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経営計画書の定期的チェック

経営計画は定期的にチェックされる必要がある。一般的には、月に一度のチェックが適切である。

目次

実績の正確な把握

このチェックを行うためには、まず実績の正確な把握が不可欠である。

チェックの方法としては、毎月一回、関係者全員が集まり、それぞれが持参した経営計画書に実績を記入する形が有効だ。

経理担当者や数字をまとめた責任者が、計画に関連する実績の数字を読み上げ、それを参加者全員が自分の経営計画書の実績欄に記入していく。

この方法により、計画と実績のギャップが一目でわかるようになり、課題の明確化や改善策の検討がスムーズに進む。

自分で実績を記入する意味

自分で実績を記入することには大きな意味がある。大企業の社長であっても、他人任せにせず、自ら記入すべきである。

計画と実績の関係を深く理解

自分で数字を記入することで、他人が作成した数字をただ確認するよりも、計画と実績の関係を深く理解できるし、その内容が強く印象に残る。

さらに重要なのは、自ら記入することで責任感が生まれ、数字に対する実感を伴った理解が得られる点である。単に数字を眺めるのではなく、記入という行為を通じて、自身の経営判断や次の行動計画に対する意識が高まる。

これが、計画の実効性をさらに向上させる要因となる。

事態の把握に要する時間そのものが短い

自ら記入することが効果的であるもう一つの理由は、事態の把握に要する時間そのものが短いからである。特に大企業の場合、規模が大きいからといって、把握すべき数字すべてを細かく追う必要はない。

重要なのは、大分類による主要な数値や大きな単位を掴むことだ。

これにより、全体の状況を迅速かつ効率的に理解できるだけでなく、経営判断に必要な核心部分に集中することが可能となる。詳細は部下に任せ、社長は大局を把握することに注力すればよい。

実績を把握した後は、その対策を検討する段階に移る。このプロセスには定型的な方法はなく、状況や組織に応じて多様なアプローチが取られる。

対策の検討方法

  1. 実績記入の場で即時検討
    実績を記入したその場で、幹部社員と共に対策を話し合い、迅速に方向性を決定する。
  2. 対策書の提出を命じる
    各部門や担当者に対して、個別に対策書を作成・提出させ、後日検討する。
  3. 階層別の対策会議を開催
    対策検討の場を以下のように階層別に設定し、議論を深める。
  • 社長と部門長の個別会議
  • 社長・重役対部門長の合同会議
  • 重役対部門長の調整会議

これらの方法を適切に組み合わせることで、実績の課題に対する具体的で効果的な対応策を策定できる。また、幹部社員や各部門の責任者を巻き込むことで、対策の実行力と現場の理解を高めることができる。

特定のプロジェクトに関する対策検討の場合には、関係者を限定した以下のような組み合わせで議論を進める方法もある:

  1. 社長とプロジェクト・マネジャー
    プロジェクトの全体像や戦略的課題を確認し、方向性を決定する場。
  2. 社長、プロジェクト・マネジャー、プロジェクト要員
    プロジェクトの現場レベルの課題と解決策を具体化するためのチーム全体での会議。
  3. プロジェクト・マネジャーとプロジェクト要員
    実務的な課題やスケジュール調整、具体的な実行プランを練るための実務者同士の会議。

このように、特定のプロジェクトに関しては、関係者の役割や課題に応じた最適な組み合わせで議論を行うことで、より効率的で具体的な対策を講じることが可能になる。また、このアプローチにより、各関係者の責任が明確になり、プロジェクトの成功に向けた一体感が醸成される。

社長自身の経営チェック

しかし、最も重要なのは社員へのチェックではなく、社長自身が自らの経営に対して行うチェックである。自分の判断や方針が正しかったか、計画通りに進んでいるかを客観的に振り返ることが、経営全体を健全に保つ鍵となる。

次に重要なのは、社長と重役、つまりトップ層のみで行うチェックである。トップ層での定期的な検討は、会社全体の戦略を見直し、必要な軌道修正を迅速に行うために欠かせない。

このチェックプロセスを軽視すると、経営の中核が揺らぎ、全体の方向性が曖昧になる危険がある。トップ層の徹底的なチェックこそが、企業の基盤を強化し、社員全体の動きを支えるものである。

チェックの定義

多くの会社では、チェックというプロセスにおいて基本的な誤りが見られる。一般に、チェックとは「目標(または計画)と実績の差異を把握し、その差を埋めるための行動を取ること」と定義される。

しかし、多くの場合、この基本的な定義が理解されていない。

結果として、目標未達成の際に取るべき具体的な対策を忘れ、その原因の探究に時間を費やしてしまう。原因を追及すること自体が間違いではないが、それに固執するあまり、実際の差異を埋める行動が疎かになることが問題である。

チェックの本質は、現状を改善し、目標に近づけることにある。

原因探求のみでは前進しない

原因探究だけでは前進は望めない。

例えば、売上目標が1,000万円で実績が900万円、不足が100万円だった場合、多くの会社では「なぜ上がらなかったのか?」と原因追求に走る。しかし、原因を調べたところで、過去の数字を1円でも変えることはできない。

不達成の理由を探すと、多くの場合、それなりにもっともらしい理由が出てくる。しかし、それが何になるだろうか?人間は本能的に、自分が悪いとは思わない傾向を持っている。そのため、原因を追及しても、責任のなすりつけや自己弁護に終始してしまうことが多く、建設的な結果にはつながらない。

デール・カーネギーの名著『人を動かす』には、極悪非道の殺人犯ですら自分を悪いとは認めないと書かれている。その犯人たちは、「なぜ自分が殺人を犯さなければならなかったのか」を、驚くほど理路整然と説明し、自分の行為を正当化しようとする。つまり、自分は悪くないと心の底から信じているのだ。

それが殺人犯であってもそうなのだから、一生懸命に働いている社員が、自分の行動を悪いと認めるはずがない。社員は必ず、「自分が悪いのではなく、自分以外の何かが悪い」と考えるものである。これが人間の本質であり、だからこそ「原因探し」に終始するのは、建設的な結果を生まないどころか、非生産的な議論に陥る可能性が高い。重要なのは責任の追及ではなく、次にどう行動するかである。

あるスーパーの社長が語ってくれた話は非常に興味深い。いつも売上目標を下回る店舗があり、そのたびに社長が「なぜ売上が上がらなかったのか」と尋ねると、返ってくる答えは「雨が多かったから」「風が吹いたから」といったものであった。ところが、ある月に雨も風もほとんどなかったのに、それでも売上は伸びなかったという。

その際の理由も「近くの百貨店が決算大売り出しをしたから」「特売品の品揃えが悪かったから」など、言い訳は次々と出てくる。結局、責任を自分に帰することはなく、「自分以外の何かが悪い」という論調になる。これが人間の本質であり、責任回避に関しては社員が最も真剣になる場面だと言っても過言ではない。

このような状況を見ると、原因探しに終始しても根本的な改善にはつながらず、責任の所在を巡る無益な議論になるだけである。重要なのは、次にどうすれば目標を達成できるかという具体的な行動計画を立てることだ。責任追及ではなく、建設的な対策が組織を前進させる鍵となる。

「原因を探究し、それを除去することで業績を上げられる」という主張は、一見もっともらしいが、実際には全くの誤りである。原因探しに固執するあまり、次に何をすべきかという建設的な行動が疎かになり、結果として業績改善にはつながらない。

未来志向のチェック

重要なのは、過去の数字の原因探しではなく、どうすれば次回の目標を達成できるかという具体的な対策を考えることである。

それが本来のチェックの目的であり、未来に向けた行動を生む唯一の方法である。

過去の原因を取り除くことではなく、未来に向けて何をどのように実行するかを考えることが、真に業績を向上させる唯一の道である。原因探究に時間を費やすのではなく、具体的な行動計画の策定と実行に全力を注ぐべきである。

原因が自分ではなく、自分ではどうにもならない客観的な事態にあると考える以上、その原因を除去することは最初から不可能である。そうした外的要因に責任を転嫁する限り、問題解決の主体性が欠け、業績向上に向けた行動を起こすこともできない。

重要なのは、原因を言い訳にするのではなく、その状況を前提として、どのように対応し、目標を達成するかを考えることである。自分でコントロールできない要因を嘆いても何も変わらない。できることに焦点を当て、未来志向で行動することが本質的な改善につながる。

例えば、売上が上がらない原因が「近くの百貨店の特売」にあると仮定しよう。他店の特売をやめさせることなど、現実的にできるはずがない。こうした状況を考えれば明らかなように、外部要因を「原因」として挙げ、それを除去する方法を議論すること自体が非現実的である。

実際、私自身も「原因がこれだから、こう除去すれば解決する」といった建設的な結論に至る会議に出会ったことはない。原因探しやその除去の議論は多くの場合、具体的な対策を導き出すことなく終わりがちである。重要なのは、現実を受け入れ、その上でどう行動するかを議論することだ。それが成果を生む唯一のアプローチである。

反対に、原因を調べた結果、「実績が上がらなかったのは仕方がない」とする理由が次々と挙げられ、その妥当性を証明するだけの会議になってしまうのが常である。その結果、「誰も悪くない」「これで安心」という雰囲気の中で会議が終わる、というのが多くのケースである。

こうした会議は、問題解決どころか責任回避の場と化し、実際には何の進展も生まない。このような会議を繰り返すことは、時間の浪費であるだけでなく、組織全体の成長を妨げる要因となる。本来の目的は原因の正当性を確認することではなく、目標に向かって次に何をすべきかを具体的に決めることにある。

「うちの会議では何も決まらない」という不満を持つ社員が多いという現実を、社長は認識しなければならない。会議が実績の妥当性を証明する場と化している場合、それは裏を返せば「目標そのものが不当だ」と言っているに等しい。

このような状況では、目標達成に向けた具体的な対策や行動計画が生まれず、組織全体の士気が下がるだけである。会議は実績の正当化の場ではなく、目標に向けて進むための指針を明確にする場でなければならない。社長自身がこの問題を直視し、会議のあり方を改善する責任がある。

毎月の会議で目標を否定していては、目標達成は不可能である。否定するための目標なら、最初から設定しない方がよい。目標は達成のために行動を促すものであり、建設的な議論で具体策を生み出す場とするべきである。

どのような理由があろうとも、不達成は容認できない。目標が正当である以上、重要なのは目標を達成することであり、不達成の原因を追究するのは完全に誤りである。求められるのは、「どうすれば目標を達成できるか」という対策を考え、実行することである。

死んだ子の年を数えても意味はない。死因を議論しても何も変わらない。不達成の原因を考えるのは無駄であり、必要なのはただ一つ、「どうするか」を考え、行動することである。

対策を立てるためには、まず今の自分の位置を確認する必要がある。その位置を示すのが実績である。実績は、対策を考えるために確認するものであり、その原因を探究するためのものではない。

これが、「目標と実績との差をとらえ、その差を埋める」というチェックの正しい考え方である。この正しい考え方を踏まえた上で、対策を立てる際には、「どうすれば目標を達成できるのか」という未来志向の態度を持つことが重要である。

過去に囚われず、具体的かつ実行可能な方法を積極的に考える姿勢が求められる。

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