短期経営計画書は、会社の方向性を示すだけでなく、社長の理念や意図を明確に伝えるための重要なツールである。
しかし、現状では多くの会社で経営計画書が粗末に扱われ、その価値が十分に発揮されていない。
本記事では、経営計画書の正しい作成方法やその重要性、さらに配布方法やタイミングの工夫による効果的な活用法について考察する。
経営計画書を単なる形式的な文書ではなく、会社を動かす力のある「羅針盤」とするための実践的なアプローチを探る。
経営計画書を整える
粗末にしてはいけない
短期経営計画は、明確な形で文章化し、「短期経営計画書」として整える必要がある。
ところが多くの企業で見られる経営計画書は、その大半が驚くほど雑な作りになっていることが多い。手書きの原稿をそのままコピーし、ホチキスで留めただけのものが典型的だ。それに加えて、表紙もなくむき出しのままという状況も少なくない。
それを他の書類と一緒に同じファイルに無造作に綴じておくといった扱いも散見される。経営計画書を一体何だと思っているのかと疑問を抱かざるを得ない。
経営計画書とは、社長の経営理念を軸に据えた事業運営の基本方針と、その理念を具体的に実現するための戦略や施策を明示するものではないだろうか。
経営計画書は、会社の中で最も重要なものである。それは社長の魂そのものであり、会社における憲法であり、法律であり、航路を示す羅針盤でもある。
この計画書を粗雑に扱うということは、社長自身の存在を軽んじることであり、ひいては会社そのものを軽視していると言っても過言ではない。
大切なものは、それにふさわしい扱いをするのが当然のことだ。新聞紙に包んで物置にガラクタと一緒に投げ込んでおきながら、これが我が家の宝だと言っても、誰もそれを信用しないし、大事にもしないだろう。
本当に宝であるなら、紫の風呂敷で包み、桐の箱に納めて、土蔵の最も良い場所に大切に保管するはずだ。
経営計画書をデラックスに
経営計画書も同じことが言える。会社にとって最も重要なものである以上、それにふさわしい扱いが求められる。
上質な紙に印刷し、営改革書は、上質紙に印刷し、デラックスな製本をすべきである。少部数であれば印刷でも構わないが、内容に見合った丁寧な製本を施すべきだ。
ファイルを用いる場合でも、上質なファイルを選び、表紙には金文字でタイトルを印刷するなど、細部にまでこだわることが必要だ。それが計画書の価値を高めるだけでなく、会社全体の姿勢を表すことになる。
一部あたり2万円や3万円の費用をかけることは必要であり、それくらいの投資を惜しむのは愚の骨頂と言える。
本当に大切なものであるからこそ、経費を惜しむことなく、最高の形で仕上げるべきなのだ。それが計画書の持つ意義を示し、会社の未来に対する本気の姿勢を伝える手段でもある。
計画書の中身
一連番号
計画書には一連番号を付与する。
社外秘と明記
「社外秘」と明記するのが基本だ。
配布先の記載
さらに、表紙の裏には配布先のリストを貼り付けることで、どの番号の計画書が誰に配布されているのかを一目で把握できるようにする。この管理方法は、計画書の重要性を認識しつつ、情報漏洩を防ぎ、適切に扱うための必須の対策と言える。
このようにすれば、配布を受け取った各人が、計画書が誰に配布されているのかを把握できる。それに対して、配布先を原簿などに記録して管理するだけでは、受け取った本人が自分以外の誰に配布されているのかを知ることはできない。この仕組みを導入することで、配布先の透明性が保たれ、計画書の重要性を共有する意識を高めることができる。
配布先については、「トップ層から二階層下まで」を目安とするのが適切だろう。ただし、小規模な企業や階層の少ない組織では、一階層下までの配布でも十分と考えられる。この基準を柔軟に適用しつつ、必要な範囲で計画書を共有することが重要だ。
営業所や製造部門が多い場合には、全社計画とそれぞれの部門に関連する計画だけを配布対象とする形でも十分だ。また、労働組合が存在する場合には、特別な事情がない限り、「労組三役」にも計画書を配布するのが望ましい。こうすることで、労組からの協力を得やすくなり、計画の実行や目標達成に向けた全体的なサポート体制を強化することができる。
目次を配置
計画書の第一頁には「目次」を配置する。
方針書と具体的な計画
第二頁以降には方針書と具体的な計画表を記載するのが基本だ。
メインバンクに配布
「社外秘」と指定した計画書であっても、メインバンクには配布しておく方が得策だ。これにより、銀行からの評価が向上し、融資を受けやすくなる可能性が高い。
銀行は金を貸すことがビジネスであるが、同時に、その貸付金の回収責任は重大だ。焦げ付きを避けるためにも、計画書を通じて会社の経営方針や具体的な計画を明示し、信用力を高めることが重要だ。
それは、銀行にとってのリスク軽減となり、結果として企業にとっても有利に働く。
銀行が最も関心を寄せるのは、融資先の返済能力だ。しかし、その判断材料として提供されるのは、決算書程度のものが多い。それさえも「銀行用」に作られた可能性があるため、情報の信頼性に疑念を抱くことも少なくない。だからこそ、銀行は融資先からさまざまな資料を求める。
特に、資金繰表については、毎月提出してほしいと願うほどだ。そのためにわざわざ専用の用紙を用意することさえある。しかし、その資金繰表すら提出しない会社が多く、これが銀行にとっては大きな頭痛の種となっている。銀行が情報を求める背景には、返済能力を正確に把握したいという切実な事情があるのだ。
そんな状況の中で、「経営計画書」が提出されるとなれば、銀行にとってこれほどありがたいことはない。この一冊があれば、会社の現状や方針が一目で理解できるからだ。
さらに、毎月の実績報告まで行われれば、銀行としては何の不安もなくなる。会社の状況が明確に把握できる先と、全く不透明な先とでは、どちらに融資を優先するかは明白だ。こんな問いを立てること自体が無粋と言えるだろう。
計画書の配布タイミング
計画書の配布タイミングは、まさに「経営計画発表会」の場が最適だ。大切なものであるからこそ、その配布の瞬間も特別であるべきだ。経営計画発表会は、計画書に権威を持たせ、その内容を参加者に強烈に印象づけるための絶好の機会となる。
もし事前に配布してしまえば、その権威は薄れ、計画の重要性が軽視される可能性がある。さらに、参加者にとっても鮮烈な印象を残すことが難しくなってしまう。発表会の場で初めて手渡される計画書は、計画の重みを伝え、会社全体での共有意識を高めるための最も効果的な方法である。
持ち歩ける手帳サイズも作る
デラックスな経営計画書を作成しても、常に見て、更新していかなければならないものである。特に外部情報を得るために外に出ている場合は、メモしなければ忘れてしまうことがある。
ひらめきは机に向かっている時に得られるものではないため、そのひらめきを書き込めるように手帳サイズの経営計画書も作成する必要がある。

まとめ
短期経営計画書は、会社の未来を切り開くための基本方針と具体策を示す最も重要な文書です。その重要性を認識し、上質な形で作成・配布することで、社長の意図を確実に伝え、組織全体を統一した方向へ導くことができます。
また、配布先を適切に選定し、経営計画発表会で配布することで、計画書に権威を持たせ、参加者に強い印象を与えることが可能です。
さらに、労働組合や銀行との連携にも活用することで、計画書は社内外の信頼を築く重要な役割を果たします。大切な計画書だからこそ、作成から活用まで一切妥協せずに取り組むことが必要です。
短期経営計画書は、会社の運営における基本方針と具体策を明確に示す重要な文書であり、その扱いや作成には特別な注意が求められます。計画書は単なる内部文書ではなく、会社の方針を体現する「会社の憲法」や「羅針盤」に例えられるもので、社長の経営理念を具現化したものとされています。
短期経営計画書の作成と取り扱いのポイント
- 外観と品質
計画書は、上質な紙を使って印刷し、デラックスな製本にすることが推奨されます。表紙も重要で、できれば金文字で印刷されたファイルや一部数万円の製本を施すことも検討すべきとされています。会社の最も大切なものを反映するような外観を意識し、取り扱いに特別な配慮をすることが期待されます。 - 管理番号と配布先
計画書には一連番号を付けて「社外秘」とし、配布先を明示します。表紙裏に配布表を貼り付け、誰が受け取ったのか明確にし、関係者全員が配布先を把握できるようにします。基本的にはトップ層から二階層下まで、または小規模企業なら一階層下までとし、関係する営業所や製造部門にも配布します。労働組合がある場合は、労組三役に配布することで協力を得やすくなります。 - メインバンクへの配布
「社外秘」扱いではありますが、メインバンクへの配布が推奨されます。銀行にとって融資先の状況を把握することは重要であり、計画書を提出することで返済能力の判断材料を提供し、信頼性を高めることができます。銀行は融資の際、経営状況の透明性を重視するため、経営計画書があることで信頼度が上がり、借入しやすくなることも見込まれます。 - 配布時期と経営計画発表会
計画書は「経営計画発表会」の場で配布することが理想的です。事前配布ではなく、この発表会のタイミングで配布することで、計画書の権威を高め、計画の重要性を印象づけることができます。このような形式を取ることで、社内外に強いメッセージと責任感を伝えることができるでしょう。
まとめ
経営計画書は、会社全体の指針としての役割を果たし、計画を明確にするだけでなく、信頼性と権威を持って扱われるべきです。その作成・配布に丁寧な対応をすることで、社員や関係者の意識も高まり、協力体制がより強固なものになると期待されます。
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