあくまで販売プロセスの一部でしかなく、全体像から見ればほんの一端に過ぎないのだ。
経営者が担うべき「販売」とは、価格戦略の策定、市場戦略に基づく販売網の構築、販売促進施策の展開、そして販売活動を支える体制の構築などを指す。これこそが事業の根幹を支えるものであり、本書の主題とも密接に結びつく重要な課題である。
販売とは極めて広範な領域に及び、各方針や活動を的確に決定し、推進する必要がある。そのためには、誤りのない方針と活動を導くための原則や留意点を理解しなければならない。本書では、それらについて詳しく述べることにする。
しかし、これらの原則や留意点を自社の販売活動に的確に応用できるかどうかは、経営者自身が顧客を訪問し、直接その声に耳を傾けるかどうかにかかっている。現場の声をどれだけ深く理解するかが、成功の鍵となるのだ。
販売方式を決めることは、事業経営の基盤となる重要な要素です。以下に、各販売方式の特徴と組み合わせの考え方を述べ、販売方式決定に際しての重要なポイントを整理します。
1. 販売方式の特徴
- 訪問販売:顧客と直接対話できるため、商品説明やニーズの確認がしやすい反面、訪問時間と労力がかかります。高価な商品や専門知識が必要な商品に向いています。
- 小売店への直売:商品を店舗に直接供給することで、流通の中間を省略し、ブランドの認知を高めやすい利点がありますが、配達や在庫管理のコストがかかります。
- 問屋・商社への販売:商社や問屋を通すと、多くの小売店に迅速に商品が広がりますが、自社ブランドのアピール力が弱まる可能性があります。大手流通網を持つ企業には効率的です。
- 職域販売:企業内販売や団体向けの販売で、安定した取引先を得やすいものの、職域の制限により市場が限定的です。
- 通信販売:オンライン販売やカタログ販売で、多くの顧客に商品を届けやすい手法です。市場は広がりやすいものの、顧客との直接対話ができないため、商品説明が重要です。
2. 販売方式の組み合わせ
顧客層、地域、商品特性に応じて、複数の販売方式を組み合わせることで、幅広い市場に対応できます。例えば、高級品は訪問販売や小売店直売でブランド価値を高めつつ、一般向け商品は商社や通信販売で多くの消費者に届ける、といったように、ターゲットごとに適切な方式を選ぶことが重要です。
3. 社長が決定すべき理由
販売方式は会社の成長や収益性に直接関わるため、販売方式の決定を社長自らが行うべきです。単なる販売担当者に任せてしまうと、経営目標に合致しない方式を選び、長期的な成長に結びつかない可能性があるからです。また、販売の効果を最大限に引き出すには、価格政策、市場戦略、顧客ニーズの把握といった幅広い視点が不可欠です。
4. 実際の市場情報に基づく調整
得意先を訪問し、顧客から直接情報を収集することで、実際の市場ニーズに基づいた販売戦略を構築できます。市場の声を反映させた方針をもとに、社長が主導することで、実効性のある販売体制が作り上げられます。
結論
販売方式の決定は社長の役割であり、商品の性質、顧客層、市場状況を総合的に考慮して最適な方式を選ぶことが重要です。この判断が誤りのない経営の推進力となり、会社の持続的成長に大きく貢献します。
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