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事業経営に不可欠な8つの目標

事業経営において、目標設定は成功のための羅針盤であり、企業の持続的な成長と安定を支える基盤となる。

しかし、目標は単なる数値目標ではなく、経営全体の指針として多様な視点を統合し、具体的かつ現実的に設定される必要がある。

本記事では、事業経営に欠かせない8つの重要な目標を提示し、それぞれの意義と実践に向けた要点を掘り下げて解説します。

これらの目標は、市場での地位確保から社員の処遇まで多岐にわたり、経営者が自らの意思と責任をもって取り組むべき指針である。

目次

目標設定を行うべき8要素

目標は、事業の経営を成功に導くために欠かせない多様な活動において明確に設定されるべきものである。この点を踏まえた上で、特に重要な要素として、以下の八つを挙げる。

  1. 市場の地位
  2. 利益
  3. 革新
  4. 生産性
  5. 人的資源
  6. 物的資源
  7. 資金
  8. 社員の処遇

以上の八つを基軸とし、これらをどのように実現していくのかを深く検討することが、経営の要諦といえるだろう。

1. 市場の地位

まず第一に挙げるのは「市場の地位」である。これは、企業が市場で占める占有率ランクを指す。この目標を最優先に据えることには深い理由がある。

経営戦略の要点として繰り返し強調されるように、市場での占有率を確保することが、企業が存続し続けるための絶対条件だからだ。

市場の地位は、単なる数字や順位以上の意味を持つ。それは、企業が競争環境においてどの程度の影響力を持ち、どれだけの顧客に支持されているかを示す指標でもある。

このため、経営の最重要課題として、他のすべての目標に先んじて考慮すべきものなのである。

売上高が年々順調に伸びているという事実に安堵してはいけない。なぜなら、競合他社がそれ以上に成長を遂げていれば、結果として自社の市場の地位は下降するからだ。

市場の地位は、単なる売上高の増加では測れない。それは、市場全体における自社の相対的な位置によって決まる。

競争環境が激化する中で、たとえ売上が伸びていても、他社が自社を凌駕するスピードで拡大している場合には、シェアの減少やブランドの影響力低下といった危険が待ち受けている。

したがって、成長の絶対値を見るだけでは不十分であり、競合他社との相対的な比較を常に行いながら、市場全体における自社のポジショニングを適切に維持・向上させる戦略が求められるのである。

社長の関心は常に「他社と比較してどうか」に向けられるべきだ。業界の成長率より自社の成長率が低ければ、市場の地位は低下する。これを見落とせば、知らぬ間に占有率が落ちる危険がある。

したがって、売上目標は最低限、占有率の維持を基準とすべきであり、さらに意欲的に占有率の向上を目指すべきである。

占有率の設定

占有率目標の期間

占有率の目標設定には、まず長期的な視点が必要だ。「五年後に占有率をいくらにするか」を明確にし、その目標を基に、毎年や来期の具体的な目標を決めていくべきである。

対象の多角化

占有率の対象となる市場は、どの範囲で見るべきかが重要だ。「国内占有率70%で、世界占有率30%」といったように、対象は複数にわたる場合が多い。

したがって、占有率の対象を一つに限定せず、多角的に捉えることが望ましい。

占有率は、事業推進の戦略をどの市場に向けて展開するかという観点で考えるべきだ。「当県の占有率がいくらで、それが当地方ではどれくらいに相当し、さらに東日本全体でどの程度になるか」といった多層的な見方が必要である。

例えば、「県内占有率を二年後に30%、五年後に当地方で20%に引き上げる」「全国占有率は三年後に10%以上を目指し、その際主要商品Aで30%、Bで20%以上を確保する」といった明確な戦略目標を設定することが重要だ。このように具体的な目標を示すことで、社長の意図を正確に社員へ伝えることができる。

業界規模の調査

しかし、占有率を把握するには、業界全体の規模、つまり売上総額を知る必要がある。一見すると難しそうだが、実際にはそれほど複雑ではなく、意外と簡単に見積もることができる。

正確な数字が分からなくても、「大よその見当」で十分だ。公式データがなくても、主要な流通業者に問い合わせたり、興信所を通じて同業者の情報を調査するなどの方法で、おおよその規模を把握することができる。

この程度の努力ができなければ、占有率を議論する以前の問題である。

2. 利益

次に重要なのは「利益」を目標に据えることである。会社は、いかなる状況でも決して倒産させてはならない。

倒産は多くの人々に迷惑をかけるだけでなく、会社が担うべき「社会的責任」を果たせなくなるからだ。

その社会的責任とは、第一に「社会に富を貢献すること」、第二に「社員の生活を保証すること」を指す。この責任は極めて重大であり、これを自覚する限り、社長が安易な経営態度を取ることは決して許されない。

利益の捉え方:保険的費用・事業存続費である

「会社の存続」という至上命令を果たすためには、利益が絶対に必要だ。事業を継続することは容易ではなく、過当競争、不況、陳腐化、資源不足、天災地変といったさまざまな危機が次々と襲ってくるからである。

これらの危険に直面した際、もし利益がなければ、瞬く間に赤字に転落し、倒産の道を辿ることになる。利益があるからこそ、危機を乗り越え、時間を稼ぎながら事業の再整備を図ることができるのだ。

こうして考えると、会社にとって「儲け」という概念はもはや存在しない。利益とは、事業を破綻から守るための保険としての役割を果たすものだからである。

この意味で、利益の本質は「事業存続費」にほかならない。確かに経済学上の利潤や会計学上の利益という概念は存在する。

しかし、事業経営の観点から言えば、「利益」というものは独立した存在ではなく、事業を継続させるための必然的な要素に過ぎないのだ。

利益が事業存続費である以上、多ければ多いほど良いのは言うまでもない。しかし、現実的に考えると、まず問うべきは「最小限、ギリギリのところでどれだけの利益が必要か」という点である。

これは、火災保険と同じ考え方だ。万一火災に遭ったときの備えとして保険金は多いに越したことはないが、現実には「最小限、どれだけの保険が必要か」を考えるのと全く同じである。

社長が最優先すべきは、事業を存続させるための「最小限の利益」を確保することだ。

経済学が唱える「事業は利益を最大化するために行動する」という理論は、あくまで経済学上の話であり、経営学の実践には当てはまらない。

なぜなら、現実の経営において「最大限の利益」を追求する考え方を導入するのは、明らかに誤りだからである。

その理由は、企業があげられる最大限の利益は、実際には企業が必要とする最小限の利益を大きく下回ることが多い、という厳しい現実があるからだ。

「できるだけ利益をあげようと頑張ったが、これしか出なかった」では済まされない。それは、「できるだけ頑張ったが、会社はつぶれてしまった」では到底許されないのと同じ理屈だ。このことをしっかり心得ておくべきである。

最小限利益

では、その最小限利益とは具体的にどれくらいなのだろうか。これは理論ではなく、現実の問題として考えるべきだ。一つの指標として、「従業員一人当たりの税引前利益」を基準に考えると分かりやすい。(税引前利益は経常利益とほとんど差がないため、経常利益で考えても問題はない。)

例えば、一人当たり30万円の税引前利益を想定してみよう。(詳細は第1表を参照。)この金額から法人税約40%と地方税15%を支払うと、合計16万5千円が税金として差し引かれる。残る税引後利益は13万5千円となる。

さらに、この13万5千円から配当金2万円と役員賞与1万円、計3万円を支出すると、最終的に内部留保として残るのは10万5千円になる。この内部留保が事業の再投資や予備費として機能するが、もしこの利益が不足すれば、事業の継続性に大きなリスクが生じることになる。

付加価値の源泉(流通業者の場合は粗利益)が翌年も同水準にとどまった場合、特に人件費の上昇が見込まれると、たちまちその増加分を賄えなくなり、赤字に転落する危険性がある。このような状況は常に起こり得るため、慎重な利益計画が必要だ。

たった一年の業績停滞で赤字に転落するようでは、安定経営は望めない。少なくとも一年程度の業績停滞に耐えられるだけの利益を確保する必要がある。その基準として、第1表の計算式によれば、一人当たり100万円の利益が目安となる。この100万円でさえ、インフレの影響を受け、年を追うごとに高い水準へ修正し続ける必要があるのだ。

一人当たり100万円の経常利益が必要だとしても、現在一人当たり10万円や20万円しか利益を上げていない場合、いきなり100万円を目指すのは現実的ではない。段階的な目標設定と計画的な取り組みが求められる。

そのため、三年から五年後に一人当たり100万円の経常利益を達成することを目標とし、まず中間目標として40万円を設定するのが現実的だ。このように段階的に目標を引き上げていくアプローチが、実践的かつ効果的である。

3. 革新

三番目は「革新」の目標である。

革新とは、企業の経済的成果を向上させるための構造的変革を指す。企業の収益は、基本的にその事業構造によって決定されるものであり、単なる能率向上や合理化だけでは左右されないことは、「経営戦略篇」で既に述べた通りだ。

事業構造の変革こそ、経営計画の「核」である。社長は、高収益かつ安定した経営を実現するために、自社の事業構造をどのように設計すべきかを徹底的に考え抜き、決定しなければならない。しかし、それは社長室にこもって考えているだけでは得られない答えだ。自ら市場に出て、顧客の要求を見極め、その要求をどのように満たすべきかを具体的に判断することで初めて見えてくるのである。

Yレストランが追求した革新の鍵は「」だった。Y社長は努力家で、日夜事業経営に全力を尽くしていたにもかかわらず、業績は低迷し続けていた。毎月、5つの店舗の数字を細かく検討し、原価率が目標に達しない店舗があると、その店長を呼びつけて責任を追及する日々だった。しかし、そのやり方だけでは業績の改善にはつながらなかったのである。

私はY社長の考え方の誤りを指摘した。

「お客様が外食を選ぶ理由は、ムードを楽しむためです。しかし、社長は『原価の亡者』になってしまい、本来大切にすべきを見失っています。(私は何種類か試食をして確認しました。)社長が原価率ばかりを重視するため、社員たちも叱られまいと原価にばかり関心を向けるようになっています。これでは、お客様の期待に応えられず、業績が向上しないのも無理はありません。」

このように、私は問題の本質を伝えたのである。

「この味では、お客様があなたのレストランのファンになることは期待できません。業績が上がらないのは、社員の責任ではなく、社長の姿勢に問題があるからです。社員の責任を追及するのは間違いです。今、あなたの会社が取り組むべきことは、お客様に本当に美味しい料理を提供することです。

具体的には、各店舗でそれぞれの客層に合わせた美味しい料理を二品ずつ開発することに集中してください。この際、原価のことは気にしないでください。お客様が満足する味を追求することこそが、業績を向上させる唯一の道です。」

私はこのようにアドバイスしました。

「『どう工夫しても、これ以上の味は出せない』というところまで徹底的に研究し、その上で原価を計算し、売価を逆算して決めればよい」。私はこのように助言しました。

Y社長は私の勧告に従い、商品を見直しましたが、当然のごとく値段が上がりました。社員たちは「そんな高価格の商品は売れない」と反対しました。しかし私は、「売れるか売れないかを決めるのは社員ではなく、お客様です。推奨品として一度発売してみなさい」と強く促しました。

その結果、商品を発売するとたちまち売上が上昇し、Yレストランはあっという間に好収益企業へと変貌したのです。

U社はエレクトロニクス関連部品を専門に製造するメーカーであり、その高収益化の目標は次のように設定されている。

まず第一に、部品を集めてパック化し、小型化やユニット化を進めること。最終的には、自社製の機器を持つことを目指している。

これは、中小企業としてはごく一般的で現実的な革新の目標といえるだろう。

建築資材商社であるJ社の革新の目標は、商品の提供だけでなく、得意先の「スクラップ・アンド・ビルド」を進めることにあった。

これは、得意先の多くが「小企業」よりもさらに規模の小さい零細企業生業的な事業者であったことが背景にある。J社の狙いは、地方の有力建設業者を主力顧客としつつ、それに加えて大手建設業者とも連携を深めることで事業基盤を強化していくことであった。

ただし、大手建設業者の取引比率は売上高の30%以下に抑える方針である。これは、大手との取引を対外的な信用を高めるためのイメージアップに留めるためだ。依存度が高くなりすぎると、自社の自主性が損なわれるリスクがあるからである。

L社は鋼製家具業界向けの錠前メーカーであったが、低収益季節変動という二つの課題を抱えていた。この事業体質を改善し、高収益化を図るために、建築業界向けの錠前事業へ進出し、さらに製品の高級化を目標として実現した。

T軽工業では、独自に開発した技術を活かし、家庭器具から住宅付帯構造物、さらに園芸用品へと次々に新商品を開発し、強靭な生命力を発揮した。一方、S社は建材事業から公害防止工事へと営業範囲を広げ、飛躍的な高収益を達成した。

N工業は、自動車部品から事務用品へと完全に業種転換を図り、事業再生を果たした。一方、M工業は、自動車部品からガス器具部品へと事業の軸足を移し、業界一の占有率を確保して確固たる強みを築いている。

上記の革新事例はいずれも、成長や前進を目指した革新の例である。しかし、革新は必ずしも成長路線に限られるものではない。時には、「縮小」という革新が必要であることも忘れてはならない。

K工業は、自社の商品を業界に先駆けて規格化し、根気強いキャンペーンを展開することで、業界標準であるJIS規格ではなく、自社独自の「K社規格」を業界の主流に押し上げた。

この取り組みにより、K工業は日本経済の成長とともに発展を続けてきた。しかし、昭和49年の石油ショックによって、国民総生産(GNP)がマイナス成長に転じるという深刻な事態に直面した。

K社もこの影響を避けることはできなかった。社長のI氏は、この新たな状況を冷静に分析し、減速経済に対応するために、従来の成長路線から安定路線へと方針を転換した。その中心となったのは、30%の減員を伴う事業構造の再編成であった。

縮小」という決断は、成長を目指すよりもはるかに困難である。この難題を見事に成し遂げたI氏には、心から敬服せざるを得ない。重ねて強調したいのは、事業の繁栄は、単なる能率や合理化ではなく、高収益型の事業構造によって実現されるということである。

当然ながら、社長の最大の関心事は「我が社の事業構造をどう高収益化するか」でなければならない。高収益型の事業構造とは、市場と顧客の要求を的確に満たす構造である。しかし、その市場や顧客の要求は絶えず変化していく。したがって、その要求に応え続けるためには、会社自体も絶えず変化し続ける必要があるのである。

もしも2年以上にわたり、我が社の事業に大きな変化がないとすれば、それは顧客の要求から徐々に乖離している可能性が高いと考えるべきだ。この場合、事業全体の総点検を行い、現状を見直すことが不可欠である。

4. 生産性

第四に挙げるのは「生産性」の目標である。生産性とは「成果に対する費用の割合」であることは「経営戦略篇」で述べた通りだ。ここでは詳細を割愛するが、生産性を目標として設定する際には、単位当たり(パー・ヘッド)で表すのが効果的だ。具体的には以下のような指標が挙げられる:

  • 一人当たり売上高
  • 一人当たり付加価値
  • 一人当たり経常利益
  • 一坪当たり売上高

これらの指標を用いることで、目標が明確になり、進捗の把握や改善策の立案が容易になる。

生産性は目標として設定されるが、どちらかというと、実際の活動の指標実績のチェックのために用いられるものである。これは、既に述べた「市場の地位」や「利益」などの目標達成に向けた、それぞれの活動成果を測定する役割を果たす。

ここで特に注意すべき点は、生産性には「量的な生産性」と「質的な生産性」があるということである。量的な生産性は成果の数量や効率を示し、質的な生産性は成果の内容や価値の質を示すものであり、両者をバランスよく考慮することが重要である。

K社は菓子メーカーで、ある年に開発した新商品が大ヒットし、需要が生産能力を超えてしまった。そのため、人海戦術による生産を補うべく、量的生産性の向上を目指して機械化が検討された。

しかし、機械化によって効率は向上するものの、菓子の最大の魅力である「ふっくらした舌ざわり」が再現できなかった。この風合いこそが商品の優位性を支えていたため、単純に量的生産性を追求することが難しい状況に直面したのである。

K社長は機械化を断念し、こう語った。

「かつての私なら、『労働生産性』の亡者となり、商品の質を二の次にして機械化を決断していたことでしょう。そしてその結果、この商品を台無しにしていたはずです。しかし、今は『顧客第一主義』を徹底しているおかげで、正しい判断を下すことができました。」

K社長のこの決断は、量的生産性よりも顧客満足商品の価値を優先する姿勢の表れである。

私もK社長の決定には全面的に賛成だった。その新商品は、現在K社のドル箱商品となり、見知らぬお客様から賞賛の手紙が何通も届くほどの人気を博している。実のところ、あまりにも売れすぎて売上高に占める比率が高くなりすぎることを、私は少し心配しているくらいである。

また、サービス・パーツを十分に準備することは、在庫の増大を招くものの、顧客サービスの向上につながり、結果として自社の信用を高める効果がある。

中小企業の社長が「秘書」を持つことは、一見ぜいたくに思えるかもしれない。しかし、それは社長業務の質的向上に大きな役割を果たす。日々の量的生産性だけに気を取られ、質的生産性を見失うことのないよう、十分に注意しなければならない。

5. 人的資源

第五に挙げるのは「人的資源」に関する目標である。人的資源には、質的資源量的資源の二つの側面がある。目標を具体的に掲げる際には、どうしても量的な目標に偏ることが避けられない。

しかし、質的資源も量的資源の中に含まれる要素として捉え、量の確保と同時に質の向上も目指す必要がある。

自社の人的資源がどれだけあるかを把握し、目標達成のために不足が分かっていても、やみくもに増員することはできない。なぜなら、十分な人員を確保しようとすれば、人件費の高騰が避けられないからだ。結局のところ、利益計画の中の人件費の枠内で対応するしかない。

そのためには、限られた人的資源をどの活動に、どのように配分するかを慎重に検討する必要がある。すべての活動を満足させることは不可能であり、重点主義を採らざるを得ない。

しかし、ここで問題となるのが、「マネジメント論」と称される全く誤った理論である。この理論が誤解を招き、非現実的な期待や方針を生み出すことが少なくない。

この理論は、組織職制を第一義に考え、次元の低い日常的な繰り返し業務に焦点を当てている。その結果、多くの企業が、人的資源を管理的業務に重点的に配置するという、誤った重点主義に陥っている。

しかし、どれほど優れた人的資源を管理業務に投入しても、そこから得られる収益は、管理に要する費用を賄うのがやっとというケースがほとんどである。むしろ、管理業務そのものは直接的な収益を生むものではないため、優先すべきは他の付加価値を生み出す活動への配分であるべきだ。

優れた社長は、このような誤りを決して犯さない。経済的成果の達成に焦点を合わせ、人的資源を適切に配分する。経済的成果を上げる活動には二つの主要な柱がある。

  1. 今日の収益をあげる営業活動
    現在の売上や利益を確保するために、営業や顧客対応などの直接的な収益を生む活動。
  2. 明日の収益をあげる開発活動
    将来の収益を創出するための製品開発や新規事業の企画、顧客ニーズへの対応策の準備などの活動。

これら二つの活動をバランスよく行い、限られた人的資源を効果的に活用することが、社長に求められる最重要の課題である。

したがって、まず優先すべきは、今日の収益をあげる営業活動明日の収益をあげる開発活動への人的資源の重点配分である。次に、供給体制の整備に必要な活動部門への人的資源を配分する。そして、最後に残った人員を管理部門に充てる。

このような配分こそが、限られた人的資源を最大限に活用し、経済的成果を効果的に上げるための正しい順序である。

もともと限られた人員を重要度に応じて配分していく以上、最後に回される管理部門の人員が不足するのは避けられないことである。それは、経済的成果を最優先する以上、やむを得ない判断といえる。

良くても悪くとも、この方法以外に選択肢はない。限られた人的資源を最大限活用するためには、管理部門においても「最小限管理」を目指すべきである。この視点は、経営全体の効率化と成果の最大化に直結する重要な指針となる。

6. 物的資源

第六に挙げるのは「物的資源」に関する目標である。物的資源には主に二つの要素が含まれる。

  1. 原材料
    製品を生産するための基本的な資源であり、品質、価格、供給の安定が重要である。
  2. 固定資産
    工場、設備、機械、建物などの生産基盤であり、その効率的な利用や維持管理が事業の成否を左右する。

これらの資源を適切に管理し、最大限の効果を引き出すことが目標となる。

7. 資金

第七番目の目標は「資金」に関するものである。

これは、事業経営に必要な資金をどのように調達し、適切に運用していくかを指す。資金は事業の生命線であり、その確保と管理は経営者にとって最も重要な課題の一つである。

資金目標の設定においては、以下の点が重要となる。

  1. 調達方法の選択
    自己資本、借入、投資家からの資金など、調達手段を多角的に検討する。
  2. コスト意識
    資金調達には金利や条件などのコストが伴うため、これを最小化する工夫が必要。
  3. キャッシュフロー管理
    事業の成長と安定を両立させるために、資金の流入と流出を適切に計画し、管理する。
  4. 長期的視点
    短期的な資金繰りだけでなく、将来の投資や成長を見据えた資金計画を立てる。

このように、資金調達の方法と使い道を慎重に計画し、経営戦略と調和させることが求められる。

事業経営において、通常、利益から生まれる内部留保金減価償却引当金の一部といった資本蓄積だけでは、増加する資金需要を十分に賄うことは難しい。そのため、どうしても外部からの資金導入が必要となる。

8. 社員の処遇

第八の「社員の処遇」については、すでに前述したため、ここでは改めて触れないこととする。

社員の処遇は、経営者が社員の意欲や企業への帰属意識を高めるために重要です。社員の満足度が向上することで、企業全体の生産性や質も向上します。

八つの目標は不可欠な要素

以上に挙げた八つの目標は、事業経営における重要な活動の指針として、不可欠な要素である。

社長は、これらの目標を自らの意思で設定し、その達成に向けて責任を持って取り組まなければならない。そして、それを我が社の事業経営の基本方針として位置づけ、全社の活動に反映させることが求められる。

目標を具体的に掲げることで、事業の方向性が明確になり、経営全体の一貫性と効果性が高まるのである。

まとめ

本記事で取り上げた8つの目標は、事業経営を支える重要な柱であり、各目標が相互に作用することで企業の成長と安定を支える。

市場での地位の確立、利益の確保、革新の推進、生産性の向上、人的資源の活用、物的資源の管理、資金の計画、社員の処遇といった多様な要素を総合的に考慮することが、経営の成功につながる鍵である。

これらの目標は、企業が直面する現実の課題や市場の変化に応じて柔軟に対応するための指針であり、特に経営者が自らの意思と責任において目標を設定し、それを全社の活動に反映させることが求められる。

適切な目標設定と実践を通じて、企業は持続的な発展を遂げることができるだろう。

以上の八つの目標をもとに、経営者は経営計画に沿った戦略を実施し、会社の長期的な健全経営を実現するための指針として取り組むことが求められます。

事業の経営において、社長は多岐にわたる活動に対して目標を設定し、持続的な成長と健全な経営を図ることが求められます。ここで、主要な八つの目標について、そのポイントを簡潔にまとめます。

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