MENU

いくらの占有率を手に入れたらいいか

占有率を、その程度に応じて分類すると、以下のように整理できる。ただし、多様な要因が絡み合うため、これが絶対的な基準とは言えないが、一般的な目安として参考にしてほしい。

  • 独占的占有率:70%以上
  • 主導的占有率:40%以上
  • 不安定な一流:25%以上
  • 限界的占有率:10%以下(または首位の3分の1以下)

このように考えることができるだろう。

「独占的占有率」とは、その名の通り、他を圧倒する強力な立場を意味する。ただし、それが必ずしも絶対的な優位性を保証するわけではない。なぜなら、こうした占有率に達すると、競合他社が対抗する意欲を失い、競争そのものがほとんど存在しなくなる状況に陥ることも珍しくないからだ。

その結果、安易な現状維持に陥りがちで、革新の意欲を失ったり、顧客に対する姿勢が傲慢になるケースが目立つ。こうした態度が原因で、流通業者から敬遠される状況も少なくない。

流通業者の立場からすれば、もし新たに品質の優れた商品を提供し、サービス対応の良い企業が登場すれば、乗り換えることも厭わないという心理が働く。こうした状況では、占有率を大きく削られるリスクが常に付きまとっていると言える。

A社長はこう言う。「閑散期を補う商品として、M社の商品が候補に挙がっている。これを扱いたい気持ちはあるが、相手は文字通り占有率100%を誇っている。ここまで強大な相手では、到底勝負にならない。諦めるしかないかもしれない」と。

私は「そういう商品こそ挑戦する価値がある。むしろ手を出すべきだ」と勧め、その理由を詳しく説明した。A社長は私の意見に勇気づけられ、この商品に本格的に取り組む決断をした。

結果は驚くほど好調で、流通業者が次々と食いついてきた。A社長は勢いづき、「早く30%の占有率を確保したい」と意気込んでいた。「主導的占有率」とは、その市場で主導権を握るための重要なポイントとなる占有率のことを指す。

プライス・リーダーとして市場の価格設定を主導できるのも、この占有率を持つ企業の特権だ。この水準に達していれば、自らの戦略や姿勢を堅持する限り、競合他社を寄せつけないばかりか、占有率をさらに拡大することも十分可能だと言える。

とはいえ、この占有率に達したからといって安心できるわけではなく、むしろ不安定な地位とも言える。占有率で上位に位置する企業が存在すれば、その企業から圧力を受ける可能性が高い。また、自身が業界トップである場合でも、2位や3位の企業との占有率の差はごく僅かであることが一般的で、競争が激化するリスクを常に抱えている。

この占有率の段階では、一騎打ちや三つ巴、あるいは四つ巴の熾烈な争いが繰り広げられているのが通常だ。少しでも油断すれば、占有率が一気に低下する危険性が高く、非常に厳しい立場に置かれる。競争が苛烈な中で、常に警戒を怠らない戦略が求められる占有率だと言える。

だからこそ、市場情報の不足は致命的だ。情報が欠ければ戦略の判断を誤り、攻撃目標を見誤ったり、予期せぬところで致命的な打撃を受ける危険が生じる。特に、下位から急速に勢いを増してきたバイタリティあふれる競合に対しては、常に注意を払って監視する必要がある。そのような相手を軽視すれば、一瞬で状況を覆されることもあり得る。

厳しい競争を乗り越えながら占有率を着実に上昇させ、まずは30%以上の占有率を確保することが重要だ。これは40%の主導的占有率を達成するための足場であり、この段階で他社を引き離すことが不可欠だ。ここを突破できれば、さらなる市場支配に向けた基盤が整うと言える。

「限界的占有率」とは、この水準では市場での生存が極めて困難な状態を指す。知名度が低いため、売上の拡大はほぼ望めず、収益性も著しく悪いのが特徴だ。この占有率では競争力を維持するのは難しく、撤退や事業転換を余儀なくされる場合も多い。

限界的な立場にある生産者が生き残るためには、市場をさらに細分化し、取り扱う商品を厳選して、全精力をその販売活動に注ぐ以外に道はない。こうして、なんとか生き残りに必要な占有率を確保するのである。この状況では、社長自らが販売の最前線に立ち、既存の得意先への売上拡大を図るとともに、新規顧客の開拓にも全力を尽くす必要がある。

この段階では、社長はまさにセールスマンそのものだ。これは創業期の社長がほぼ例外なく経験することであり、原点とも言える役割である。こうした地道な努力を通じて、小さな地域での必要占有率を一つ一つ確保し、それを積み重ねていく。最終的には、自社が生存可能な規模の市場領域を築き上げることが目標となる。

しかし、多くの限界生産者はこの基本原則に反し、売上が思うように伸びない原因を販売地域の狭さに求めがちだ。その結果、無理に販売地域を拡大しようとする。

このような戦略では、かえって占有率の確保が一層難しくなる。もう一つの典型的な誤りは、大きな市場なら売れるという安易な考えから、東京や大阪といった主要都市に進出することだ。しかし、これはまるでプロレスの「バトルロイヤル」に素人が飛び込むようなもので、リングに足を踏み入れた瞬間に競争の激しさに押しつぶされ、あっという間に退場を余儀なくされるような結果を招く。

結局のところ、リングの外でウロウロするだけに終わるのが関の山だ。小規模な企業が無理をして東京に営業所を構えても、せいぜい同じような限界的な生産者を相手にする程度にとどまる。さらに、得意先の多くは東京近郊の三流業者に限られ、大きな成果を上げることはほとんど期待できないのが現実だ。

「リングの外でウロウロしている」というのは、まさにこの状況を指している。実力が伴わないまま見栄を張ったり、大手企業のやり方をただ模倣しようとしても、うまくいくはずがない。自社の実力を冷静に見極め、身の丈に合った戦略を練ることが重要なのだ。

「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」ということわざが示す通り、自らの実力や規模に見合った行動を取ることが肝要だ。限界生産者は、無理をして大手の真似をするのではなく、自分たちの分をしっかりと見極め、その範囲で適切な市場戦略を構築することが求められる。それが、生き残りと成長の鍵となる。

市場占有率は、対象とする地域によって異なるものだ。「当社は全国規模では限界生産者に過ぎなくても、市場を細分化して考えると、関東地方では限界的な立場を脱し、県内シェアでは不安定ながら一流の地位にあり、さらに特定の都市では主導的占有率を確保している」という状況が成り立つ場合もある。このように、地域ごとに戦略を練り直すことで、占有率を有効に高める道が見えてくるのである。

それぞれの占有率は、その地域での市場における地位を反映しており、その地位に応じた市場原理が働くのが現実だ。だからこそ、経営者たる者は、市場占有率に関する正しい知識を備え、それを細分化の原理に基づいて分析することが不可欠だ。その上で、自社の状況に適した市場戦略をどう展開していくか、明確で一貫した方針を持つことが求められる。これが企業の成長と生存を左右する鍵となるのである。

しかし、多くの企業では市場占有率に対する認識が極めて不足しているのが現状だ。その最も明確な例が、売上高を「対前年比伸び率」という単純な指標で捉えていることだ。この見方では市場全体の動向や競争環境を無視しており、自社の実際の市場地位や競争力を正確に把握することは難しい。市場占有率という視点が欠けていることで、戦略の方向性を誤るリスクが高まるのである。

自社の売上高の伸び率が業界全体の伸び率を下回っている場合、それは実質的に市場占有率が低下していることを意味する。つまり、数字上は売上高が増えているように見えても、業界全体の成長に追いつけていないため、実態としては競争力が弱まり、シェアを失っている状態と言える。売上高の絶対値だけに目を奪われず、市場全体の動きとの相対的な位置を常に確認することが重要だ。

自社だけの売上高の伸び率を指標として評価するのは、極めて無意味である。この視点では市場全体の成長や競争環境を完全に見落としてしまい、誤った判断や戦略に陥る危険性が高い。売上高を評価する際には、必ず業界全体や市場全体の動向を基準に据え、相対的なポジションを把握することが不可欠だ。こうした浅い考え方は決して採用すべきではない。

売上高を単なる絶対値ではなく、市場占有率に置き換え、その数値を細分化の理論に基づいて分析することで、初めて自社が置かれている立場や、現行の戦略の適否が明確になる。このような視点からの検討は、単なる現状把握にとどまらず、新しい市場戦略を立案するための貴重な情報源となる。市場占有率を軸にした分析が、より現実的で効果的な経営判断を可能にするのである。

市場戦略とは、市場占有率の原理を土台に、自社の戦力に見合った市場を適切に細分化し、その地域ごとに戦略を展開することに他ならない。これが、いわゆる「局地戦略」である。局地戦略では、限られたリソースを集中投入し、特定の地域で競争優位を確立することを目指す。このように、全体ではなく局所に焦点を当てることで、効率的かつ効果的な成果を生み出すことが可能となる。

たとえ全国で第一位の占有率を誇る企業であっても、市場を地域ごとに細分化すれば、その占有率は地域によってばらつきが生じる。そして、その地域における占有率に応じた市場原理が作用する以上、どの地域でも安閑としている余裕はない。各地域ごとに異なる占有率に基づき、状況に適応した地域戦略を練り上げ、実行していく必要がある。全国的な成功があっても、地域での競争を軽視すれば、全体の地位が揺らぐ危険がある。

占有率の低い業者の視点から見ると、大手企業といえども、すべての地域に十分なリソースを割くことはできず、多くの死角や盲点が存在する。これらの弱点を巧みに突き、先制攻撃を仕掛けることで、局地戦に勝利する道が開ける。こうして特定地域での地位を確立し、生き残ることができれば、その地域での基盤をもとに力を蓄え、次の地域へと攻勢を広げていく戦略が可能となる。局地戦の積み重ねが、やがて全体戦略の成功につながるのである。

たとえ現時点で規模が小さくても、大手企業よりも優れた戦略を持ち、それを地域ごとに的確に展開すれば、局地戦で次々と勝利を収めることが可能だ。その結果、占有率を徐々に拡大し、大手を追い抜いて市場のトップに立つことも夢ではない。鍵となるのは、柔軟かつ巧妙な戦略を武器に、限られたリソースを最大限に活用することにある。規模の大小ではなく、戦略の優劣が勝敗を分ける局面が多いのだ。

市場占有率の重要性について、企業が目指すべき占有率の基準は以下のように分類できます。

  1. 独占的占有率(70%以上)
    これは市場で圧倒的なシェアを持つ状態です。競争相手がほぼいない状況で、他社が容易に競争できないため、優位性を持っています。しかし、独占的占有率を持つ企業は、革新や顧客対応に怠慢になりやすく、流通業者が競合に乗り換えるリスクもあるため、警戒が必要です。
  2. 主導的占有率(40%以上)
    市場で主導権を握り、プライス・リーダーとして他社をリードできる占有率です。この位置にいる企業は、価格設定や市場の方向性に影響を与えることができます。市場の強い立場を維持し、さらなるシェア拡大が可能です。
  3. 不安定な一流(25%以上)
    知名度や顧客の認識が高まり、一定のシェアを持ちますが、依然として市場での競争は激しく、占有率の低下のリスクも存在します。この段階では、競争相手からの圧力が強く、常に市場動向を把握していないと不安定な地位となる可能性があります。
  4. 限界的占有率(10%以下)
    これは市場にほとんど認知されていない企業の占有率です。収益性が低く、売上の拡大も非常に困難な状況です。限界生産者や限界商品に該当する企業は、特定の地域やニッチな市場に絞り込み、販売努力を集中する必要があります。戦力が限られているため、大きな市場に進出することは戦略的に不適切です。

いくらの占有率を目指すべきか?

目指すべき占有率は、企業の規模、リソース、戦略によって異なりますが、基本的には自社の力を過信せず、現実的に市場戦略を立てて、段階的に占有率を拡大していくことが大切です。特に市場細分化により特定の地域やセグメントで占有率を高め、最終的に全国的なシェア拡大を目指すことが理想的です。

  • 限界的占有率を持つ企業は、まずは小さな地域やニッチ市場で戦力を集中し、占有率を高めることが必要です。
  • 主導的占有率を持つ企業は、さらなる占有率拡大を狙い、市場の主導権を維持し続けるために革新や顧客サービスを強化すべきです。
  • 独占的占有率を目指す企業は、優位性を失わないように市場の動向を常に監視し、競争相手に隙を見せない戦略を取ることが重要です。

どの占有率を目指すかは、企業がどの市場で競争し、どのように戦力を集中させるかによって決まります。市場占有率は企業の競争力を左右する重要な要素であり、戦略的に積み重ねていくべきです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次