プロジェクト計画書は、企業の重要な目標を実現するための道筋を明確にし、組織全体を効率的に動かす鍵となる。
しかし、多くの企業では計画書が作成されず、社長の口頭指示だけで物事が進むため、混乱や遅延が発生しやすいのが現状である。
本記事では、計画書作成の重要性や具体的な効果、そしてその作成と実践の方法について考察する。
プロジェクト計画書の重要性
日本の多くの会社では、社長の口頭指示によって活動が進められるケースが大部分を占めている。
しかし実際には、そのような重要な指示がなかなか実行に移されないという現実がある。
会社内部の人々の活動は、日々の業務の中で後から後から発生する様々な事柄への対応に追われがちである。
その結果、優先すべき重要な課題への関心が薄れ、ただ日々を消化するように過ごしてしまうことが多い。このような状況では、明確な計画と具体的な指針が欠かせないのである。
重要な活動ほど、単なる口頭指令では確実に実行される保証がなく、それが会社の業績に大きな影響を与えることも珍しくない。
むしろ、重要な活動ほど計画的かつ正確に進める必要がある。
だからこそ、会社にとって重要な活動―これは経営計画書を通じて明確にされる―については、社長自ら「プロジェクト計画書」を作成するか、その作成を指示して推進すべきである。
計画書を作ることは、活動を具体化し、全員が同じ方向に進むための道標となる。
忙しいから作れないではいけない
もちろん、「社長がいちいち計画書を作る時間などない」と思われるかもしれない。
しかし、重要な活動に関しては、その時間と労力を惜しむべきではない。それが経営の結果を左右するからだ。
しかし、それなら社長は何でそんなに忙しいのか、という疑問が生じる。
実際、多くの「忙しい」と言っている社長の大半は、社長自身がやらなくてもよい、いや、むしろやるべきではない仕事に首を突っ込んで、バタバタと動き回っているのが現実である。
これは本来の経営者としての役割を見失い、本質的な経営活動に時間を割けていないことを示している。
多くの社長が忙殺されているのは、無方針・無目標・無計画による混乱やトラブルに振り回されているからである。それが原因で日々の活動が場当たり的になり、本来の役割を果たせていないのが実態だ。
明確な方針と計画を立てる
一方、優れた社長は決してバタバタしていない。
彼らは明確な方針と計画を持ち、それに基づいて的確に指示を出し、周囲を動かしている。外から見れば、まさに余裕しゃくしゃくの姿であり、その冷静さこそが組織全体に安心感を与えている。
明確な方針、目標、そして計画があれば、事業活動は大筋で順調に進み、大きな混乱やトラブルは起こらない。これらが事業運営の基盤となり、組織全体を安定させ、効果的に目標へと導く原動力となるのである。
基本的な方針を立て、目標を設定し、それを実現するために必要な主な活動―実際にはそれほど多くはない―についてのプロジェクト計画を明文化するために必要な時間は、驚くほど少ないものである。
このわずかな時間を投資することで、事業活動の方向性が明確になり、全体の効率が飛躍的に向上するのである。
プロジェクト計画書がない理由
それにもかかわらず、どの会社に行っても「プロジェクト計画書」と呼べるものがほとんど存在しないのが実情である。
その原因の一つは、日本人が一般的に計画的に物事を進めることを苦手とする傾向があることだろう。この文化的背景が、計画の明文化を後回しにし、場当たり的な対応を招いていると言える。
しかし、もう一つの理由として挙げられるのは、「計画書の書き方が分からない」という点である。
実際、私が計画書のフォームを用意し、「これに必要な事項を書き込んでください」と指示すると、多くの場合、意外にスムーズに作成が進む。
つまり、書き方が分からないだけで、適切なガイドラインがあれば計画書を作成する能力自体は十分に備わっているということである。
プロジェクト計画表の書き方
標準的なフォームとして挙げられるのが、下記である。

この表は、さまざまなプロジェクト計画の95%以上に対応できる汎用的なものといえる。その構成は非常に簡潔で、たった1枚にまとめられる。
そのため、事前にこのようなブランクフォーム(様式)を用意しておき、必要な際にそこへ記入する形式を採用している会社もある。この方式を導入することで、計画作成が迅速かつ効率的に進められるようになる。
プロジェクト計画書の数は多くないと述べたが、具体的にどのような活動が対象となるのか。その答えは非常に明確である。それは、「方針書に挙げられている各項目について、一つひとつ対応する活動」である。
つまり、方針書に示された目標や重点事項を実現するために必要な個別のプロジェクトが計画書の対象となる。

それぞれの項目に対し、具体的なアクションプランを立てることで、全体の方針が現実的な行動に落とし込まれる。これがプロジェクト計画書の役割である。
プロジェクト計画書に必要な項目
プロジェクト名:
基本方針:
担当者:
実施項目:
方針・特記事項:
日程:
備考:
割り当てについて
社長は、方針書に挙げた各項目について、それぞれの担当者を決めていく。
例えば、「この項目は社長自身が計画を立てる」「これは専務が担当する」「これは営業部長が責任を持つ」「これは技術部長に任せる」といった具合に、責任者を明確に割り当てていくのである。
このように役割分担を明確化することで、各項目が誰の責任のもとに進行するのかがはっきりし、実行のスピードと効率が向上する。また、責任の所在が明確になることで、計画の進捗管理も容易になる。
繰り返しになるが、誰に計画を作らせるのか、いつまでに作成させるのか、また、誰に計画書を提出させるのかを決めるのは、社長自身の責任である。
これらを明確に指示しないのは、社長としての明らかな怠慢と言える。
計画の成否は、適切な人選と期限設定、そして進捗の確認にかかっている。
これを怠れば、計画そのものが実行に移されず、企業の目標達成に大きな支障をきたす。したがって、社長が率先してこれを決めることが、経営の要となるのである。
社長自身が作成する計画書は、「我社の事業をどう創っていくか」という最も高次元で根本的な命題に対するものである。
そのため、これらは会社の方向性を決定づける最も重要で難しい計画に限られるべきだ。具体的には、一つか二つ程度に絞れば十分である。
社長が取り組むべき計画は、全体の指針となるような内容に集中し、それ以外の詳細な計画や実務的な内容は、適切な責任者に任せるのが効率的である。これにより、社長自身の時間とリソースを最も効果的に活用できる。
社長以外の人々が作成する計画書についても、特に重役やその下の階層が担当するものに関しては、社長が事前に目を通すべきである。
これにより、各担当者が社長の方針を正確に理解しているかどうか、また、その方針に基づいた急所を押さえた施策や活動が計画に反映されているかどうかを確認することができる。
このプロセスを通じて、方針の徹底や計画の整合性を図り、全社的な方向性を統一することが可能となる。社長のチェックは、単なる監督ではなく、計画をより実効性のあるものへと磨き上げる重要なステップである。
事前チェックは極めて重要
この事前チェックは極めて重要である。
これを行うことで、方針に対する不十分な理解や誤った考え方、さらには非効率的な活動を事前に修正することが可能になる。
このプロセスを経ることで、社長の方針が社内に正確に浸透するだけでなく、重役や社員に対する優れた実践教育の場ともなる。
事前チェックを通じて、社員一人ひとりが経営の意図を深く理解し、業務に対する自覚と責任感を高めることができる。
これにより、計画書の質が向上するとともに、全社的な成長につながる大きな効果を生み出す。
まとめ
プロジェクト計画書は、単なる書類ではなく、目標達成のための道標であり、組織全体を一つの方向に向ける強力なツールです。L社の事例が示すように、計画書がなければ重要なプロジェクトでも混乱を招き、成果を出すのが難しくなります。一方、計画書を作成し共有することで、優先順位が明確になり、実行の精度とスピードが大幅に向上します。
計画書作成は複雑で手間のかかる作業ではなく、正しいフォーマットと手順を用いれば短時間で効果的に仕上げることが可能です。社長をはじめとしたリーダーが計画書作成と事前チェックに積極的に関与することで、計画の整合性が保たれ、社員の成長と企業の発展が加速します。計画書の重要性を理解し、積極的に取り入れることが、企業の持続的な成功への第一歩となるでしょう。
プロジェクト計画書の目的と作成のポイント
- 計画書作成の重要性
重要なプロジェクトは、単なる口頭指示ではなく計画書にすることで、関係者が一丸となって目標達成に向けて行動できます。経営に関わる社長の意図が各担当者に正確に伝わり、計画書があることで、進捗が可視化され遅延が防止されます。 - 計画書作成の速さ
プロジェクト計画書の作成には、複雑なプロセスは必要ありません。簡潔に、目標と各工程、担当者を明記するだけで、短時間で作成可能です。すぐに行動に移せるよう、迅速に作成する姿勢が重要です。 - 標準フォームの利用
プロジェクト計画書には、巻末の「第12表」などの標準的なフォームが便利です。項目を記入するだけで簡潔に要点を押さえられるため、あらかじめブランクを用意し、記入することでスムーズに計画書が完成します。 - 対象となる活動
プロジェクト計画書が必要な活動は、「方針書」の項目に示された重要な活動に対してです。社長や専務、各部門長がそれぞれの方針に沿って作成し、期限と提出先を明確にすることで、計画の実行力が高まります。 - 社長の監督と事前チェック
プロジェクト計画書の作成を各担当者に任せる場合も、社長や上層部が内容をチェックすることが不可欠です。これにより、計画の意図や目的が正しく理解されているか、不足点や非効率な部分がないかを確認できます。この監督プロセスによって、経営方針が社内に正しく浸透し、全体の動きが揃う効果が得られます。 - 教育的効果
計画書作成の過程を通じ、重役や社員は経営の全体像を把握し、効率的で効果的な活動を学ぶことができます。プロジェクト計画書は、実務教育の手段としても効果的です。
プロジェクト計画書に必要な項目
標準フォームに含まれる基本項目としては、次のようなものがあります:
- プロジェクト名:計画書の対象となる活動の名称。
- 目標・目的:プロジェクトで達成するべきゴールや目的を明示。
- 具体的な工程:プロジェクトを進めるための主要なステップを時系列で記述。
- 担当者:各工程における責任者の名前。
- スケジュール:各工程の開始日と完了予定日。
- 予算・資金:必要な資金の見積もりや資金確保の方針。
- 成果の指標:プロジェクトの成功を評価するための定量的または定性的な指標。
プロジェクト計画書を活用することで、方針に沿った活動が効率よく遂行され、社内の意識統一と行動の一体化が促進されます。また、計画書の運用を通じて、社内に計画的な思考が根付くようになります。
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